「こちら葛飾区亀有公園前派出所」134巻の収録全話のあらすじを紹介していく。
(2003年4月発売)
●課長・両津勘吉!の巻
ストーリー
2002年度の人事異動により、両さんは葛飾署の交通課長に任命される。さらに巡査長から警部補に階級も上がり、巡査部長の大原部長を抜くのだった。警視庁から署の交通課には、予算として例年の署の予算の100倍に相当する10億円が振り込まれる。
課長となった両さんは、婦警のミニパトをフェラーリに変更、男のパトカーはチョロQに変更、婦警の制服はふりそでにするなど改革を断行。無用な信号機の撤去、駅前駐輪の解決など次々に実績を作る。
ところが、両さんの昇進と多額の予算はコンピュータなどのミスによるものと判明。しかし、部長と署長はあえて対応を取らないのだった。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、擬宝珠纏、麻里愛、磯鷲早矢、乙姫菜々、早乙女リカ、屯田五目須(署長)
本庁のコンピュータの読み取りミスにより、両さんが交通課の課長に昇進する話。本来はさいはて署に飛ばされるはずだった。
冒頭に出てくる警視庁のコンピュータは、磁気テープ装置を備えた昔のSFに出てくるようなタイプのもの。人型ロボットのオペレータが操作しており、古いのか新しいのかよく分からない。
交通課の婦警陣は登場するが、白バイ隊の本田の姿はなぜか見えない。
●大都会の脱走者!?の巻
ストーリー
両さんたちに緊急出動の命令が下る。緊急車両だけでなく、ヘリ、戦車、SATまで出動する緊急事態。
その原因は、道路を疾走しているダチョウだった。両さんの奮闘で捕獲したダチョウは、ひとまず署で面倒を見ることに。
徐々に両さんと仲良くなったダチョウは、そのうち両さんを乗せてバイク代わりに走るようになる。
ある日、ダチョウはアフリカに引き取られることに。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、屯田五目須(署長)
東京にダチョウが現れる話。埼玉でアフリカ展をやった際にヒナが落ちて、そのまま葛飾の水元公園で育っていたのだった。
前半は逃げ回るダチョウを捕まえる話。後半はダチョウを両さんが飼う話の構成になっている。
ダチョウの捕獲で、ヘリはともかく戦車が出動する意味はよく分からない。
●纏と両さんの寿司バトルの巻
ストーリー
麻布に新しく出す超神田寿司の支店のプロデュースについて、変わり種の創作寿司を押す両さんと、和洋の食材の組み合わせで新しい味を作ろうとする纏とで、意見が割れる。
夏春都の提案で、二分割した新店舗を二人でそれぞれの店とし、その営業の結果を競うことに。纏は西洋料理に詳しい麗子を助っ人に入れる。
纏・麗子組は、最初は和洋を活かしたネタだったが、途中からは和を押し出し高級路線に。両さんはより変わった具材を格安で提供する路線にしていく。
主な登場人物
両津勘吉、秋本カトリーヌ麗子、擬宝珠纏、擬宝珠夏春都、擬宝珠夜婁紫喰、擬宝珠桔梗
纏と両さんで、それぞれプロデュースの寿司店を出して対決する話。纏vs両さんの対決ではあるが、纏側は麗子のアイデアの影響が大きい。
こういう商売対決になった場合には、両さんが犯罪まがいの手法や相手の足を引っ張る方法など、ズルい手を使うこともしばしばだが、今回は割と真っ当に勝負している。
●檸檬と蜜柑の巻
ストーリー
赤ん坊の蜜柑が言葉らしきものを口にするようになり、擬宝珠家では誰の名前を最初に呼ぶかみんなが気にしていた。
擬宝珠家のある千代田区が中心になってタバコのポイ捨て禁止の条例を提案したことを機に、都内の警察署でクリーン作戦を行うことに。葛飾署の両さんたちも、千代田区に協力に向かう。
