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【果てしなきスカーレット】映画感想 酷評するほどではないが、意味が分からない点多し ルールを知らないスポーツを見ているような印象

 


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細田守監督の前作「竜とそばかすの姫」で見限り、観ないつもりだったのだが、世間のあまりの酷評に逆に好奇心を掻き立てられ、結局「果てしなきスカーレット」を観に行ってしまったので、感想を書いていく。

ネタバレあり

 

映画館の着席率4~5%と報じているところもあるようながら、自分が観に行った都内映画館の土曜昼からの上映回は1/4~1/5くらいの席は埋まっていた印象。

一桁の着席率ということはなかった。

(とはいえ、だいぶ余裕のある着席率には違いないが)

 

 

●ルールを知らないスポーツを見ているような印象

鑑賞した感想としては、「一部世間で酷評されるように怒りを覚えるほどの駄作ではないが、意味の分からない点が多くルールを知らないスポーツを見ているよう」という印象。

 

「ルールを知らないスポーツ」と表現した意味としては、

「プレイヤーの動きはちゃんと見えているが、

 そのプレイヤーの動きの目的・意味が分からなかった」ということである。

 

具体的には、「死者の国」の基本設定が分からないので、登場人物の行動の目的や、心境が汲み取れなかった。

もちろん、これは自分の読解力や教養の不足による部分もあると思うのだが、それにしても良く分からないところが多かった印象である。

 

では、その分からなかったところの詳細を語っていく。

 

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●基本設定が分からないのは前作「竜とそばかすの姫」も同じ

さて、基本設定が分からなかった「果てしなきスカーレット」だが、基本が分からなかったのは「竜とそばかすの姫」についても同様の印象を覚えていた。

 

「竜とそばかすの姫」は数十億人がアクセスしている仮想電脳空間「U」が主な舞台になっている。

しかし、そのU」にみんなが何の目的でアクセスしているのか良く分からずフワっとしていた。

 

「サマーウォーズ」の「OZ」も同じような仮想空間ながら、登場人物たちは「ゲームをする」という目的でアクセスしていると分かる展開になっている。

 

だが、「竜とそばかすの姫」の「U」は目的が分からない。

主人公がログインすると、仮想空間内を様々な姿をしたアバターたちが左から右へ、あるいは右から左へと、フワ~っと飛んでいる。

 

あのアバターの一体一体にも人生があり、生活があるはずだ。

なのに、彼らは知人と交流するでもなく、何等かの作品を鑑賞するでもなく、買い物をするでもなく、何か面白いことはないかと積極的に空間内を検索するでもなく、無目的にただただフワ~っと飛んでいるだけなのだ。

 

仮想空間「U」について、

「クリエイターたちが音楽など様々な自己表現をする場になっており

 表現を目的としたクリエイターたちと、

 それを鑑賞する目的の観客たちが集っている」

と規定してくれれば、主人公が歌でスターになっていく過程も飲み込みやすくなると思うのだが、この基本設定を規定しないままに進んでいくので、分かりづらくなっているように感じた。

 

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次は、「果てしなきスカーレット」について見て行こう。

 

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●基本設定の分からない「死者の国」

「死者の国」で良く分からないことを以下の点から語っていく。

・食料

・物資

・「見果てぬ場所」

 

・食料

冒頭でスカーレットが貪るように水を飲んでいるところから、「死者の国」でも喉は乾くらしい。

また、キャラバンから食べ物も分けてもらっているので、腹も減るらしい。

 

しかし、「死者の国」は見渡す限りの荒野で、畑や果実の成った樹木は見当たらない。

海や川もなくて魚も出てこない。

動物も出てくるのは馬、ラクダと鳥くらい。

 

彼らが食料をどう調達しているのかが良く分からなかった。

 

・物資

 

看護師の聖が持っていた医療用具のバッグを持ち込んでいたように、「死者の国」では衣服などと同じく持ち物も持ち込めるように思える。

 

しかし、携帯できるサイズの銃ならともかく、終盤では大砲が出てきて、明らかに持ち込みではないサイズのアイテムが出てくる。

現世からの持ち込みでないのなら、「死者の国」で製造していることになる。

だとすると、「死者の国」では、金属を採掘し、様々な工程を経て大砲にまでする職人や設備があることになる。

 

交易をしている集落のような描写はあったが、そこまでの工業的な文明があるようには見えなかった。

 

