マンガの能力バトルの元祖については諸説あり、白土三平先生の忍者マンガなどが候補として挙げられる。
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だが、現在の能力バトルのパイオニアとしては、やはり「ジョジョの奇妙な冒険」だと思われる。
今のマンガの能力バトルは、「ジョジョ」のスタンドから直接、間接を問わず強い影響を受けている印象だ。
「ジョジョ」のスタンドは、連載初期から登場していたわけではなく、第3部の「スターダストクルセイダース」から登場した概念である。
しかも、第3部が始まった直後は、能力バトルも確立しておらず、連載を重ねていくうちに、確立していったものだ。
本記事では、第3部初期のスタンドバトルの確立していく様子を見ていくことで、能力バトルはどのように発展していったのかを見て行こうと思う。
個人的に、初期スタンドバトルの転換点になったのは、オランウータン戦とJ・ガイル戦だと考える。
以下、この2戦を中心に語って行こうと思う。
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●初期は特殊能力のなかったスタンド
第3部から登場してきたスタンドの概念だが、初期のスタンドには特殊能力が付与されていなかった。
「一般人には見えない幽霊のようなスタンドのヴィジョンで戦う」が、初期のスタンドバトルの設定だった。
アヴドゥルのマジシャンズレッドは炎を、花京院のハイエロファントグリーンは謎のエネルギーの塊を放出するものの、スタンドのヴィジョンで物理攻撃(?)をするのが基本となっていた。
そのため、初期の敵のタワーオブグレーは超速い虫の姿での攻撃、ダークブルームーンは水中が得意と、後のスタンドの能力と比べると、シンプル過ぎて微妙なスペックになっている。
ジョジョファンの中でも、「欲しいスタンド能力は?」と訊かれて、上記2体を挙げる人はかなりレアだ。
そのスタンドバトルが大きく変わった最初の転換点が、船のスタンドのオランウータン(フォーエバー)戦だ。
ここからは、オランウータン戦が後のスタンドバトル(能力バトル)に与えた影響について記していく。
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●オランウータン戦の能力バトルへの影響(1)
敵の能力の謎についての推理
初期のスタンドバトルは、スタンドのヴィジョンで戦うだけだったので、能力の謎は何もなかった。ポルナレフのシルバーチャリオッツは見た目の通り、剣で戦うだけの能力だ。
戦い方に謎もへったくれもない。
ところが、オランウータンのスタンド・ストレングスの攻撃はスタンドのヴィジョンが出てこず、承太郎たちを悩ませた。
誰も触れていないクレーンが襲ってくる、船の換気扇が外れて飛んでくると、攻撃の結果としての現象だけが示されて、どんな能力なのか承太郎たちは推理しなければならなかった。
この結果の現象だけ示して、能力を推理することは、後の能力バトルでの定番となった。
●オランウータン戦の能力バトルへの影響(2)
ヴィジョンを持たないスタンドの登場
従来のスタンドのヴィジョンでの攻撃能力と異なり、ストレングスは一般人にも見える船のスタンドであり、スタンドのヴィジョンは出てこない。
「スタンドにはヴィジョンがあり、それで戦う」という概念を壊したことで、以降のスタンドの発想はかなり自由になった。
「スタンドにはヴィジョンがあり、それで戦う」というルールに縛られていたら、タロットの数の分の種類のスタンドを生み出すのも一苦労だったことだと思う。
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●オランウータン戦の能力バトルへの影響(3)
意外なスタンドの本体
このオランウータン戦から、動物がスタンド使いの本体という新たなパターンが生まれた。
これにより以降は、犬のイギー、ハヤブサのペットショップ、デス13本体の赤ん坊、本体を持たないアヌビス神と、普通の人間以外がスタンド本体という展開が出てきて、スタンドの能力だけでなく、本体の発想の自由度も上がったことになった。
しかし、自由度は上がった一方、赤ん坊でも問題ないのに、闘争本能が弱いため、スタンドの悪影響で瀕死になっている承太郎の母・ホリィさんの設定は一体……
第3部の根幹の設定なのに……
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●オランウータン戦の能力バトルへの影響(4)
一発逆転とお仕置きタイム
オランウータン戦の終盤は、オランウータンが圧倒的に有利な状態から、承太郎が一撃で形勢逆転。
