映画「ミッドナイトスワン」が好きだったので、「ナイトフラワー」を観てきた。
その感想を記していく。
●主演女優陣の演技が圧巻
相当、面白かった。
ストーリーなど全体に渡って面白いのだが、特に北川景子と森田望智の熱演が素晴らしいと思った。
北川景子は、化粧っ気のない毎日の生活に疲弊している感じが出ていた。
ドラッグの売人になる前の状態について、かなり時間を使っており、行政を頼り、バイトを掛け持ちしてムチャな働きをした上で、貧困から逃れられない様子がしっかり描かれている。
森田望智に至っては、体型から他作品での印象と全く異なっており、がっしりした身体作りから役作りをしていたことが分かる。
さらにトレーニングシーンや激しい格闘の試合シーンと、誤魔化しのきかないシーンが多かった。付け焼刃ではできない演技だと思う。
また、生活のために風俗嬢をやっている設定ながら、ガニ股で歩き、がらっぱちな態度で色気を何も感じさせない風に演じていた。
とても「全裸監督」でメチャクチャお色気を振りまいていたのと同じ人物とは思えない。
●「ミッドナイトスワン」との共通点
本作「ナイトフラワー」は、「ミッドナイトスワン」と構成要素に似通っているところがある。
以下、似ていると思う構成要素を列挙する。
・夜の歓楽街が主な舞台
ミッドナイトスワン:新宿
ナイトフラワー:蒲田
・社会にうまく馴染めない主人公が疑似家族を形成する。
ミッドナイトスワン:親戚の少女を引き取る
ナイトフラワー:格闘家の女性を家族に引き入れる
・娘が習い事をしている。
ミッドナイトスワン:バレエ
ナイトフラワー:バイオリン
・主人公一家とは対照的に、経済的には裕福だが、親にあまり愛されていない娘の存在
しかし一方で、「ミッドナイトスワン」とは違っている点もある。
次は違う点について書いて行こう。
●裕福な家庭の娘との関係性
上述の通り、裕福な家庭の娘が両作ともに出てくる。
「ミッドナイトスワン」の方では、娘の友人として出てくるが、草彅剛演じる主人公との関連性はほとんどなかった。
しかし、「ナイトフラワー」の方に出てくる裕福な娘は、主人公の売ったドラッグで、より不幸になっていっている。
「ミッドナイトスワン」も「ナイトフラワー」も、どちらも広い意味でボーダー上にいる存在になっている。
「ミッドナイトスワン」では性別のボーダー、「ナイトフラワー」では法律のボーダーだ。
「ミッドナイトスワン」の性別のボーダーは、好奇の目にさらされたり、差別を受けたりという社会的な生きづらさはあるものの、個人の生き方であり、他者を不幸にしていることはない。
だが、「ナイトフラワー」で法のボーダーを超えた主人公は、明確に他者を不幸にしている。
だからこそ観ていて観客は葛藤を覚えるのだと思う。
もちろん、作中でも「自分の子どものために 人を不幸にしてまで 必死に生きようとしている」と言及され、決して主人公たちの行動を全面肯定的には描いていない。
犯罪の上に成り立っている主人公たちの生活が、最後どのような結末を迎えるのか、鑑賞中にとても不安を覚えることになった。
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●小さい罪からの大きな罪
貧困シングルマザーがドラッグの売人になる過程を描いているのだが、その過程も見事だと思った。
夜の歓楽街で、ドラッグの売人が売買の直後、その売り上げを狙うハイエナのような連中に叩きのめされたところに主人公が居合わせたのが、ドラッグに関わるキッカケとなっている。
その際、彼女は中華料理店が手付かずの餃子弁当を廃棄していたのを、持ち帰ろうか逡巡していたところでもあった。
餃子弁当とドラッグを持って逃げるか迷うことになる。
廃棄弁当を勝手に持ち帰るのも、ドラッグを所持・販売するのもどちらも違法行為である。
その両方を違法だからと、一律にダメと考える人も少なくないだろう。
作中でも、主人公は勢いで持ち帰った弁当とドラッグをどちらも捨てようと一瞬するが、結局捨てられないことになる。
一方で、廃棄弁当を持ち帰るくらいは、誰に迷惑かけるでもないので、許容範囲だと考える人もいるのではないだろうか。
このシーンまでに主人公が、貧困で手詰まりになっていることは十分描かれているので尚更だ。
この「廃棄弁当を持ち帰る」という一般的には重くない罪を犯させてから、「ドラッグの所持・販売」という重い罪を犯させるという流れが見事だと感じた。
裏世界とつながりのない主人公がいきなり「ドラッグ販売」に進むのではなく、ひとつ段階を経るのが良くできた脚本だと思ったのだ。
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●一番、心がエグられたことは
本作「ナイトフラワー」には、流血を伴う暴力など、痛々しい描写がいくつかある。
しかし、鑑賞中に最も心がエグられたシーンはそれらではなかった。
一番、エグられたシーンは、多摩恵を含めた家族4人が楽しそうに遊んでいるシーンだった。
というのも、犯罪の上に成り立つ生活がそのまま継続していくとは思えないからだ。
いずれ破綻するであろうことが予測されるので、観ていて彼女らが楽しそうであればあるほど、ラストの展開の落差に耐えられない気がして仕方がなかった。
ネタバレになるので、ラストの展開については書かないが、幸せシーンはツラいものがあった。
この映画を観に行くときには、時間の余裕もさることながら、精神的な余裕がある時の鑑賞をオススメしておく。
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