映画「聖闘士星矢 The Beginning」を観てきたので、感想や雑記などを記していく。
●「コレジャナイ」感のB級映画と思って期待しないで観に行った
私は連載当時の原作既読勢であり、テレビアニメもリアルタイムで観ていた世代である。
だが、今回の映画については、聖衣のデザインのポスター・予告編の映像から、原作のイメージとは違う仕上がりになっているであろうことは、観る前から予想していた。
なので、原作とはどれだけ違っているのかという、むしろダメな部分を観に行ったというのが正しい。
そして、実際に観た感想としては、期待どおりの期待外れ(?)作品であったといえる。
まあ、キャラクターが見開きで必殺技名を叫びながらポーズをとり、その背後で銀河が大爆発をしているようなマンガを忠実に実写映像化するなど、そもそも土台ムリな話であったと思う。
ちなみに、ペガサス流星拳っぽい必殺技のシーンは、対フェニックス戦で披露される。
しかし、原作のように、1秒間に100発というほどの連射感はなかった。
とはいえ、ハリウッド実写版「北斗の拳」の北斗百裂拳、実写版「るろうに剣心」の牙突といったガッカリ実写必殺技を観てきた身としては、今回のペガサス流星拳は比較的許容範囲であったと感じた。
●英語版では「小宇宙」はコスモなのに、「聖衣」はアーマー、「聖闘士」はナイツ
今回は、字幕版で鑑賞した。
字幕の日本語は、原作どおりの用語を使用していたが、英語の発声としては一部異なっていたことに気づいた。
「小宇宙」は原作どおり“コスモ”と言っていたものの、「聖衣」は“クロス”ではなく“アーマー”、「聖闘士」は“セイント”ではなく“ナイツ”と言っていた。
おそらく英語で“セイント”と言うと聖人の意味で、闘いとは真逆のイメージになってしまうので、そのような表現になったのではと推測する。
「小宇宙」については、原作の一巻にあったように、「聖闘士は内なる小宇宙を爆発させ原子を破壊する」といった説明がなされていた。
だが、「聖衣」「聖闘士」については、黄金・白銀・青銅の階級があることなどの説明は不足しているのに、赤子のアテナを救ったのは黄金聖闘士、マリンさんは白銀聖闘士、星矢たちは青銅聖闘士といったことがサラっと語られるので、予備知識ゼロで行くとよく分からないかもしれない。
とはいえ、階級について理解が及んでいなくても、ストーリーの理解にあまり支障はない。
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●「グラード」は財団名ではなく、敵キャラの人物名
映画の作中に「グラード」という名前が出てくる。
原作勢からすると「グラード」といえば、城戸光政の設立したグラード財団を思い起こすが、今回の映画では「グラード」は敵キャラの人物名なので、原作勢は少し戸惑うところである。
今回出てくる「グラード」は、ヴァンダー・グラードという名でアルマン・キド(原作の城戸光政)の元・妻という設定。
アテナの力を危険と見て、その力を抹殺しようとするヴァンダー・グラードの勢力と、アテナを守ろうとするアルマン・キド(城戸光政)の勢力が対立するというのが、今作の基本ストーリーとなる。
「グラード」が敵キャラというので、多少面食らった。
しかし、原作のグラード財団も思い起こせば、孤児100名(実際は城戸光政の実子100名)を高圧電流の流れる塀の内側に閉じ込め、義務教育を受けさせず、聖闘士の修行の死地(生還率10%)に送り込む極悪組織だったので、あまりイメージは違わないのかもしれない。
なお、CGアニメ作品「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」には、ヴァンター・グラードというキャラが出ている。
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●「それ、ペガサスの聖衣じゃないぞ!」
ペガサスの聖衣については、ポスターや予告編にあるとおり西洋の甲冑のようなデザインになっている。
だが、映画では実はペガサスの聖衣の装着には、段階が二つある。
あの西洋甲冑のバージョンは、本来の聖衣の力を引き出した二段階目のバージョンなのだ。
最初に聖衣を装着した時には、左の側に肩当てと胸当て、左腕にプロテクターを装着した中途半端な状態となる。
このバージョンのプロテクターは、原作の一巻でカシオスと聖衣を巡って闘った際の星矢のプロテクターのデザインに酷似している。
あれは原作リスペクトのデザインなのだと思った。
しかし、原作であのプロテクターは聖衣を入手する前の恰好なので、「それ、ペガサスの聖衣のデザインじゃないぞ!」とも思った。
ちなみに、この聖衣装着時にアニメ主題歌「ペガサス幻想」がうっすらBGMで流れる。
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●執事の辰巳が聖闘士並みに強すぎる!
