少年ジャンプはスポーツマンガが弱い
少年ジャンプは、スポーツマンガが他の少年誌に比べて弱い傾向にある。
大ヒットした名作スポーツマンガはいくつもあるものの、その数はあまり多くない。
2021年12月現在の連載陣を見ると、「アオのハコ」が該当するが、本作は青春モノ、恋愛モノの要素が強いので、本格スポーツマンガとは言い難い。
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スポーツマンガはインパクトに欠けるためアンケートを取りづらい
ジャンプでスポーツマンガの連載が定着しにくい理由は、読者アンケートが取りづらいからだと思う。
現実とは異なるファンタジー要素のあるマンガであれば、主人公の能力、世界観の設定などなど、作品にオリジナリティを出し、読者にインパクトを残すことが比較的に容易だ。
しかし、現実をベースとしたスポーツマンガだと、ぶっ飛んだオリジナル要素は入れづらく、どこかで読んだことのある印象のマンガになりがちになってしまう。
特に野球、サッカーといったメジャーなスポーツでは、マンガ作品数が膨大にあるため、既視感はぬぐえない。
かといって、マイナー競技を題材にしても、興味を持ってもらいづらい。
いずれにしても、新連載が始まった際に、インパクトのある設定やストーリーを作りづらいのは確かだと思う。
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王道か邪道か
少年ジャンプに連載するマンガ家を主人公としたマンガ「バクマン。」では、作品を“王道”と“邪道”とに分類していた。
スポーツマンガにおいての“王道のストーリー”といえば、“落ちこぼれの弱小チームが、努力と友情で強豪チームに立ち向かい勝利する”といったものだろう。
これはとても燃える展開だ。
だが、古今、同じようなストーリーは星の数ほどあるので、画力やキャラの魅力、セリフのキレ、構成力などの“漫画力”がよほど優れている作品でなければ、生き残るのは難しい。
とはいえ、あまりに奇をてらった“邪道”だと、第一話では強いインパクトを残すことに成功しても、長い連載で“邪道”のストーリーを展開し続けるのは困難である。
“王道”も“邪道”も、どちらにしても連載を成功させるのは難しい。
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王道主人公+邪道主人公の組み合わせ「黒子のバスケ」
さて、そこでブログ管理人が個人的に理想のスポーツマンガだと思うのが「黒子のバスケ」だ。
「黒子のバスケ」の魅力といえば、“キセキの世代”を始めとした多彩なライバルキャラを挙げる人も多いことだろう。
しかし、魅力的なライバルキャラが大勢登場したのは、連載を重ねていってのことである。
ジャンプ新連載マンガに課せられた連載初期の打ち切りの壁を「黒子のバスケ」が乗り越えられたのは、主人公二人体制にあったと考える。
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王道型主人公・火神と変則型主人公・黒子
主人公の一人・火神大我は、身体能力に優れ、高い潜在能力を秘めているが、粗削りな発展途上にあり、技術的な完成度は“キセキの世代”に及ばない。
しかし、強敵に真っ向勝負を挑む中で、その潜在能力を開花させていく。
性格は理論派ではなく、直情的な熱血タイプであり、スポーツマンガにおける“王道中の王道”主人公である。
一方、もう一人の主人公・黒子テツヤは、情熱を内に秘めているものの、表面的にはつかみどころのない性格である。
能力的な部分を見ると、運動能力は高くなく、自身がシュートやドリブルをするプレイスタイルではなく(作中終盤ではシュートもするが)、存在感の薄さでパスの中継点になり、アシストに徹するという一風変わった能力だ。
主人公としては、“邪道”的な変則型の能力と性格のキャラクターである。
「黒子のバスケ」は、火神が強敵に真っ向勝負を仕掛けるという王道展開を軸にしながら、要所要所で黒子がその変則的な能力を発揮して活躍するという、“王道”と“邪道”を融合させたことが成功の要因であったと考える。
もし、火神一人が主人公のマンガであったなら、“つまらなくはないが、ありきたりで印象に残らないマンガ”として終わっていた可能性が高い。
逆に黒子一人を主人公にすると、その“存在感が薄い”能力のため、主人公なのに出ずっぱりで活躍させることができない。
無理に活躍させ過ぎると、“存在感が薄い”といった設定が破綻しかねない。
王道型主人公と変則型主人公は、単独で活躍させるよりも組み合わせで使うことで相乗効果を発揮するのだ。
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今後もヒットさせるなら、王道型主人公と変則型主人公
この王道型主人公と変則型主人公は、今後のマンガでも有効な組み合わせだと思う。
変則型主人公で作品のオリジナリティを出してインパクトを残し、王道型主人公で燃える展開を作るのだ。
題材としては、主人公二人体制なので、バスケやバレーなどのチームスポーツ、もしくはテニス、卓球、バドミントンといったダブルス(コンビ)があるスポーツが好ましいのではないかと考える。
もし、スポーツマンガでヒットを望みたい方がいれば、参考にしていただければ幸いである。