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【死刑執行中 脱獄進行中】ジョジョ作者の90年代の短編集を紹介 吉良吉影の死後を描いた「デッドマンズQ」収録

 

「死刑執行中 脱獄進行中」は「ジョジョの奇妙な冒険」でおなじみの荒木飛呂彦先生の90年代の読切作品を収録した短編集である。

 

雑誌掲載時にはカラーでも、単行本化の際にはモノクロ収録されることが多いが、この「死刑執行中 脱獄進行中」は雑誌掲載時にカラーだったページはそのままカラー収録されているちょっと豪華な仕様。

 

この短編集の収録作品のあらすじについて紹介していこうと思う。

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死刑執行中 脱獄進行中

スーパージャンプ 1995年2号掲載)

 

ストーリー

囚人27号は殺人の罪で死刑判決を受けた。

彼が入れられた牢獄は、ベッドやソファ、テレビなどの調度品があり、窓がないだけで高級マンションのような作り。

牢獄らしくない部屋に戸惑う囚人27号だったが、電灯のスイッチ、置かれていた食事、椅子といったあらゆる物に、彼を傷つける罠が仕掛けられていた。

この部屋そのものが「処刑室」であると気付いた囚人27号は、罠をかいくぐり脱獄を考える。

 

牢獄での密室劇。

タイトル通り、死刑執行と脱獄が同時に行われる。

最初の1ページ目の裁判所のシーン以外には、主人公の他の登場人物は一切出てこないのが、不気味さをより引き立たせている。

 

「処刑室」での仕掛けは、食事に仕込んだ罠が作動し驚き身をのけぞらせると、座っていた椅子の罠が作動、というようなピタゴラスイッチみたいになっている。

ピタゴラスイッチ - Wikipedia

 

「灰皿で17発殴ってやったのさ 16のガキのくせにオレをだまそうとしやがって……

 いや…

 灰皿で16発 ガキの年齢が17だったかな……」

というセリフは、後のジョジョ6部「ストーンオーシャン」の

「あのオレの罪…何回刺したっけ……?

 (中略)

 検事は オレが69回ナイフで刺したといっていた……」

というラング・ラングラーのセリフを個人的には思い出した。

自分の罪が何回攻撃したことなのかは、覚えていないものらしい。

 

ラストのオチはなかなか印象深いが、それまでの食事とかどうしてたんだろう……?

 

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●ドルチ ~ダイ・ハード・ザ・キャット~

(オールマン 1996年11~12号掲載)

 

ストーリー

ドルチは一級建築士・愛子雅吾(あやしまさご)の愛猫。

雅吾はドルチと恋人を連れてヨットで海に出かけるが、暗礁に激突し、ヨットは転覆、無線機も壊れ遭難することになる。

恋人はおぼれ死んだため、傾いたヨットにはドルチと雅吾だけ。

食糧も飲み水も尽きていく中、雅吾はドルチを食糧としようとする。

ドルチは生き残りを賭けて雅吾と対決する。

 

ダイ・ハード」といえば、ブルース・ウィリス主演の、テロリストに占拠されたビル内で運のない刑事がたった一人で奮闘する映画を思い起こす。

 

本作も猫がたった一匹の状態で、生き残りをかけて戦う物語となっている。

ダイ・ハード - Wikipedia

 

愛猫家の編集者に対し、「でも、アンデスの山中で遭難したら、食べちゃうよ、きっと」といったイジワルな気持ちで作ったとのこと。

 

飼い主の建築士の情緒がイカれ過ぎていて、いかにも荒木作品の人物らしい。

 

荒木作品に登場する猫や犬はたいてい、ロクな目に遭わない。

本作では結局、生き残れるのかは実際に読んで確かめて欲しい。

 

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岸辺露伴は動かない ~エピソード16・懺悔室~

週刊少年ジャンプ 1997年30号掲載)

 

ストーリー

漫画家・岸辺露伴ヴェネツィアで教会の懺悔室の取材をしていると、露伴のことを神父と勘違いした男から、ある懺悔の話を聞くことに。

男は、とある外国人の浮浪者から恨みを買う。

その後、男の人生は怖いくらい好調となり、大金持ちになった上、結婚して可愛い娘にも恵まれる。

男が幸福の絶頂を感じた瞬間、娘に憑りついた浮浪者の霊が現れ、男を迎えに来たと襲ってくる。

浮浪者の霊は、この恨みが逆恨みでないことを運命に証明させるため、男にゲームを持ち掛けてくる。

 

「エピソード16」とナンバリングがされているが、「岸辺露伴は動かない」シリーズの第一作目。

後にシリーズとなった「岸辺露伴は動かない」の第一巻にも収録されている話。

 

