「The Final」に続き、映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」を観てきた。
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』公式サイト (warnerbros.co.jp)
まず、「るろうに剣心 最終章 The Beginning」の映画全般についてだけど、ストーリーは、映画シリーズの中の時系列的には一番古い話なので、過去シリーズは一切観ていなくても大丈夫。
(「The Final」を観ている方がベターだけど、観てなくても可)
幕末の京都を舞台に、主人公・緋村剣心(抜刀斎)が維新志士として人斬り稼業を始めるようになってから、妻となる女性・巴との出会いにより人斬りを辞める決意をするまでが描かれる。
歴史ニガテな人のためのおおよその歴史の流れと、本作の位置づけをザックリまとめる。
(太字が「るろうに剣心 最終章 The Beginning」の流れ)
黒船来航をきっかけにした江戸幕府の弱腰外交に、天皇を尊び外国勢力を排除しようとする尊王攘夷の気運が高まり、倒幕運動が始まる。
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飛天御剣流を修めた14歳の剣心(奥義:天翔龍閃は未修)、攘夷派の長州藩が奇兵隊の隊員を募集しているところに参加。
剣の腕を見込まれ、桂小五郎に拾われる。
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剣心、幕末の京都で暗殺を繰り返し、“人斬り抜刀斎”の名で呼ばれるようになる。
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長州藩の志士を中心とした過激派が、京都に火をつけ、その間に天皇を連れ去る計画を立てていたところに、京都の治安維持を担っていた新選組が襲撃。
剣心、長州藩の仲間を救おうと池田屋に向かうも、新選組の沖田総司に阻まれる。
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幕府方の薩摩藩、会津藩などにより長州藩は京都から追放される。
長州藩の桂小五郎らは京都を離れ身を隠すこととし、来るべき日に備え剣心にも巴を伴って、身を隠すように指示する。
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剣心、幕府方の刺客・闇乃武の襲撃を受ける。巴、死亡。
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鳥羽・伏見の戦いが勃発。官軍を示す錦の御旗が上がり、幕府軍は敗走。
剣心は、この戦いを最後に諸国をめぐる流浪人となる。
「The Beginning」で描かれる剣心は、ラストの鳥羽・伏見の戦いを除けば、年齢14~15歳くらいの設定。
とても、そうは見えないんだけど……
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・映画の全体的な感想
「るろうに剣心」の映画シリーズ5作の中で、本作はアクション少なめで最もドラマ性が高い。
その特徴なので、5作の中で一番高く評価する人(ドラマ好き)と、一番低く評価する人(アクション好き)とに分かれるのでは、と思う。
個人的には、あまりドラマ部分の出来がそれほど良いとは思えなかった。
(原作マンガで、ストーリーをそもそも知っていたせいもある)
大友啓史監督が演出して、佐藤健が“人斬り”岡田以蔵を演じていたNHK大河ドラマ「龍馬伝」ではもっとワンカット長回しを多用していた印象なんだけど、本作では会話シーンでカットを割り過ぎていたのが、入り込めなかった要因のような気がした。
あと、原作準拠で仕方ないことながら、ストーリーは全般的に暗い。
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・しかし、アクションはキレッキレ
さて、アクション要素は少なめと書いたが、それは「るろうに剣心」シリーズにおける従来比の話なので、他の時代劇映画に比べるとアクションは多い。
主演の佐藤健が、これまでの映画シリーズの剣心は、“人斬り”を引退した後の剣心だが、「The Beginning」は現役バリバリの“人斬り”なので、アクションがこれまで以上にキレッキレだと舞台挨拶で語っていたように、アクションはキレッキレ。
原作マンガのイメージだと、闇夜に辻斬りを重ねているのが“人斬り”の印象だったけど、本作ではまだ日が高いうちから、10人くらいが宴会をしているところに剣心一人で乗り込んで、全員斬殺というなかなか派手なアクションをしている。
後世に「〇〇屋事件」と名付けられても不思議じゃないほどの大事件。
剣心がいないところでも、池田屋に乗り込む新選組とか、ラストの鳥羽・伏見の戦いとか、見栄えのするアクションシーンがいくつかある。
・原作との違い
原作マンガとの大きな違いのひとつは、池田屋に向かう剣心と沖田総司の対決。
幕末の京都で、新選組とは何度も剣を交えたと剣心は語っているものの、実際に戦っているシーンは原作ではあまりなかったが、本作ではガッツリ対戦。
個人的には斎藤一とも戦って欲しかったけど、そちらはなかった。
原作との違い二つ目としては、長州藩の内通者の始末する刺客として、全身ヤケドを負って包帯まみれになる前の志々雄真実が原作では登場するけど、映画には出てこないこと。
(セリフで、それらしい“人斬り”がいることが示されるのみ)
藤原竜也の特別出演は残念ながらなかった。
三つ目の違いは、剣心の十字傷で、巴がつけた分の傷の付き方。
原作では、敵との間に飛び込んだ巴の手にあった刃が、弾みで剣心の頬をかすめたような描写だった。
しかし、映画では死の間際の巴が、剣心の頬に刃を押し当てる形で傷つけている。
巴の剣心に対する愛情と憎悪の入り混じった感情の表現だったんだろうか?
アホなブログ管理人には、この描写の理解が及ばなかった。
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個人的にはOVAの「追憶編」の方が好みではあったけど、実写映画版にはOVA版とは違う魅力もあったと思う。
(前述のアクションや雪中のシーンの美しさなど)
どちらが優れているかは好みの問題かとも思うので、できれば見比べて欲しい。
ところで最後に、この点にツッコむと、原作を含めたストーリーが破綻してしまうのだけど、一応、指摘しておく。
幕府方にとって、知る人ぞ知る存在の“人斬り抜刀斎”は長州藩の悪行(暗殺)を立証するために大事な証人なのだから、抹殺したらダメなんじゃないだろうか?
捕まえて、拷問するとかして証言をとらなければならない気がするんだけど……
まして、人知れず山奥で爆殺するなんて論外。
911テロの首謀者と目されるウサマ・ビンラディンが殺害されて、テロの真相が不明になってしまったのと同じになるのではないだろうか。
巴に弱点を探らせて戦うより、大量の酒を飲ませて酔いつぶれさせてしまうとか、もっと効率的で簡単な方法があるような……