「キャプテン翼」の「ワールドユース編」が連載打ち切りになった理由を考察していく最終回。
キャプテン翼ワールドユース編(全12巻セット) (集英社文庫) [ 高橋陽一(漫画家) ] 価格:8,580円 |
理由(5):前作のライバルたちのぞんざいな扱い
サッカーで世代の世界一を目指す戦いなのは、Jr.ユースもワールドユースも同じである。
参加国が少ないとはいえ、Jr.ユース編でいったんは世界一になったのだから、ワールドユースで再び世界一を目指すことは、新鮮味がない。
その点は「ワールドユース編」の連載が厳しかった理由のひとつだとは思う。
しかし、無印版「キャプテン翼」において、「中学生編」は「小学生編」と同じ日本一を目指す物語であり、同世代のライバルたちの面子も大きくは変わらないのに、「中学生編」は面白い。
「中学生編」が「ワールドユース編」と大きく違うのは、前作のライバルたちの扱いにあると考える。
そこで、まずは「小学生編」の全国大会で登場したライバルたちの「中学生編」での扱いを見ていこう。
→「小学生編」と同じく、「中学生編」でも決勝の相手。
立花政夫、立花和夫(花輪)
→「中学生編」では、新技スカイラブ・ハリケーンでパワーアップ。
中西太一(難波)
→「中学生編」では早田誠の東一中に敗れる。
松山光(ふらの)
→「小学生編」では主人公チームとの対戦はなかったが、「中学生編」では対戦。
三杉淳(武蔵)
→「中学生編」では日向を越える実力を見せつけるも都大会で敗退。
と、以上のように、「中学生編」で格を落として、新キャラのかませ犬的扱いだったのは、中西だけだった。
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次に、「Jr.ユース編」で登場したライバルたちの「ワールドユース編」での扱いを見ていく。
ラモン・ビクトリーノ(ウルグアイ)
→「Jr.ユース編」で主人公チームとの対戦はなかったが、「ワールドユース編」では対戦。
ジノ・ヘルナンデス(イタリア)
→葵新伍と同じチームとして登場も、かつての公式戦一年間ノーゴールの威厳はなく、普通にゴールを割っていた。
ワールドユース本戦では、ウルグアイユース戦で火野竜馬のかませ犬に。
ファン・ディアス、アラン・パスカル(アルゼンチン)
→試合描写は一切なく、ひそかに敗退。
→試合描写は一切なく、ひそかに敗退。
カール・ハインツ・シュナイダー、デューター・ミューラー、ヘルマン・カルツ、マンフレート・マーガス、フランツ・シェスター(ドイツ)
→スウェーデンユースのかませ犬に、次いでブラジルユースのかませ犬に。
以上のように、描写がないか、かませ犬的扱いばかりである。
唯一、格を落とさなかったのはビクトリーノだけだが、ウルグアイユースでは火野竜馬の方が目立っていた。
カルロス・サンターナら、「ワールドユース編」での新キャラを出したかったという意図は分かるが、残念ながらその目論見は外れたと言わざるを得ない。
結果論でいうと、新キャラはアジアユースで何人も出したのだから、ワールドユース本戦は旧キャラ主体にするのも手だったのかもしれない。
この前作のライバルキャラのぞんざいな扱いが「ワールドユース編」の評価を落としている要因のひとつと思われる。
この前作のライバルキャラの扱いを踏まえたためか、マドリッドオリンピックを描いた「ライジングサン」では、「ワールドユース編」で出てきたメキシコ、オランダ、ブラジル、「Jr.ユース編」で登場のアルゼンチン、ドイツと旧作のキャラを活躍させつつ、新興国としてスペインを登場させている。
2020年では「ライジングサン」は完結していないが、「ワールドユース編」の連載打ち切りを糧に、より良い作品にしてほしいと願うばかりである。