1980年代のサッカーマンガの代表作といえば「キャプテン翼」を思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、同時代のマンガ読者の中には「がんばれ!キッカーズ」を挙げる人も少なくない。
本記事では、1980年代のサッカーマンガ「キャプテン翼」と「がんばれ!キッカーズ」どちらが面白いのか比較していこうと思う。
Q:画力が上なのは?
A:線のキレイさと丁寧さでは「がんばれ!キッカーズ」が上。
動きの躍動感は「キャプテン翼」が上。
マンガの画力の比較というのは色んな観点があるので、一概にどちらが上とは言い難い。
パっと見の印象では、「キッカーズ」の方が線もキレイで、絵も丁寧な印象を受ける。
キャラの表情についても「キッカーズ」の方が豊かなような気がする。
そういった意味では、「キッカーズ」が上ともいえる。
しかし、動きの躍動感については「キャプテン翼」の方が上だと思う。
「キャプテン翼」は、シュートやロングパスなどで、強いキックをするシーンでは、キャラを正面から見た構図でも背中の番号が見えるまで身体をひねっている。
だが、「キッカーズ」ではそこまでのひねりが見られず、強烈シュートを撃っているシーンでも、そこまでの強烈さを感じない。
スポーツとしての動きに関していえば、「キャプテン翼」に軍配が上がるのではないだろうか。
なお、どちらの作品も、かわいい女の子キャラの顔の描き分けはそんなにできていない。
Q:単行本で読んで面白いのは?
A:単行本での一気読みで面白いのは「キャプテン翼」。
雑誌の一話単位掲載では「がんばれ!キッカーズ」。
これは作風の特徴というより、掲載媒体の違いによる部分が大きい。
「キャプテン翼」(無印版)は「少年ジャンプ」での週刊連載、
「キッカーズ」は「コロコロコミック」「小学五年生」「小学六年生」などでの月間連載である。
「キャプテン翼」は週刊連載のため、一回あたりのページ数があまり多くなく、次回が気になるストーリー構成になっている。
そのため、連続した一本の長いストーリーになっており、単行本で一気読みすると、雑誌掲載時よりも面白く読める。
一方、「キッカーズ」は一回あたりのページ数が多い月間連載の上、掲載誌も複数にわたっている。
そのため、一話で完結しているような話が多い。
(数話にわたるストーリーもある)
また、複数誌に掲載されているので、前後のつながりのないエピソードも少なくない。
単行本で読むと、大会の一回戦と二回戦の間に、大会とは何の関連もないエピソードが挟まれている。
なので、一気読みするとかえって違和感を覚える。
また、一度登場したキャラの再登場が少なく、全体的なストーリーのつながりは薄い。
「コロコロ」「小学〇年生」は、対象年齢もやや低めで、毎月定期購入していない読者も多いので、このように読切的な一話完結の話の作りが多いのだと思う。
単行本で読むと面白いのは「キャプテン翼」だが、たまたま一冊買った雑誌に載っていた場合に面白く読めるのが「キッカーズ」の方だと考える。
Q:ストーリーの楽しみ方はどう違う?
A:トッププレイヤーのスーパープレイを楽しむのが「キャプテン翼」。
おちこぼれチームの人間ドラマ主体なのが「がんばれ!キッカーズ」。
「キャプテン翼」は、物語の初期こそ主人公の所属しているのは弱小の南葛小サッカー部という設定だが、修哲小との対抗戦より後は、小学生編にしても中学生編にしても全国制覇を狙える強豪チームで日本一を目指す話になっている。
その後のジュニアユース編、ワールドユース編も世界一を目指す話である。
対して、「キッカーズ」の主人公チームはずっと落ちこぼれチームのままだ。
公式戦の初勝利や全国大会への出場が目標であり、全国的には無名チームのままで物語は終わる。
「キャプテン翼」は、次々に現れる強敵を倒していくのがストーリーのメインとなっている。
「キッカーズ」も、その側面はあるが、他チームとの交流、チーム内で発生した問題の解決といったストーリーの展開が多い。
どちらが面白いかは読者の好みによるところだ。
Q:「がんばれ!キッカーズ」は「キャプテン翼」のパクリ?
A:似ている部分は確かに多いが、違う点もまた多い。
「キャプテン翼」は1981年連載開始、「キッカーズ」は1984年連載開始で「キッカーズ」は「キャプテン翼」のヒットを受けての後発作品である。
そのためか、主人公の名前(大空翼と大地翔)や第一話の展開が酷似しているなど、似ている点は数知れない。
しかし、上述のとおりストーリーがメインとしているところや、構成などが違っており、部分的に見ると似ているところはあるも、全体として見ると違った印象を受ける。
この「キャプテン翼」と「キッカーズ」の似ているところとそうでないところについては、別記事のシリーズで書いているので、興味のある方はそちらで確認してほしい。
Q:結局、どっちが面白い?
さて、ここまで「キャプテン翼」と「キッカーズ」の二作品について比較してきた。
正直、どちらが面白いのか、という疑問は、読者の好みによってしまうので、明確に答えることは困難だ。
個人的には、強敵が続々現れる「キャプテン翼」の方がジャンプらしくて好きである。
だが、「キッカーズ」の方でも好きなエピソードはある。
主人公チームの試合ではないものの、ライバルチーム同士の南陽SCvs西山SSS戦などは特に好きなエピソードだ。(単行本6巻収録)
また、全国大会出場を賭けての南陽SCとキッカーズの激闘も見ごたえのあるところだと思う。(単行本12巻収録)
「キャプテン翼」は読んだことがあるが「キッカーズ」はないという人も多いと思う。
これを機会に「キッカーズ」についても、ぜひとも読んで欲しい。
上述のとおり、読切的なストーリーが多いので、どこか単独の巻で読んでも楽しめるはずだ。