今回の映画では、原作には登場しない銃器やハイテク飛行機などの兵器が登場する。
そして、それらの兵器を操るのが、執事・マイロック(原作の辰巳徳丸)である。
このマイロックこと辰巳が聖闘士でもないのに、メチャクチャ強い。
(作中の銃は、全身を武装した敵には効果が薄いが、威力の高い銃ならばダメージを与えられるといった位置づけ)
敵の撃破数は、星矢とさほど変わらないほどである。
本作では、ドラゴン紫龍やアンドロメダ瞬ら、仲間の聖闘士が登場しないため、この辰巳が星矢の相棒のような扱いになっている。
原作ではあまり活躍のない辰巳が本作で大活躍するのは、監督の推しだかららしい。
ハリウッド実写映画「聖闘士星矢」の聖衣はなぜあのデザインなのか? 監督に直接聞いてきた : 映画ニュース - 映画.com (eiga.com)
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●アテナを本気で守る気あるのか!? 城戸光政(アルマン・キド)
原作の城戸光政は故人となっており、過去の回想でしか登場しない。
だが、今作の映画では星矢を聖闘士に導く重要人物として活躍する。
ネタバレになるが、この城戸光政(アルマン・キド)は中盤で壮絶な死にざまを見せる。
なんと爆弾を使って、攻めてきた敵もろとも自爆するのだ。
その壮絶な死にざまは劇的なのだが、肝心のアテナの安全がまったく確保できていない状態で爆弾をぶっ放すのは、どうかと思う。
「お前がアテナを危険にさらしているやんけ! 殺す気か!」と思ってしまった。
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●結局、魔鈴さんは星矢の姉さんなのか問題
星矢の聖闘士の師匠となる魔鈴さんが、星矢が探している姉さんなのかどうなのか、といった問題が、連載時も終盤になるまで明かされていなかった謎だった。
今回の映画では、なんとなく魔鈴さんと姉さんがダブって見えるようなシーンがちょっとだけあるのだが、あまり強調されてはいない。
星矢自身も「魔鈴さんは、もしかして姉さんなのか……?」と気付いているような様子は描かれていない。
そもそも映画の魔鈴さんはアニメ版に近いような赤毛の髪色なのだが、星矢の回想に登場する姉さんは黒髪のため、二人が同一人物ではないのか? といった疑問をまったく抱かない描写となっている。
せめて、髪色はあわせて欲しかった。
なお、「魔鈴さんは姉さんなのか問題」がまったく描かれない上に、「聖闘士の女子は素顔を隠さなければならない」という掟も描かれないので、魔鈴さんがどうして仮面女子なのか、映画を観ただけでは全然分からない。
続編があれば触れられるのだろうか?
せっかく映画の役をもらえたのに、顔が少しも映らない魔鈴さん役の役者さんが不憫でならない。
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●髪の毛の紫度合いが「アテナ覚醒度数」
今回のアテナ役の役者さんの髪型は、肩ぐらいの長さで少しウェーブのかかった金髪。
だが、よくよく見ると、ところどころに紫色のメッシュが入っている。
メッシュは通常、前髪とかの目立つ位置に入れるものだが、髪の後ろの方とか目立たない部分に入っている。
「もしかして、アニメ版のアテナを意識して、申し訳程度に紫を入れているのか?」と思って観ていたのだが、どうやらその考えは間違っていた。
クライマックスで、アテナの力に目覚めると、原作やアニメと同じく紫色のストレートロングヘアに変わるのだ。
どうもアテナの力が少ししか目覚めていないときには、まだらな紫、完全に目覚めると全体的に紫になる演出だったのだ。
演出の意図は理解したが、残念ながらあまり効果的とは思えなかった。
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●続編の可能性は……?
今回の映画は、星矢が聖闘士に目覚め、シエナ(城戸沙織)がアテナとして覚醒、今後の闘いに向けて聖闘士の仲間を探さなければ、というところで終わる。
このような終わり方なので、紫龍ら仲間を探す旅に出ても良いし、原作どおりに黄金聖闘士と闘ったり、ポセイドン・ハーデスのような他の神との戦争になっても良い、と続編をいくらでも作れそうな設定・ストーリーになっている。
しかしながら、公開2日目の土曜日に都内の映画館で鑑賞したのだが、私を含め観客は中年男性四人しかおらず、ガラッガラの状態だった。
この客の入りでは、続編の可能性は限りなく低いのではないかと懸念される。
数年経っても第二章の制作のウワサをまったく聞かない「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」と同じ道をたどるのではないかと思われる。
そういえば、両作品とも1980年代後半に連載開始したジャンプマンガで、どちらも新田真剣佑が出演している。
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ともかく、「聖闘士星矢 The Beginning」については、原作既読勢がツッコミどころを探しながら鑑賞するか、新田真剣佑のファンがお布施として観に行くくらいの楽しみ方しかないように感じた。
アクションは頑張っているものの、それだけで観に行く価値があるかというと少し微妙というところだ。