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【キャプテン翼】物語の構成が神がかり的 ジュニアユース編の魅力解説

キャプテン翼」のワールドユース編がなぜ連載打ち切りとなったのかといった記事を以前に書いた。

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今度は逆に、ワールドユース編の前に連載された無印版のジュニアユース編の面白さについて考えていこうと思う。

 

ジュニアユース編の面白さは、物語全体が以下のような魅力的な構成をしていることにあると考える。

 

オールスター集合のワクワク感、世界との絶望的な差

組織的な守備力重視のイタリアJr.ユース戦

ディアスの個人技で攻めてくるアルゼンチンJr.ユース戦

アウェーの逆境に苦しむフランスJr.ユース戦

最強ストライカーと最強キーパーを擁するラスボス・西ドイツJr.ユース戦

 

順番に見ていこう。

 

●オールスター集合のワクワク感、世界との絶望的な差

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ジュニアユース編では、フランス国際Jr.ユース大会に向けて、全日本Jr.ユースチームが結成。

これまで小学生編、中学生編で競い合ったライバルたちが一堂に会し、作中オールスターチームが出来上がることに読者の期待は高まる。

 

しかし、オールスターをそろえた全日本Jr.ユースだったが、国内での高校生相手の試合では勝利を重ねるも、ハンブルグJr.ユースには惨敗、ブレーメンJr.ユース相手にはエースのシェスターを温存される屈辱を味わった上、イタリアJr.ユースには実力不足を理由に試合を断られるといった世界との絶望的な差を見せつけられることになる。

 

加えて、全日本Jr.ユースメンバーの不和も描かれ、チーム状態は最悪に。

 

だが、ケガで合流の遅れていた翼、フランスの岬、西ドイツの若林がチームに加入。

メンバー同士のわだかまりも解消され、大会本戦に向けての期待が再び上がっていく。

 

全日本Jr.ユース結成の期待感

  ↓

世界との差の絶望

  ↓

翼、若林、岬の加入で再び期待上昇

 

この流れが上手いと思う。

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組織的な守備力重視のイタリアJr.ユース戦

 

大会初戦の相手は、練習試合を断ってきた因縁の相手イタリアJr.ユース。

イタリアJr.ユースは、組織的なヨーロッパサッカーで天才キーパー、ジノ・ヘルナンデスを中心とした守備力が特徴のチーム。

 

このイタリアの守備をいかに破るのかが試合のポイントになってくる。

 

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ディアスの個人技で攻めてくるアルゼンチンJr.ユース戦

 

次戦の相手は、ファン・ディアスを擁するアルゼンチンJr.ユース。

 

初戦のイタリアJr.ユースとは対照的に、ディアスの個人技中心に次々に得点を重ねていく南米スタイルのチーム。

 

ディアスと翼の天才10番対決も見どころだが、エースの個人技で攻めるアルゼンチンJr.ユースに対し、全日本Jr.ユースが伏兵の立花兄弟、三杉の活躍といったチーム力で応戦するところもこの試合のポイントだ。

 

この初戦と次戦で、ヨーロッパ・組織的・守備重視のイタリアと、南米・個人技・攻撃重視のアルゼンチンという対照的なコンセプトの2チームを描いたのは見事だと思う。

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●アウェーの逆境に苦しむフランスJr.ユース戦

 

準決勝の相手は、地元開催国のフランスJr.ユース。

 

エル・シド・ピエール、ルイ・ナポレオンのコンビも強力だが、早い時間帯で早田がカード2枚で退場となり、10人対11人の数的不利。

さらに全日本Jr.ユース側のシュートが、審判から何本もノーゴール判定を受けてしまうというアウェーの逆境に苦しむことになる。

 

この相手側に有利な判定をされるというのは、国際試合ならではのことであり、これまでの国内大会では描かれなかった点だ。

(のちにフランス側にもノーゴール判定がくだされ、審判が必ずしも自国びいきだったわけではなかったというフォローが一応描かれる)

 

加えて、選手交代枠を使い切った状態で、立花兄弟・若島津の負傷、三杉の体調の悪化と圧倒的逆境に対し、懸命に挑む全日本Jr.ユースの姿がこの試合の見どころ。

 

最後がPK決着なのも「キャプテン翼」では珍しい。

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●最強ストライカーと最強キーパーを擁するラスボス・西ドイツJr.ユース戦

 

最後の敵は、“若き皇帝”カール・ハインツ・シュナイダー、“鋼鉄の巨人”デューター・ミューラーに加え、カルツ、シェスター、マーガスとタレントぞろいの西ドイツJr.ユース。

 

ウルグアイJr.ユースを撃破し、文句なくジュニアユース編で最強として描かれた西ドイツJr.ユースがラスボスとなるのは納得の流れだ。

 

若島津、三杉らを欠くものの、若林がこの試合で初めて出場し、ほぼベストメンバーの全日本Jr.ユースが最強・西ドイツJr.ユースに真っ向から挑むのがこの試合の見どころだ。

 

小学生編で別れたロベルト本郷の教えが翼を覚醒させ、最後に試合を決めるのが、ロベルトから初めて教わったオーバーヘッドシュートというのも、「キャプテン翼」作品全体を通しての最後の試合にふさわしいと言える。

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以上、見てきたようにジュニアユース編の魅力は、大会前に世界との差やチーム状況をじっくり描き、大会が始まってからは一戦ごとにコンセプトが明確な試合を描いていた構成の上手さではないかと考える。

 

アジア予選なし、3チームでのグループリーグというおかしな大会の設定や、シュナイダーの妹をヘルナンデスが救い、その場に翼が居合わせた事故が、その後の展開に、何にも生かされないといった、いくつかの欠点は確かに存在する。

 

しかし、それらの欠点を考慮しても、物語全体の構成は見事だと思う。

 

のちのシリーズでは、対戦相手のチームカラーがジュニアユース編ほど分かりやすいものでなかったり、一試合ごとのコンセプトが伝わりづらかったりするのが、無印版を超えられない一因ではないだろうか。

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