ちょうど蜜柑の散歩の時間だったので、檸檬がベビーカーを押していると、チンピラの持つタバコの火が蜜柑に当たりそうになる。檸檬がそのことを指摘するとチンピラは逆上。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、磯鷲早矢、乙姫菜々、屯田五目須(署長)、擬宝珠纏、擬宝珠檸檬、擬宝珠夏春都、擬宝珠夜婁紫喰、擬宝珠桔梗、擬宝珠蜜柑
檸檬がチンピラたちから蜜柑を守ろうとする話。歩きタバコの火が騒動の発端になるが、舞台となった千代田区は2002年にポイ捨てだけでなく路上喫煙に関する条例を施行させている。
チンピラたちは、纏、早矢、乙姫の手で逮捕されるので、両さんが暴れる出番はなかった。
騒動後、熱を出した蜜柑を気にかけ「ハムちゃんみたいにしないで」と神田明神に祈る檸檬。123巻「檸檬が泣いた日…の巻」のエピソードが檸檬のトラウマになっている模様。
●飛べ!飛行船隊の巻
ストーリー
婦警の小栗の住んでいるマンションはオートロックだが、空き巣に入られる。
マンションを中心とした空き巣が広範囲になっていることから、両さんの発案で、飛行船で空からパトロールをすることを提案。ヘリなどと違って、低めの高さでゆっくり飛べ、騒音もない。
この飛行船のアイデアは大当たりで、マンションのベランダからまさに逃げようとしていた怪盗707号の逮捕に成功する。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、屯田五目須(署長)、小栗愛美
飛行船で空からパトロールする話。大金星を挙げるが、最後まで成功したままでは終わらなかった。
飛行船隊発足→犯人逮捕→マスコミ取材と、短時間で話が詰め込まれており、段取りが早すぎる。
マンションにベランダから侵入するのに、プロの空き巣でも3分はかかるところ、両さんは手持ちの道具だけでわずか1分で侵入に成功。あまりに見事な手際から部長に犯人扱いされてしまう。
●磯鷲一族東京進出の巻
ストーリー
早矢の母が父・剣之介とともに東京に来る。両さんが以前に剣之介に、実家が10代続いた名門の呉服屋だとウソをついたことから、興味を持ち、両さんの実家を訪問したいと要望。
中川の力で、それらしい建物を急ピッチで建造。ウソがバレないよう、呉服に詳しい中川デパートの人間を両さんの両親に見立てるも、本物の父・銀次にばったり出くわしてしまう。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、擬宝珠纏、擬宝珠檸檬、擬宝珠夏春都、磯鷲早矢、磯鷲剣之介、磯鷲穂之華、磯鷲蘆嵐、磯鷲蘿虎、磯鷲飛竜、乙姫菜々、両津銀次
磯鷲家の一行が東京に来る話。早矢の両親だけでなく、武道の達人である三人の兄も同行。
早矢の母方の祖母は「錦織部流(にしごおりべりゅう)」という箏の流派を創設しており、早矢で三代目の家本だという設定。早矢の母は旧姓・錦織部穂之華という名で、両さんからは画数多いとツッコまれていた。擬宝珠家の人たちも画数が多いと思うけど。
この回から両さんは剣之介の前では、本名「越前屋兵介」ということになる。
ウソを本当に見せかける工作について中川から「(今回で)先輩への貸しが225億円になりました」と報告していた。
●越前屋兵介の秘密の巻
ストーリー
早矢の父・剣之介は、両さんの言ったウソを信じ込んでおり、両さんの赤坂の土地(架空)1000坪を買い取って武道館を建てたいと言い出す。
ウソが大嫌いで厳格な剣之介の威厳の前に、両さんは真実を明かすことができず、武道館の責任者を仰せつかってしまう。
武道館の着工を祝し、両さんの実家の呉服店(ニセモノ)でパーティーが始まるが、早矢の兄たちや門弟たちが酔って暴れ出す。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、擬宝珠纏、磯鷲早矢、ボルボ西郷、左近寺竜之介、屯田五目須(署長)、磯鷲剣之介、磯鷲穂之華、磯鷲蘆嵐、磯鷲蘿虎、磯鷲飛竜
