先日、映画「果てしなきスカーレット」についての感想を書いた。
鑑賞して分からなかったことが多くあったので、小説を購入して読んでみた。
その小説版を読んでの感想と分かったことについて書いていく。
●意外にしっかりした現実パートの設定
16世紀デンマークが舞台であることは映画でも触れられていたが、小説では当時のデンマークの周囲の状況が意外にしっかり描かれていて驚いた。
スウェーデンが独立しカルマル同盟が崩壊、スウェーデンとデンマークの関係が緊張していたことなどが書かれていた。
映画内でも、アムレットとクローディアスが攻めるべきか、外交をするべきかと口論していたのは、このスウェーデンのことである。
あいにくデンマーク史について詳しくないので、現実の歴史と比べてどのくらい正確なのかは分からない。
だが、設定ガバガバの印象だったものの、結構しっかりと考証が行われているようだった。
●真の黒幕は継母ガートルード
原案「ハムレット」で、主人公の母ガートルードは夫の死の直後にクローディアスと再婚したことから、ハムレットに「Frailty, thy name is woman.(弱き者よ、汝の名は女)」と言われてしまう。
「弱き者」と言われる存在の原典ガートルードだが、「果てしなきスカーレット」のガートルードはそうではない。
映画で幼いスカーレットの描いた父(夫)の似顔絵をビリビリに引き裂いて、感じの悪い人物としては描かれているが、出番は少なくて印象はさほど強くない。
だが、小説版を読むと、クローディアスと肉体関係を持ち、積極的に夫アムレットを抹殺しようと仕向ける毒婦として描かれている。
つまり父殺しの実質的な黒幕なのだ。
スカーレットが復讐すべきは、クローディアスだけでなく、この継母ガートルードなのである。
ところが、ラストでも特にガートルードは、スカーレットに処刑されたりすることはない。
一応、スカーレットが息を吹き返した様を見て、メンタルブレイクしているが罰は特に受けていない。
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●実はドイツに留学していたスカーレット
小説を読むと、スカーレットは19歳の時、ドイツのヴィッテンベルクに留学していることになっている(毒殺されたのは留学中に一時帰国した時)。
当時は王族でも女性が大学に通うのは異例中の異例となっている。
スカーレットを先進的な女性として描きたかったのではと推測するが、その留学費用については現国王の仇敵クローディアスが出しているのでは、と思うと少々モヤっとする。
また、スカーレットは復讐のために剣術を学んでいるが、映画ではそれを隠している様子はなかった。
小説版でも、こっそり特訓しているという描写はなかった。
復讐のために堂々と剣術を磨くスカーレット、
そのスカーレットを放置するだけでなく、留学費用まで出してあげるクローディアスの心理は小説版でもよく分からなかった。
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●すべての通貨が通用する「死者の国」の謎の市場
最終的な対決の前、市場で装備を整えるシーンがある。
映画ではそこまで分からなったが、この市場にはモンゴル、イングランド、ロシア、インド、ペルシャなど、様々な地域・時代の人たちが集っている設定であることが、小説では描かれている。
そこで、互いに持ち寄った剣や火縄銃などを見比べ、売買をしているのだ。
なお、様々な地域・時代の人たちが集まっているが、マシンガンや手榴弾などの現代兵器を持ち込んでいる者はなぜかいない模様。
また、この市場では色んな地域・時代の人たちがいて、それぞれの貨幣を持ち込んでいるが、なぜか両替なくそれぞれの貨幣が普通に取引に使われている。
日本円だけを見ても、明治時代の1円と令和の1円の価値は全然違う。
まして、国が違えばゴールドなどの鉱物の価値も違うものになっているはずなのだが、この「死者の国」では普通に貨幣が使える設定になっている。
具体的は描かれていないが、ローマ時代の金貨だろうが、和同開珎だろうが、米セント硬貨だろうが、何でも使えるということらしい。
「死者の国」の市場の店主は、未知の貨幣を差し出されたとき、その価値をどうやって見極めているのだろうか?
また、この市場では聖はキャラバンの人たちとの友情の証であるリュートを売り払っている。
映画で観たときも、「あれ、こいつ、大事なリュートを売ってる?」とは思ったが、借金の質草として預けているだけの可能性もあるので、前回の感想記事では書かなかった。
しかし、小説を読んで、籠手と引き換えに大事なリュートを売っていることが確定した。
最終の戦いで背負っているとアニメ作画的に邪魔なのは分かるが、出番がなくなったらリュートを始末するのは「人の心ないんか?」とは思ってしまう。
RPGでストーリーの進展のために必要なキーアイテムなのに、イベントが終わったら不要になるアイテムみたいな扱いに感じた。
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●結局、分からなかったこと
さて、小説を読破してみたのだが、肝心なことは分からなかった。
以下、上記以外でよく分からなかったことを列挙する。
・「見果てぬ場所」はどんな場所で、どうしてみんな目指しているのか?
・クローディアスの配下はいつ、どうして死んだのか?
・クローディアスはどうして「死者の国」で絶大な権力を持っていたのか?
・クローディアスは「見果てぬ場所」を目指す民衆と、どうして対立していたのか?
・殺人に否定的な聖が殺人を犯した心理とその後の心境の変化。
・竜とは何だったのか?
・クローディアスの配下(コーネリウスとヴォルティマンド)が裏切った背景。
などなど……
結局、分からないことだらけだった。
映画で描かれなかった点としては、死んでいたことが判明した聖と生きていたことが判明したスカーレットの会話の中、スカーレットのセリフで
「生きるべき(to be)じゃない……。復讐に取り憑かれていた私が死ぬべき(not to be)なんだ……」という
「ハムレット」の「To be, or not to be, that is the question.(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ)」 を下敷きにしたセリフがあったことが小説を読んで発見できたことくらいだ。
小説版は特に強くオススメするものではない。
一応、良いところを挙げておくと、文章が読みやすいのでサクサク読めるということだ。
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