「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は2009年にルーヴル美術館の企画展として発表されたマンガ作品で、書籍としては2011年に通常のジャンプコミックスより大きいB5版サイズのフルカラーで愛蔵版コミックスとして発売された。
長らく愛蔵版コミックスだけだったが、2023年5月26日に実写映画が公開されることに伴い、通常サイズのジャンプコミックスとしても2023年4月に発売となった。
本記事では、内容の簡単な紹介と感想、愛蔵版コミックスと通常サイズのジャンプコミックスのどちらをオススメするかを記載していく。
岸辺露伴ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス) [ 荒木飛呂彦 ]
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あらすじ
他人を「本」にしてその人物の人生を読む能力を持つマンガ家・岸辺露伴は、17歳のころ、旅館を改装した祖母の経営する賃貸アパートでデビューのための投稿用原稿を執筆していた。
露伴は、そのアパートの住人・藤倉奈々瀬から、この世で最も「黒い絵」の存在を聞かされ、それがルーヴル美術館にあることを知る。
奈々瀬はある日、アパートから失踪。二度と戻ってくることはなかった。
マンガ家としてデビューした露伴は10年後、「黒い絵」のことを思い出すと、ルーヴルに「黒い絵」の取材に赴く。
「ジョジョの奇妙な冒険」に登場する岸辺露伴は、16歳でデビューした傲岸不遜な人物として描かれているが、本作の17歳時の露伴はまだデビューしておらず、マンガに対してもやや不安を抱えているような人物として描かれており、少し違って描かれている。
本にする能力を持っていることはさらっと紹介されているも、他に能力者が出てこないため、「スタンド」「ヘブンズ・ドアー」といった名称は出てこない。
この辺りは「ジョジョの奇妙な冒険」「岸辺露伴は動かない」を読んでいない本作からの読者でも話についていける仕様になっているためと考える。
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一冊のコミックスとしてはページ数が少な目
本作はフルカラー123ページ。
「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品「岸辺露伴は動かない」シリーズに連なる位置づけの作品となるが、「岸辺露伴は動かない」のコミックスと比べるとずいぶんページ数が少ない。
「岸辺露伴は動かない」1巻は約240ページで、5エピソードを収録している。
そのため、「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」は1冊のコミックスとしては短く(半分くらい)、「岸辺露伴は動かない」の1エピソードとしては長いというボリュームだ。
しかし、1エピソードとしてはページ数が多いものの、大きなコマを使っているシーンが多いので、ストーリーのボリュームとしては「岸辺露伴は動かない」の他エピソードより特別長い感じはしなかった。
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フルカラーならではの見どころ
本作はフルカラーの作品。
近年は電子版でのフルカラー作品も少なくないが、それらの多くはモノクロ版で描かれたマンガに彩色を施したものであり、マンガ家の先生本人が塗っていないものが多い。
本作はそうではなく、荒木先生の描き下ろしのカラー作品である。
そのため、ベタっとした塗りではなく、余白を活かしたカラーとなっている。
シーンによって基調とするカラーが変えられており、シーンの雰囲気がそれで表現されている。
個人的にカラーで印象的なのは、ルーブル美術館の前で露伴がポーズを決める見開きのシーン、そしてクライマックスで「黒い絵」から〇〇〇が飛び出してくるシーンである。
特にクライマックスのシーンの、真っ黒な絵から鮮やかな色彩の〇〇〇が出てくるのが、黒とオレンジの対比で、カラーならではの表現であると思う。
岸辺露伴 ルーヴルへ行く (ジャンプコミックス) [ 荒木 飛呂彦 ]
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紙ならば愛蔵版、電子書籍ならスマホよりも大きな画面のタブレットがオススメ
さて、大きな愛蔵版コミックスと通常サイズのジャンプコミックスのどちらで購入すべきか、という問題については、値段が高くても愛蔵版の方が良いように思う。
前述のとおり、フルカラーでマンガながらルーヴルに展示された作品であり、画集的な意味合いも持つ作品だからだ。
どんなストーリーか読んでみたいというくらいであれば、ジャンプコミックスでも構わないと思う。
しかし、通常のジャンプコミックスより高い値段をどうせ払うのであれば、愛蔵版で上記のシーンを楽しんでほしいと思う。
電子版で読むとしても、スマホ画面よりかは、大きめの画面のタブレットの方がオススメである。
映画ノベライズ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く (集英社オレンジ文庫) [ 北國 ばらっど ]
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実写映画版では何が追加されるかが見どころ
上記のとおり、「岸辺露伴は動かない」シリーズのエピソードとしてはページ数は多いものの、ストーリーはそこまで長くない。
そのまま映像化するなら、これまでのテレビドラマ版の50分ほどの尺に収めるのも充分可能な長さだと思う。
そのため、実写映画版では原作マンガ版にはなかった要素が追加されるか、膨らませるシーンが多くあるのではと予想される。
原作マンガを読んでから、実写映画を観に行って、追加されたシーンがどこだったのかを探してみるのも面白いと思う。
また、現代の露伴と少年期(17歳)の露伴を演じる役者が異なっているので、原作マンガ版よりも少年期露伴の描き方が変わっていると思われる。
その点も楽しみなところだ。