前回に続き、磯鷲家が東京に来る話。中川から「すでに先輩への貸しが320億円ですよ」と告げられており、前回からの短い間で95億円も増えている模様。
一応、赤坂の土地を磯鷲家が80億円で買い取ることになっているので、少しは軽減できるのかもしれない。
次巻135巻「磯鷲武道館着工の巻」に、この話は続く。
冒頭では、早矢の母・穂之華が弓道の見事な腕前を見せるシーンが描かれる。
●激走!安全運転競技大会!!の巻
ストーリー
パトカーやミニパトの技量を問う全国安全運転競技大会。両さんと中川はパトカー勤務ではないが、署長からのボーナス100万円欲しさに出場。
一緒に出場した纏・早矢組は、纏の見事な運転技術を見せる一方、両さん・中川組は、車庫入れをしたことのない中川、危険運転の両さんと減点ばかり。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、本田速人、擬宝珠纏、擬宝珠檸檬、擬宝珠夏春都、磯鷲早矢、石頭鉄岩
パトカー・ミニパトの競技会の話。大会の説明として白バイの大会の話題が出され、全国大会で本田が優勝していることが明かされる。描かれてはいないが、暴走状態でも本田の技術は高いらしい。
この回での中川はF1レーサーとしての技量を持ちながらも、人任せのため車庫入れができず、車の点検もできず、日本の交通標識についての知識もないというポンコツっぷりが見られる。
表彰のシーンのコマだけ早矢のスカートがやや短い。
冒頭で夏春都に言葉使いを注意された纏は、心穏やかにする目的で早矢から茶道と箏を薦められる。この回で購入した箏は次巻135巻「招かれざる訪問者の巻」で披露される。
●山手線双六の巻
ストーリー
中川の広告会社をスポンサーとしたイベントを両さんが企画。賞金100万円のそのイベントは「山手線双六」。新橋駅をスタートとして、サイコロを振り、出た目の数だけ駅を進むルールだ。各駅のホームの売店の裏には指令カードがあり、「立ち食いソバを3人前食べる」などといった指令をこなさなければならない。
これだけのゲームなら一周一時間程度の山手線なので、さほど時間はかからないのだが、指令の内容によっては、東京モノレールや井の頭線などの乗り換えで山手線を外れてしまう。
東京駅や上野駅では新幹線で遠方に飛ばされるリスクを抱えながら、サイコロを振る。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、本田速人、寺井洋一、戸塚金次、麻里愛、ボルボ西郷、左近寺竜之介、磯鷲早矢、乙姫菜々、法条正義、恵比須海老茶、忘田、目太門比科忠、星逃田、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介
山手線の駅を使った双六の話。一番ヒドい指令では、全裸でゲームに参加、というものがあり、駅員に連行される。参加者はみんな警察官なのに、迷惑この上ない。
カメラも何もない状態で、イベントとして成立しているかは怪しい。
この回では、たくさんの登場人物が出ており、戸塚やダメ太郎ら懐かしい顔もちらほら。警視庁所属の星逃田の姿もあり、葛飾署限定というわけでもなさそう。
山手線一周だが、この時点では高輪ゲートウェイ駅(2020年開業)はまだない。
「磯鷲一族東京進出の巻」「越前屋兵介の秘密の巻」と磯鷲家の東京進出が二話あって、それが話の中心になっている巻。
この後、両さんを責任者として、東京での武道館着工へと話は続いており、それは次の135巻に収録。
早矢の三人の兄の設定は、114巻「駄菓子ニューウェイブの巻」で語られていたが、実際の登場がこの134巻なので、登場まで20巻を要している。
その後、連載終了まで兄たちの再登場はなかった。