「キャプテン翼 MEMORIES」の第1巻が刊行。
タイトルから想像のつく通り、「キャプテン翼」本編では語られなかったエピソードを描いたスピンオフ読切集である。
キャプテン翼MEMORIES 1【電子書籍】[ 高橋陽一 ]
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第1巻では下記の3つのエピソードが収録されている。
「これは 南葛小vs修哲小 対抗戦当日に起こった話」
「大空家の引っ越し <『キャプテン翼』エピソード0>」
3つのエピソードでは、これまで知られていなかった情報が描かれていて、「キャプテン翼」ファンなら読んでおきたい1冊なのだけど、初出の情報が薄い……
以下、それぞれのエピソードについて、何が初出の新情報なのか記載していく。
・「これは 南葛小vs修哲小 対抗戦当日に起こった話」
エピソードの冒頭に、
「この物語は、対抗戦前にあった知られざる真実をまとめたものである」
「対抗戦開会式に参加しなかった南葛小サッカー部
何をしていたか、今回判明する」
とあおっているのだけど、わずか13ページしかないので、情報量が少なすぎる。
しかも「知られざる真実」と書いているが、登場人物たちが各家庭で「いってきます」、みんなで顔を合わせて「おはよう」と言っているだけなのだ。
「知られざる真実」とはいったい……?
〇初出の新情報
・翼がサッカー部の対抗戦の前に、陸上部の200m走にドリブルで乱入し、ぶっちぎりで勝っていたことは本編でも描かれていたが、200m走以外に走り幅跳びにもエントリーし、ドリブル込みのジャンプでダントツの飛距離を出していたことが判明。
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マドリッドオリンピックの日本vsドイツで、カール・ハインツ・シュナイダーとの激突で負傷し手術を受けることになった若林源三。
若林のために献血をした若林の元専属コーチの見上辰夫が、手術室の前で出会った頃(小学四年生~五年生)の若林のことを思い出すエピソード。
このエピソードは前後編なので、比較的情報量が多い。
〇初出の新情報
・若林家の祖先は江戸時代の豪商。
・明治時代の初代当主・若林源左ェ門は、地元・静岡県で運輸・造船・貿易の会社を次々設立。
・三代目当主・若林修造が源三の父。修哲小の理事長で地元の名士。
・源三には二人の兄がいるが、長男の名前は修一、次男の名前は栄二。
・源三の小学二年生時の誕生日プレゼントは、世界のサッカービデオ100巻と学校にサッカー専用グラウンド設置。
・源三の小学三年生時の誕生日プレゼントは、自宅にナイター付きの個人専用サッカーコート設置。
・源三の小学四年生時の誕生日プレゼントは、GKの専属コーチ・見上辰夫(元・日本代表の正GKで、メキシコオリンピック銅メダリスト。ヨーロッパ研修経験あり、静岡県サッカー協会職員)
・源三の小学五年生時の誕生日プレゼントは、犬のジョン。
・修哲小の同級生・井沢、滝、来生、高杉、森崎が若林のことを「さん付け」、敬語なのは、若林の要望。
・若林らが四年生時の静岡県代表、かつ全国優勝チームだったのは、志水小。
・若林、井沢、滝、来生、高杉が、五年生時に修哲小のレギュラーに選ばれる一方、志水小のGK川上守道も、五年生でレギュラー。
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若林の小学二年生~四年生の誕生日プレゼントが、桁外れ過ぎて「おぼっちゃまくん」みたいなのに、五年生のときにねだったのは普通の小学生らしく犬。
四年生から五年生の間に、若林に何があったんだろうか……?
あと、描かれなかった六年生の時の誕生日プレゼントが気になる。
同級生なのに「さん付け」を要望する若林に反発していた井沢、滝、来生、高杉が、若林の実力に一目置くようになったきっかけが、若林の自宅でのミニゲームだった。
若林+3人(計4人)ゴールは普通のサッカーゴール
vs
井沢、滝、来生、高杉、森崎(計5人)ゴールは小さいフットサル用のゴール
上記の状態なのに、若林からゴールを奪えないことに井沢らが度肝を抜かれるというもの。
とはいえ、若林チームの3人は見上コーチのツテで来た高校生なので、小学五年生チームを圧倒するのは普通な気がする。
キャプテン翼 ライジングサン 14【電子書籍】[ 高橋陽一 ]
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・「大空家の引っ越し
<『キャプテン翼』エピソード0>」
翼の父・広大と母・奈津子の出会いから、東京の下町で育った翼が小学六年生になるときに静岡県南葛市に引っ越すまでを、全4話をかけて描く。
〇初出の新情報
・父・広大は大型客船の船長、母・奈津子(旧姓:小坂)は英集出版の雑誌・月刊バイモスの編集。奈津子が広大にインタビューしたのが出会いのきっかけ。
・広大は船宿の一人息子で、父は八五郎、母はハナ。商船大学(現:海洋大学)を出て船長になった。
東京海洋大学 Tokyo University of Marine Science and Technology (kaiyodai.ac.jp)
・翼は、祖母・ハナに似てすぐ船酔いするため、船乗りになろうと思わなかった。
・翼は祖母に「ツーちゃん」と呼ばれていた。
・翼は野球がヘタ。
・東京での翼の周りにはサッカーをする仲間がおらず、友達が一人もいなかった。
・翼は五年生の時、同級生の青葉弥生の紹介で、弥生の兄・秀人のいる墨田区の私立・秀明学館中学のサッカー部の練習に混ぜてもらうことになり、中学生相手に頭角を現す。
・翼が新六年生になるタイミングで静岡県南葛市に引っ越し。親の仕事の都合などではなく、翼のサッカーのための転居だった。
・翼は、前年全国優勝の修哲小に行く予定だったが、若林・石崎との出会いにより、南葛小に行くことにした。
・弥生は父の仕事の都合で、都内の下町から山の手の東城学園に転校。そこで三杉淳に出会い、元カレ・翼から三杉に即座に乗り換える。弥生は尻軽。
・翼の東京の住まいの最寄り駅は、京成電鉄・四ツ立駅。同駅は、広大が奈津子にデートを申し込んだ駅であり、翼が弥生と別れた駅。
こうしてみると、大空翼、若林源三のどちらも親と金に恵まれていることが分かる。
息子のために引っ越ししたり、息子のためにサッカーグラウンドを作ったり、元・日本代表のコーチを呼んだり。
さらに日本にまだプロサッカーがない時代に、ブラジルや(西)ドイツに渡ることを後押ししてくれるのだ。
この親と金に恵まれた翼と若林が、ブラジル、ドイツ、スペインの1部リーグで大活躍する一方、早くに父を亡くし小学生時代から苦労人の日向小次郎はイタリアに渡るも、セリエAからセリエCのチーム(後にセリエBに昇格)に移籍するハメに……
放浪画家の息子・岬太郎も、フランスのパリ・サンジェルマンFCに決まりかけていたのに、交通事故でフイになってしまうし……
人生の厳しさと社会の格差を教えてくれるマンガ、それが「キャプテン翼」。
なお、京成電鉄・四ツ立駅は架空の駅だが、モデルは京成電鉄・四ツ木駅。
高橋陽一先生の出身地のため、同駅は2019年から「キャプテン翼」の特別装飾をしている。
過去のエピソードを基にしたスピンオフも充分面白いんだけど、マドリッドオリンピックの続きも正直進めて欲しい。
キャプテン翼 ライジングサン 15【電子書籍】[ 高橋陽一 ]
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