「キャプテン翼」の「無印版」は大ヒットしたが、「ワールドユース編」以降のシリーズが低迷している理由を引き続き考察していく。
一つ目として、物語の「軽やかさ」が「無印版」のヒットの理由と同時に、以降のシリーズの低迷の理由として挙げた。
二つ目の理由としては、1980年代とそれ以降の読者のサッカーの知識量の変化が挙げられる。
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「キャプテン翼」のサッカーは現実と違うことがバレた
「キャプテン翼」のサッカーは、スタープレイヤーがスーパープレイを繰り広げる個人技主体のスポーツとして描かれている。
一方で、ボールを持っていないプレイヤーたちが、どのようなフォーメーションになっているかはあまり考慮されない。(攻守のどちらとも)
攻撃側の「ディフェンダーの裏のスペースを取る」、守備側の「スペースを潰す」といった概念は「キャプテン翼」にはほぼ出てこない。
しかし、現実のサッカーでは、スペースをどのように作って利用するか、相手が自由に動けるスペースをいかに潰すかが重要になっている。
「キャプテン翼」は個人技主体だが、現実のサッカーはチームが組織として機能することの方が大事なのだ。
1980年代に連載された「無印版」の頃には、読者のサッカーの知識はそれほど高くなかった。
だが、現在ではサッカー経験者でなくても、サッカーのことを語れる人は少なくない。
この現実のサッカーとの乖離に世間が気付いたのが、「ワールドユース編」以降が低迷している理由ではないかと思う。
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「無印版」連載当時の1980年代にはサッカーコンテンツは少なかった
通称「無印版」と呼ばれる「キャプテン翼」の連載は、1981年~1988年の期間であり、日本にプロサッカーリーグができる前の頃だった。
本記事を書いているブログ管理人は、1980年代後半に小学生だった一人である。
当時を経験している者として、1980年代のサッカー事情について記していく。
1980年代当時の小学生にとって、サッカーは決してマイナースポーツではなかった。
学校にはサッカーボールもゴールもあり、やったことがあるからだ。
しかし、プロサッカーリーグがなかったため、メディアにサッカーが出てくることは、今とは段違いに少なかった。
日本にはプロがなく、実業団と学生サッカーしかないので、テレビでサッカー中継の機会は少なかったのだ。
衛星放送も開始される前(BSアナログが1989年~)であり、インターネットも一般的ではない時代、テレビで放送されることがなければ、サッカーの映像を観る機会はなかった頃である。
自分が一般的な小学生だったかは定かではないが、ブログ管理人は1986年ワールドカップでMVPを獲ったディエゴ・マラドーナのことさえ当時は知らなかった。
1980年代当時の小中学生にとって、「キャプテン翼」は数少ないサッカーコンテンツだったのだ。
「キャプテン翼」を通じて、FW、MF、DFといったポジションの呼び方、オフサイドのルールを知った人も少なくないと思う。
もちろん、当時の小学生も立花兄弟のスカイラブハリケーンといった「キャプテン翼」のプレイがすべて実在するとは思っていない。
しかし、スカイラブハリケーンがレベルの高いサッカーの正解でないことは想像がつくものの、レベルの高い実際のサッカーに触れる機会がないので、正解が分からない状態ではあった。
このレベルの高いサッカーコンテンツに触れる機会がなかったことが、1980年代の読者を引き付けられた理由だと思う。
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1993年のJリーグ開幕以降、サッカーコンテンツは激増
さて、サッカーコンテンツが少なかった1980年代だったが、1993年にJリーグが開幕すると日本のサッカー事情は大きく変わる。
テレビでサッカーの試合を中継することが普通になった。
(開幕当初は地上波ゴールデンで試合を中継していた)
また、ワールドカップのアジア予選に挑む日本代表の試合結果が国民的関心事になった。
1994年ワールドカップの出場権を賭けたアジア予選に敗退した「ドーハの悲劇」(予選は1993年)は大きくメディアで取り上げられた。
「キャプテン翼」1巻には「ワールドカップって何?」と翼のママがロベルト本郷に質問するシーンがある。
1980年代ではワールドカップを知らない人も多かったが、1993年以降では日本人でワールドカップを知らない人はほとんどいない状態になっていた。
「無印版」に続く「ワールドユース編」の連載は1994年からなので、「無印版」を除いてはJリーグ発足以降の連載ということになる。
Jリーグの発足に加えて、サッカーマンガも続々と発表された。
そして、そのサッカーマンガの多くで、「キャプテン翼」ではあまり語られなかったサッカー戦術に言及がされていた。
もはやサッカー経験者でなくても、サッカーマンガの読者というだけで、サッカーの戦術について語れるほどだ。
昨今のマンガ読者は、オフサイドトラップくらいの戦術では「なにィ!」と驚くことはないのだ。
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いっそのことトンデモサッカーに振り切るべきか
さて、1990年代以降の読者のサッカーリテラシーの向上から、「キャプテン翼」のサッカーが現実と違うことが分かってしまったと書いてきた。
だが、「キャプテン翼」の作風を大きく変えて、昨今のサッカーマンガのようなサッカー戦術を取り入れるのも違う気がする。
もう「新テニスの王子様」くらい振り切ったトンデモスポーツにしてしまった方が良いかもしれない。
今後、セグウェイドリブルを超えるトンデモプレイが出てくることを期待したい。
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