少年ジャンプに掲載される読切作品は、連載経験のない新人漫画家や、前の連載終了後に次の連載を狙う漫画家の作品であることが多い。

だが、1997年に現役の連載作家の読切を掲載するシリーズ企画が行われた。

(連載+読切と、どれだけ漫画家を酷使するんだ、という企画だが……)

当時の他の漫画家だと、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の和月信宏先生(読切作品「メテオ・ストライク」)、「封神演義」の藤崎竜先生(読切作品「ユガミズム」)などの先生も参加されていた。

 

この企画では、縛りとして「連載作品のスピンオフ作品や外伝的作品は禁止」というルールがあった。

そのため、つの丸先生も、当時連載の「みどりのマキバオー」とはまったく関係ない少女マンガ風のギャグマンガときめきラブポーション」を発表していた。

 

そのため、「ジョジョの奇妙な冒険」のキャラクター岸辺露伴を登場させるのは、ルール違反になる。

 

しかし、本作での岸辺露伴の立ち位置は、「世にも奇妙な物語」のタモリのような物語のナビゲーター的な立場とのことである。

タイトルが「岸辺露伴は動かない」なのは、その立ち位置を強調し、岸辺露伴は主人公でないことを示すため。

 

とはいえ、やっぱりルール違反には変わりない気がする。

 

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●デッドマンズQ

(オールマン 1999年12~14号掲載)

 

ストーリー

<一話>

男は死んで魂だけの存在となって街を彷徨っていた。

生前の記憶がない男には、様々な疑問があった。

男は、自分がこの先どうなっていくのか分からなかった。

しかし、「仕事」を「生きがい」にすべく、男はとあるマンションを訪れるのだった。

 

<二~三話>

男は女坊主から「仕事」を引き受ける。

「仕事」はS市にある「軍人の家」にいる者を「始末」すること。

新幹線に乗って、男は「軍人の家」を訪れるが、中には人の気配はない。

代わりに正体不明の卵がいくつも出てくるのだった。

 

「〇話」の記載は特にないが、説明のため便宜的に上記の表現とした。

三話掲載され、一話目がひとつの話、ニ~三話目が前後編でひとつの話という構成。

 

タイトルの「Q」は「クエスチョン」の「Q」

(英語でタイトル表記すると「Deadman's Questions」(二話目の表紙より))

 

死んで街を漂う幽霊も、自由にどこにでも行き来できるわけではなく、何らかの「ルール」があるはずでは、という発想で描いたとのこと。

壁などはすり抜けられるが、生きている他人のいる「結界」には侵入できず、入るにはその人の「許可」が必要、生きている生命に触れられると魂が欠損する(自分から触れるのはOK)といった「ルール」がある模様。

 

主人公のデッドマンは、ジョジョ4部「ダイヤモンドは砕けない」に登場した吉良吉影の死後の姿。

だが、本人に名前以外の生前の記憶はなく、スタンド能力キラークイーンも使わない(使えない?)ので、「ダイヤモンドは砕けない」を読んでなくても特に問題はない。

 

生前の記憶はないが、静かに落ち着いて暮らせる場所がやっぱり欲しいらしい。

 

ニ~三話に登場する「屋敷幽霊」のアイデアは、ジョジョ6部「ストーンオーシャン」のエンポリオスタンド能力バーニング・ダウン・ザ・ハウスに引き継がれている。

 

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「死刑執行中 脱獄進行中」は、初短編集「ゴージャス★アイリン」から12年ぶりとなる2冊目の短編集である。

 

ゴージャス★アイリン」の頃に比べると、はるかに荒木先生っぽい作風が確立してからの作品群という印象。

 

荒木先生はアイデアを連載作品の方に使ってしまう上、近年は「岸辺露伴は動かない」シリーズがあり、マンガ以外のイラスト等の仕事もあるので、次に短編集が出る見込みはまったくない。

 

とはいえ、表題作「死刑執行中 脱獄進行中」みたいな読切でしかできない作品も、また読んでみたい。

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荒木先生 年表

 

1960年 生まれ

1981年 「武装ポーカー」発表(手塚賞準入選)

1987年 「ジョジョの奇妙な冒険」連載開始

1992年 「ジョジョの奇妙な冒険」第4部連載開始

1995年 「死刑執行中 脱獄進行中」発表

1995年 「ジョジョの奇妙な冒険」第4部連載終了

1995年 「ジョジョの奇妙な冒険」第5部連載開始

1996年 「ドルチ ~ダイ・ハード・ザ・キャット~」発表

1997年 「岸辺露伴は動かない ~エピソード16・懺悔室~」発表

1999年 「ジョジョの奇妙な冒険」第5部連載終了

1999年 「デッドマンズQ」発表

2000年 「ジョジョの奇妙な冒険」第6部連載開始

 

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