カワズまんが研究所

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【タコピーの原罪】ツラ過ぎる少女たちの現実の前に現れた、役に立たないドラえもん的宇宙人の話

ジャンプ+で、1話ごとのPV数が300万を超える大反響の作品

 

「タコピーの原罪」は、少年ジャンプのWebコンテンツ、ジャンプ+で連載された作品である。

2021年12月10日~2022年3月25日の3か月と少しの連載期間にも関わらず、反響は大きく、1話ごとのPV数は300万を超えており、最終回の更新の際は日付の変わる0時過ぎのジャンプ+のサーバの反応が重くなっていた。

 

主人公のタコピーは、タコのような外見をした宇宙人(ハッピー星人)で、子供の落書きみたいなシンプルなデザインをしている。

しかし、そのギャグマンガ的なタコピーのデザインとは裏腹に、本作で描かれている内容は、イジメ、毒親、DV、自殺、殺人と、かなり重たい。

 

当ブログでは、「タコピーの原罪」について紹介していく。

 

ストーリー概要

 

宇宙にハッピーを広めるため旅をしているハッピー星人のタコピーは、地球に降り立ち小学四年生のしずかと出会う。

空腹だったタコピーに給食の残りのパンを与えてくれたしずかに、何かお礼をしたいというタコピー。

手持ちのハッピー道具でお礼をしようと提案するが、しずかは拒否。

しずかは、父親が家庭を捨てたため、水商売をしている母親と暮らしており、同級生のまりなを中心としたクラスメイトからのイジメに遭っていた。

唯一の心のよりどころは、父の残していった犬のチャッピーだけで、チャッピーと触れ合う以外に、しずかが笑顔になることはなかった。

ある日、タコピーの前に現したしずかは、顔にケガをしており、手にはチャッピーの首輪を握りしめていた。

「友達とケンカした」と言うしずかに、タコピーはハッピー道具のひとつ「仲直りリボン」を見せると、しずかは意外にもそれをすんなりと受け取る。

しかし、しずかが「仲直りリボン」を受け取ったのは本来の使い方のためではなく、それで首を吊って自殺するためだった。

自殺したしずかの姿を見つけたタコピーは、別のハッピー道具「ハッピーカメラ」を使って数日前に戻る。

時間を戻したタコピーは、今度はしずかを笑顔のハッピーにするべく誓うのだった。

 

以上が、1話のストーリー。

 

この後のストーリーでは、いじめっ子のまりなの家庭も崩壊していて、母親から暴力を受けていること、

しずかに救いの手を差し伸べる同級生の東については、優秀な兄へのコンプレックスと母親の期待に応えられていないで苦しんでいるなど、

小学生たちの重すぎる現実が展開される。

 

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ドラえもんとの違い

 

悩める小学生の前に、便利な道具をもたらす存在が現れるマンガと言えば、ドラえもんを思い浮かべる。

「タコピーの原罪」は、「しずかちゃん」の名前と言い、三本の土管を積んだ公園(空き地)といい、ドラえもん」を意識していると思われる。

 

しかし、内容については違っている

 

ドラえもん」のストーリーは、すべてではないが、以下のパターンが多い。

 

のび太に何らかの困りごとが起こる。

 (ジャイアンにイジメられる、スネ夫に嫌味を言われる、先生/ママに叱られる、など)

 

ドラえもんひみつ道具で、のび太の困りごとは解決。

 

のび太が調子に乗ってひみつ道具を使い、自滅する。

 

ドラえもんは、設定上は落ちこぼれのポンコツロボットだが、上記の流れでいうとのび太の①の困りごとは、いったん②で解決している。

最終的に、のび太の失敗のオチがつくものの、一応のび太の困りごとは解決しているので、ドラえもんはそれなりに優秀である。

 

しかし、「タコピーの原罪」においては、タコピーが介入することで事態は好転しない

むしろ、タコピーが関与することで事態は悪化する。

 

魔法のような道具が、小学生を苦しめる現実の前には無力だ、という描かれ方をしているという点で、「タコピーの原罪」はアンチ「ドラえもんと言える。

 

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「おはなし」がハッピーをうむ

 

ネタバレになるため、詳しくは書かないが、物語終盤のタコピーのセリフに、

「一人にして ごめんっピ」

「おはなしが ハッピーをうむんだっピ」というものがある。

 

現実の様々な事件報道を見ていると、それが大人が起こしたものにしろ未成年が起こしたものにしろ、誰か一人でも相談に乗ってくれる存在がいたなら、この事件は発生しなかったのでは、と思うことが少なくない。

 

誰しもが、どうしようもない悩みや不安を抱えている。

それでもハッピーになれないのは、「おはなし」できる相手がいない孤独が要因なのでは、というのが「タコピーの原罪」が描いたテーマだと思う。

 

「タコピーの原罪」の1話のサブタイトル「2016年のきみへ」

最終話のサブタイトル「2016年のきみたちへ」と複数形になっていることと、

タコピーとおはなしをしたキャラが、

「最近はちょっと悪くないんだ」と言ったことが

その表れだと思う。

 

登場人物たちの孤独は癒されたのか、本当にハッピーになることができたのかは、本作を読んで確かめてみてほしい。

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上下2巻で完結

 

本作は、全16話、上下2巻で完結しており、とても短い。

「面白いマンガを読みたい」と思っているけど、

「10巻も20巻も読んでいる時間も気力もない」とか

「いつ完結するか分からない連載中のマンガを追っかけたくない」と、

考えているマンガファンにとっても、読みやすい作品である。