こういった食料や物資の供給源が分からないというのは些末な指摘だと感じる方もいるかもしれないが、重要なことだと思う。

なぜなら、食料や物資に恵まれているか否かは、争いの原因になるからだ。

 

「死者の国」では食料や物資が不足しており、生きるために他者から奪わざると得ないのか、奪わなくてもガマンすれば生きていけるのかでは、「争いを止めろ!」というメッセージが芯を喰っているのかどうか変わってくる。

 

「死者の国」の状況が分からないので「争いを止めろ!」が上滑りをしているように感じた。

 

・「見果てぬ場所」

「死者の国」の民衆は「見果てぬ場所」を目指している。

そのため、終盤では「見果てぬ場所」への道中に陣取っているクローディアス陣営と、それを打倒して「見果てぬ場所」に向かおうとする反クローディアス陣営と大規模な戦闘が描かれることになる。

 

だが、「見果てぬ場所」が結局、どんな場所なのか、どうして皆そこに行きたいのか良く分からなかった。

 

「死者の国」での生活がいかに劣悪なのか(キャラバンの人たちはそれなりに生きていけそうだったが)、そこから脱するために「見果てぬ場所」がどうしても必要であること、「見果てぬ場所」は限られた人たちしか行くことはできず、そのため争いが起きている、といった基本設定が分かりやすく提示されていれば、彼らの争いをすんなり理解できたのではないかと思う。

 

そして、終盤でクローディアス軍と戦っていた津波のような群衆が、「見果てぬ場所」の目の前になると、まったく登場しなくなるのも良く分からなかった。

戦闘シーンでは、何十万人もいそうだったのに。

 

かと思えば、クローディアスとの因縁に決着がつく辺りでは、キャラバンの人たちなど集団が、その場に居合わせている。

 

モブキャラたちが都合によって、いたりいなかったりするのが、繋がっていないように感じた。

 

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●クローディアスの配下はいつから「死者の国」に?

これも基本設定で分からないことなのだが、本作の敵役クローディアスとその配下が、現世と同じように城に住み、権力を「死者の国」で持っていることも理解できなかった。

 

スカーレットはクローディアスに殺されて「死者の国」に来たのだから、クローディアスはスカーレットより後から来たはずである。

(後から来た理由が毒の誤飲という呆れたものだが)

 

スカーレットは王女ではなく、一人の放浪者として「死者の国」をさまよっていたのに、クローディアスは現世の王様の地位をそのまま「死者の国」に承継していた理由が不明なのだ。

 

何より「死者の国」は、時代や場所を問わず、様々な時代・地域の死者が集まっている世界の設定なのだ。

同時代のデンマーク人だけでなく、例えば古代のエジプト人、唐時代の中国人、30世紀のアメリカ人などがいてもおかしくない設定である。

 

そんな「死者の国」で、とある時代のデンマーク国王の地位など「誰それ?」といった程度の認識になりそうなものなのに、なぜかクローディアスは王として振る舞っているのだ。

 

また、毒で死んだクローディアスは百歩譲って良いとしても、彼の配下にいたっては、いつ、どうして死んだのか不明だ。

 

現世でスカーレットとクローディアスが争っているところ、天変地異が起きて、その時代のその周辺にいたデンマーク人たちが集団でまとめて「死者の国」に送られたとか設定があれば理解できるのだが、そういった設定は特になかった。

 

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●なぜ先王と一緒にスカーレットを処刑しなかった?

スカーレットは父の先王をクローディアスに処刑され、その復讐を誓うというのが基本設定である。

 

スカーレットは数年間、復讐を果たすため、女性ながら剣術などの戦闘技術を磨くことになる。

 

ここで分からないのが、スカーレットが男性に引けを取らないほどの一級の戦闘能力を身に着けるまでの数年間、クローディアスがそれを放置していることである。

 

原案の「ハムレット」では、先王は実は暗殺されていたという事実が公には伏せられているので、大っぴらにハムレットを害しようとはしてこないが「果てしなきスカーレット」では先王は公衆の面前で処刑となっている。

 

難癖をつけて堂々と処刑をしているのだから、スカーレットも適当な理由を付けて、そのときに一緒に処刑すれば良かったのである。

姪っ子を処刑することにためらいがあるのなら、幽閉するとか、他国に追放するとか、他にやりようがあったはずだ。

 

なのにクローディアスは、スカーレットを完全に放置。

事実上、復讐のためのトレーニングを黙認しているのだ。

 

そのくせ、「死者の国」では刺客を送ってまで、執拗にスカーレットを抹殺すしようとしてくる。

数年間、放置してたのに。

 

小説版では、この辺りをもしかしたら補完されているのかもしれないが、映画を観た範囲では、クローディアスの立ち回りはアホっぽく感じた。

 

 

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●「死者の国」なのに亡霊?

