「キャプテン翼」は1980年代を代表するサッカーマンガの大ヒット作である。
だが、1980年代に小学生だった読者の中では、もうひとつのサッカーマンガのファンだったという人も少なくない。
その1980年代のもうひとつのサッカーマンガというのが、「がんばれ！キッカーズ」である。
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がんばれ！キッカーズ（1）【電子書籍】[ ながいのりあき ] 価格:462円 |
1981年に集英社の週刊少年ジャンプで連載を開始した「キャプテン翼」より3年後の1984年に、小学館の月刊コロコロコミックで連載が始まったのが「がんばれ！キッカーズ」だ。
「がんばれ！キッカーズ」のコミックス表紙を見て、まず気になるのが主人公の髪型である。
風を受けてなびいているような後ろ髪のデザインは、「キャプテン翼」の翼くんにそこはかとなく似ている。
しかも、主人公の名前「大地 翔（だいち かける）」は、「キャプテン翼」の主人公「大空 翼（おおぞら つばさ）」を意識しているとしか思えないネーミングである。
さらに言えば、「キャプテン翼」で主人公の翼くんが、名字の「大空」で呼ばれることがほとんどないのと同様に、「がんばれ！キッカーズ」の翔くんも名字の「大地」であまり呼ばれず、「翔」呼びなのも共通している。
主人公の名前以外にも、「キャプテン翼」の翼くんが転校して入るのが南葛小で南なのに対し、「がんばれ！キッカーズ」で翔くんが転校して入るのは北原小で北なのも偶然とは思えない。
と、ここまで「キャプテン翼」と「がんばれ！キッカーズ」の似ているところを挙げたが、違うところもある。
〇短い読み切り的エピソードが多い
「キャプテン翼」が連続した1本のストーリー展開であるのに対し、「がんばれ！キッカーズ」は短い読み切り的なエピソードが連続した展開が多い。
これは掲載誌の違いによるところが大きい。
「キャプテン翼」が連載されていたのが週刊少年ジャンプである。
週刊誌のため、連載一回分のページ数が少なく、次回号の発売までの期間も短く、続きが気になるストーリーとなっている。
それに対し、「がんばれ！キッカーズ」は月刊コロコロコミックと小学館学習雑誌（小学五年生、小学六年生）での連載である。
一般的に、月刊誌だと週刊誌と違い、連載一回分に比較的まとまったページ数があり、次回号の発売までの期間も長いため、連載一回である程度完結したストーリー作りとなる傾向がある。
さらに、コロコロコミックと学習雑誌の両方で連載していると、どちらか片方しか読んでいない読者にも分かるストーリーに仕上げなければならず、読み切り的なストーリーにならざるを得ない。
例えば、コロコロの連載の方では、大会の二回戦に進んだところであっても、「小学五年生」で掲載するストーリーは、大会とは関係ない他校との練習試合であったりする。
これは、「小学五年生」だけ読んでいる読者には、コロコロでのストーリーが分からないからである。そして、コロコロだけ読んでいる読者にも混乱をきたさないように、「小学五年生」にだけ登場した敵キャラクターは後のストーリーには一切登場していない。
と、以上の理由で「がんばれ！キッカーズ」は「キャプテン翼」とは異なるストーリー構成になっている。
〇キッカーズが弱小チームである
「キャプテン翼」で、主人公の翼くんの転校した南葛小は弱小のサッカー部しかなかったが、後に翼くんは南葛市内で上手い選手だけを集めた選抜チームに参加し、選抜チームで日本一を目指すことになる。
小学生編以降でも、翼くんは世代のトッププレーヤーとして高いレベルのチームでプレーをし続けるのだ。
ところが、「がんばれ！キッカーズ」で、主人公の翔くんの入る北原キッカーズは公式戦未勝利の弱小チームだ。
ストーリーの終盤に至っても、全国大会のキップが手に入るかどうか、というレベルのチームでコミックス全巻を読んでも全国大会は描かれずに終わる。
（一応、続編もあるがコミックス20巻には収録されていない）
「キャプテン翼」は、ズバ抜けた才能を持ったトッププレーヤーたちが超人的なプレーを繰り広げる憧れの物語であるのに対し、「がんばれ！キッカーズ」は等身大のダメなキャラクターたちが努力をする物語なのである。
と、似ている点はあるものの、「がんばれ！キッカーズ」は「キャプテン翼」は根本的に違う魅力を持ったマンガなのである。
今回のブログ記事では、マンガ全体を通しての二作品の相違点を挙げたが、今後の記事では、コミックス20巻を通じて、どこが似ていて、どこが違うのかを具体的に列挙し、「がんばれ！キッカーズ」は「キャプテン翼」のパクリマンガではないことを検証していこうと思う。
次回は第一話について記事にする。
