●修哲トリオとは?
修哲トリオは「キャプテン翼」に登場する三人のことで、主人公・大空翼の最初の強敵として現れた天才GK・若林源三率いる修哲小の攻撃を担う井沢守、来生哲兵、滝一のことだ。
(高杉真吾を加えて「修哲カルテット」と呼ばれる場合もある)
南葛小vs修哲小の対抗戦以降は、南葛SC、南葛中と翼のチームメイトとして活躍する「キャプ翼」最古参のキャラたちである。
そんな最古参キャラの三人だが、後に登場してきたキャラに押され、来生と滝の出番はどんどんなくなっていく。
だが一方、トリオの一人・井沢に関しては、現在連載中のマドリッドオリンピックの準決勝、スペイン戦にスタメン出場し、その存在感をいまだに保ち続けている。
さらに、いつのまにか“フィールドソルジャー”という謎の二つ名までつけられている。
(「キャプテン翼 25th ANNIVERSARY」にて。これは読者のアンケートにより選出された選手が試合出場しており、井沢が来生・滝よりも読者に人気があることの証明となっている。「キャプテン翼 短編集 DREAM FIELD」2巻に収録)
本記事では、井沢が来生・滝とどこで差がついたのか考察していく。
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●そもそもキャラデザに差が…
キャラクターデザインを見ていくと、髪の毛が天然パーマの来生、出っ歯の滝に比べ、井沢がロン毛のちょいイケメンにデザインされている。
また、ヘディングの競り合いに強い設定で高さもあるため、どちらかと言えばやや小柄な来生・滝より井沢は長身でスタイルも良い。
この外見の差も人気に反映していると思われる。
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●何でもこなす井沢、何ができるか良くわからない天パと出っ歯
プレイスタイルにも違いがある。
まず、来生・滝のポジションがFWであるのに対し、井沢はMFの上、DFもこなすことができる。
井沢は元々、修哲小のゲームメイカーとして登場した中盤の選手である。
南葛中時代は、同じく中盤の翼の代わりを務めることもあった。
さらに5メートルダイビングヘッドシュートを決めたこともあり、ロングシュートも狙えるキック力もある。
また、Jr.ユースの決勝戦では、負傷退場したDFの石崎の代わりに本職DFの高杉を差し置いて出場するなど、DFもこなす。
前述のとおり、ヘディングでの空中の競り合いも得意で、このヘディングでの活躍シーンも少なくない。
つまり、井沢というプレイヤーは、自ら点も取れる中盤のゲームメイカーであり、高さもあってDFもこなせるユーティリティープレイヤーと言える。
対して、来生・滝については、井沢ほどプレイスタイルについての描写や説明がない。
出っ歯こと滝については、俊足を生かしてライン際をドリブルで上がり、ゴール前にセンタリングを上げるのが得意とするプレイスタイルだ。
だが、ライン際のオーバーラップは最近ではサイドバックの石崎・早田が担うことが多くなり、俊足FWという属性も後輩の新田とイメージが被ってしまっている。
天パこと来生にいたっては、“点取り屋”という異名を持っているものの、いったい何が得意なのか良く分からない。
最古参のキャラで活躍期間も長いのに。
このプレイスタイルの違いも活躍に差がついた要因と考える。
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●FWのポジションに入れる隙がない
来生・滝の出番がない原因として、翼たち黄金世代の代表チームでFWの枠が空いていないことも挙げられる。
黄金世代のFWは以下の四人で埋められている。
黄金世代の絶対的エース。
強力な足腰から繰り出される雷獣シュート、タイガーショットが持ち味。
力強い直線的なドリブルも魅力。
・新田瞬
俊足を生かした隼シュートを使う。
中学時代には、そのサッカーセンスは大空翼に匹敵すると評されていた。
近年では若島津から空手を習い、プレイの引き出しを増やす。
日向とはJr.ユース時代からツートップを組むことが多く、空手の師である若島津との連携も見込める。
・若島津健
GKと兼任する二刀流。
空手技から多彩なキックを繰り出す。
身体能力が高く、長身で高さもある。
新田とは空手の師弟、日向、反町とは同じ東邦学園出身。
・反町一樹
日向、新田、若島津より格落ち感はあるが、中学時代は日向抜きの東邦学園を全国大会決勝に導いた実力者。
FWながらディフェンス能力が高い。
東邦学園出身のため、日向、若島津とも連携できる。
上記の四人が、ツートップかワントップを務めるので、天パと出っ歯に入る隙はない。
アジアユースの一次予選のころ、チャイニーズ・タイペイ戦に滝、タイ戦には来生が出場しているが、この頃は賀茂監督により日向・新田がユースチームを追い出されており、若島津もFW転向前(さらにユースチーム離脱中)であり、FWが人材不足の時期だった。
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●作者的にも便利なキャラ・井沢
プレイヤーとして万能な井沢だが、マンガのキャラとしても彼は万能だ。
その理由は“強すぎない”ことにある。
これまでに挙げていたとおり、井沢はヘディングが強い。
しかし、最強というわけではないので、井沢がヘディングで競り負けてもあまり井沢の株は下がらない。
これが、日向の雷獣シュートがあっさり止められたり、若林が簡単にゴールを奪われたりだと、ちょっとした事件になる。(作中、何度かあった)
ところが、井沢はそこまで強くないので、敵キャラの噛ませ犬になっても問題がない。
そして、ここぞという場面で、伏兵的に井沢を活躍させてもオールドファンが喜ぶ熱い展開となる。
また、翼、岬、日向、葵らほどのメインキャラでもないため、放置してプレイシーンを特に描かなくても大丈夫だ。
つまり、井沢というキャラは、
噛ませ犬にしてもよし、
活躍させてもよし、
放置してもよし、と作者的にはどうにでも料理できる便利なキャラと言える。
その辺りが作者に重宝される理由ではないかと推測する。
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●天パと出っ歯に未来はあるのか?
長年、試合シーンの出番のない天パと出っ歯。
作中で存在を示すときは、試合以外で石崎に「ヘタ」「サル」と軽口をたたくシーンくらいだ。
しかし、この「石崎イジリ要員」も浦辺や立花兄弟がいると、その地位が脅かされるため盤石な立場とは言えない。
果たして今後、天パと出っ歯に見せ場はあるのか?
これからも見守っていきたい。
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