おびえて敗北を認めるオランウータンに、オラオラのお仕置きタイムで決着の流れとなっている。
肉体を使った格闘バトルよりも、一発の形成逆転のインパクトが大きいのが能力バトルだ。
また、格闘バトルで主人公が逆転の一撃を決めた時、相手は大ダメージを受けていることが多いが、能力バトルだと相手がピンピンしていることがしばしば。
相手がピンピンしているので、追撃のオラオラをしても罪悪感はあまりない。
この一発逆転と、その後のお仕置きタイムのカタルシスは、能力バトルの醍醐味のひとつだと思う。
「ジョジョ」のアニメでも、この時にかかるテーマが俗に「処刑用BGM」と呼ばれており、ファンに愛されている「ジョジョ」の名物になっていく。
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●オランウータン戦から逆転シーンが進化したJ・ガイル戦
さて、ここまで見てきたようにオランウータン戦は、スタンドバトル(能力バトル)の原型となったと言える。
しかし、オランウータン戦の欠点をあえて挙げると、逆転のアイデアがイマイチ弱いことだ。
家出少女アンに欲情したオランウータン本体が姿を現し、承太郎の攻撃できる範囲にいたので、あの戦いは勝利できたのだが、オランウータンが巨大な貨物船の中に身を潜めて攻撃していたら、承太郎たちに勝ち目はなかった。
一方、鏡の能力のスタンド・ハングドマンのJ・ガイル戦は、能力バトルの決着として、オランウータン戦よりも一歩進んだものになっている。
J・ガイル戦では、本体J・ガイルは姿を隠しているので、本体を直接叩くことができない。
かと言って、スタンド・ハングドマンは鏡の中にいるので、スタンドを攻撃することもできない。
そのため、J・ガイルを倒すには、スタンドの能力の秘密を解いて、弱点をつくより他、方法がないのである。
このポルナレフがハングドマンを破るシーンも、J・ガイルが勝ち誇ったセリフを吐いた直後に逆転するのが、とても鮮やかで印象的だ。
オランウータン戦よりも、逆転の一手がより洗練されたバトルになったと思う。
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●互いに知恵を絞り合う頭脳戦
見事な逆転の筋書きのJ・ガイル戦だが、ポルナレフが逆転の一手を決めただけでは終わらない。
J・ガイルはポルナレフが見抜いた弱点を熟知しており、さらに対策をしてくるのである。
ポルナレフが弱点を突いて逆転
↓
J・ガイルが弱点対策で再逆転
↓
花京院が更なる打開策を思いつき、再々逆転
と、敵・味方の双方が知力を振り絞り、何度も逆転を繰り返すのだ。
能力バトルは、脳筋の格闘バトルに対して、頭脳戦と呼ばれることがある。
この互いに頭脳を駆使して戦うことも能力バトルの魅力であり、他の能力バトルマンガでも使われることになる。
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●第3部から第4部への能力バトルの進化
オランウータン戦、J・ガイル戦を経て、能力バトルの基礎はだいぶ固まってきた。
しかし、第3部ではできなかったことがある。
それは味方側に特殊能力がないので、特殊能力同士でのバトルができなかったことだ。
承太郎のスタープラチナは、最終盤で時止めの能力に目覚めるが、それまでは「拳で殴る」しかできない。
ポルナレフのシルバーチャリオッツも「剣で切りつける」しかない。
ジョセフがハーミットパープルで、街の地図を念写するという能力を利用した戦いをすることがあったが、基本的に承太郎やポルナレフには特殊能力がないので、力業のゴリ押しで倒すことが多いのが第3部の特徴だ。
だが、第4部に入ると事情が変わる。
第4部の主人公・東方仗助のクレイジーダイヤモンドは、「壊れた物を修復する」が能力だが、その応用方法は多岐にわたる。
ペンで書かれた文字の一部だけ直して内容を書き直す、自分の血をガラス片に封じて自動追尾弾を作り出すと、応用力が高い。
第3部では、敵スタンドの弱点を突く、力業でゴリ押しするというのが戦い方だったに、第4部からはこちらの特殊能力で切り抜けるという新しい選択肢が増えることになる。
自分の特殊能力での切り抜けも、後の能力バトルマンガでは良く用いられる展開となる。
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以上、見てきたように、第3部のオランウータン戦、J・ガイル戦で能力バトルの原型ができ、第4部である種の完成を見たのではないかと考える。
このスタンド黎明期の歴史がなければ、「HUNTER×HUNTER」も「呪術廻戦」もなかった可能性も否定できない。
能力バトルマンガが好きな人たちはオランウータンに感謝すべきかもしれない。



