映画「ルックバック」を観てきたので、感想などを記していく。
基本的に原作マンガは読んでいるものとして書いていこうと思う。
●もっとも印象深かったシーンは、雨中を駆けていくシーン
全体的に原作準拠で作られた映画で、印象深いシーンはいくつもあったが、特に印象に残ったのは、主人公・藤野が京本と初対面を果たした後、雨の中を踊るように駆けていくシーンだ。
原作マンガでも見開き2ページで描かれて印象深いシーンだ。
だが、映像になって色と動きがつくと、また違ったシーンになっている。
藤野の高揚した心境を跳ね回るような動きで表現し、どんよりとした暗い空、ぬかるんだ地面が、一度はあきらめたマンガの道が辛く困難なものであると表現されていたと思う。
主人公の前途が開けたシーンが、こんなに暗いトーンなのは珍しい気がする。
(動きは明るいのだが)
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●バランスボールではなくなっても、どうしても背中は見せたい
原作と違っていて気になったのは、プロのマンガ家になった藤野が座っているのがバランスボールでなくなったところ。
本作では、原作も映画も、藤野が机に向かっているシーンの多くは背中向きで描かれている。
小学生時代の藤野が使っているのは、背もたれのない椅子であり、藤野の背中をより強く描きたいという意図を感じる。
大人が仕事用にちゃんとした椅子を購入したら、たいてい背もたれつきの椅子になる。
だからこそ、藤野の背中を描くため、タツキ先生の原作では、藤野は椅子ではなくバランスボールに座っていたのだと思う。
ところが、どういう事情によってかは知らないが、映画ではバランスボールではなく、椅子に変わっていたのだ。
しかし、椅子に変わっても、藤野の背中はしっかりと描かれている。
このどうしても「背中をしっかり描きたい」という意図は感じられた。
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●二人が観ていた映画はやっぱり「爆破オチ」
一瞬だけのシーンではあるが、藤野と京本が街で観ていた映画は「爆破オチ」だった。
タツキ先生の映画ネタといえば「爆破オチ」なのは、「さよなら絵梨」履修者ならば常識。
こういう細かい部分に、映画スタッフの作品への愛情を感じる。
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●入場者特典は、藤本タツキ先生の原作ネーム全ページ収録のStoryboard
この入場者特典は、全ページが収録されており、導入からラストまでが描かれている。
主人公二人の名前が、藤野が三船、京本が野々瀬になっているなど、マンガとして最終的に発表されたものと、微妙に異なっているが、ストーリーや設定などの流れについて、完成版と大きな違いはない。
非売品なので、この入場特典の入手のためだけでも劇場に行く価値はあると思う。
●一時間足らずだが、確かな満足感
原作マンガがそもそも短いこともあり、映画は57分と短い。
料金こそ通常の2000円ではなく、特別料金1700円と割安になっているが、一時間足らずの短さに、わざわざ足を運ぶ価値はないのではと、迷っている方もいると思う。
だが、三時間の超大作を観に行くことを思えば、気軽に観に行くことができる。
それに、二時間の映画であっても、鑑賞を始めたことを後悔する作品も少なくない。
本作は一時間足らずだが、原作愛を持って、高いクオリティで作られており、充分にオススメできる映画だと思う。
少なくとも、自分が観に行った回では、エンドロールが流れ出しても、終わるまで席を立つ人は誰もいなかった。
劇場アニメ『ルックバック』 劇場情報 (eigakan.org)