クライマックスでは、仇敵クローディアスと対峙したスカーレットが、復讐を果たすべきか、叔父を赦すべきかの選択の迫られることとなる。

 

クローディアスとの決着が着いた後、先王である父の亡霊が現れる。

 

死んだ身内・友人が亡霊となって主人公の前に現れるのは、フィクションの定番である。

また、原案の「ハムレット」でも先王の亡霊は登場し、自身の死の真相をハムレットに告げる役目をおっている。

 

しかしながら、「果てしなきスカーレット」の舞台は「死者の国」なのだ。

 

「死者の国」で亡霊というのは、どういう状態なのだろう?

 

「死者の国」なのだから、先王のお父様が先に「死者の国」に来ていた者として、実体で現れ、

「スカーレット、辛い役目をさせてすまなかった。

 だが、父は復讐など望んでいないのだ」

と、自身の口から語らせたらダメだったのだろうか?

 

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●要る? 「死者の国」の設定

そもそもなのだが、「死者の国」の設定はこの物語に必要だったのだろうか?

 

ダンテの「神曲」を下敷きにしているのだろうが、「死者の国」を出さない以下のようなストーリーでも成立ていたように思う。

 

処刑された先王の娘・スカーレットは現王・クローディアスの目を逃れ、数年間、逃亡生活を送りながら復讐の機会をうかがっていた。

そんなスカーレットの前に現れたのは、次元の歪みによりタイムスリップしてきた現代の日本人・聖だった。

聖と行動を共にするようになったスカーレットは、自身の復讐の意味を見つめ直すことになる――

 

上記でも通じるような気がするが、それだと細田監督の表現したかったことは描けてないのかもしれない。

その辺りは凡人には分からないところだ。

 

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●例の渋谷ダンスの件

「果てしなきスカーレット」で触れずにはいられないのが、例の現代の渋谷でのダンスシーンだ。

 

唐突に出てくるトンチキさはもちろん感じるのだが、ここでは文脈的な意味ではなく、そのアニメーションのクオリティについて語ろうと思う。


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この渋谷のダンスシーン、正直にいうと、あまりクオリティが高いように思えない。

 

渋谷に集う群衆は動きに乏しく、没個性のシルエット表現で、

行政が出してきた新しい都市計画のイメージCGみたいに感じ、制作陣の熱量をあまり感じなかった。

 

スカーレットと聖のダンスについても、ハイクオリティなアニメがたくさん出ている昨今の中では可もなく不可もなくといった印象だ。

 

素人目には、馬に乗った激しい戦闘シーンと比べると、渋谷ダンスシーンはクオリティが低いように思われた。

 

制作陣の「どうしてもこのシーンを入れたいんだ!」という情熱を感じられない。

 

文脈的な唐突さだけでなく、このアニメーションの出来が悪目立ちしていたように思う。

 

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●酷評は期待の裏返し?

さて、ここまで「果てしなきスカーレット」を鑑賞して思ったことをつらつらと綴ってきた。

 

しかしながら、酷評している人たちにしても、細田監督のアニメーションのクオリティの高さは認める所であろうし、大きな予算での大作を任される数少ない監督であることは間違いない。

 

その期待があるからこそ厳しい評価を下されているのだとも思う。

世間には話題にすらならない作品が無数にあるのだ。

 

だからこそ、ここまでダメな点を挙げながらも、どこか次回作に期待する思いがわずかながらもあるのだ。

何だかんだ言いながらも、結局、次回作も観に行ってしまうのかもしれない。


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ところで本作で細田監督は、監督・原作・脚本だけでなく、劇中歌の作詞も手掛けている。

特に関連はないが、個人的には最終回で先生自身が作詞した「Dear Prince~テニスの王子様達へ~」の歌詞を掲載した「テニスの王子様」をふと思い出していた。

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