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【怪獣8号】エピソードの積み重ね不足? 最終決戦までの展開を急ぎ過ぎ? 「鬼滅の刃」とのストーリー構成の比較から考察

 

「怪獣8号」が少年ジャンプ+での連載で最終回を迎えた。

同作は、「次にくるマンガ大賞2021」のWebマンガ部門で1位を獲るなど、連載開始当初の評価は高かったものの、途中からはその序盤の評価の高さを維持できなかったという意見を見受けることが多い。

 

個人的にも、立川基地襲撃で主人公・日比野カフカの正体が周囲にバレて防衛隊内で問題になる辺りまでは面白いが、現場に復帰して以降は、つまらなくはないものの、大ゴマ連発でストーリーの密度が薄く大味な展開になっている印象である。

 

本記事では、「怪獣8号」が途中から失速してしまったと思われる理由について、最終決戦まで盛り上がった「鬼滅の刃」との比較で考察していこうと思う。

 

結論としては、「鬼滅の刃」における無限列車編や遊郭編のようなエピソードの積み重ねが「怪獣8号」には不足していたのではないかと考える。

 

[第1話]怪獣8号 - 松本直也 | 少年ジャンプ+

 

●いつも同じような場所で戦っている

まず、「怪獣8号」を読んでいての個人的イメージなのだが、いつも同じようなガレキの上で戦っている印象だ。

 

序盤は、入隊試験や10号の立川基地襲撃があったが、基本的には、都会に強大な怪獣が出現。出動して戦闘。という印象で、あまり戦闘のフィールドやシチュエーションにバリエーションはないように思う。

 

一方、「鬼滅の刃」の場合を見てみると、

敵の有利な屋内フィールドでの鼓屋敷戦、山中での戦いとなった那田蜘蛛山戦、走る列車内での戦闘の無限列車戦、鬼を捜索する潜入ミッションのある遊郭戦、鬼殺隊側の重要拠点の防衛戦となった刀鍛冶の里戦、敵本拠地での両者総力戦の無限城戦と、屋内・屋外と戦うフィールドにバリエーションがある。

また、遊郭編のように主人公側から仕掛ける場合もあれば、敵の攻撃に応戦する場合もあり、シチュエーションも様々だ。

 

「鬼滅の刃」と比較すると、「怪獣8号」のバリエーションは少ないように思う。

 

怪獣という設定上、屋外での戦闘に偏りがちになるのかもしれないが、小型の怪獣であれば、地下道、大型ショッピングモール、巨大工場など屋内戦闘を描くことも可能だ。

 

また、屋外にしても、雪の山間地域(作中の舞台は大体東京だが)、嵐の臨海地域など、街中以外でもバリエーションをつけることはできる。

 

シチュエーションについても、要救助者の捜索・救助を優先する状況、重要施設(原子力発電所、山中の巨大ダムなど)を守りながらの防衛戦など、出動して単に怪獣と戦うだけではない戦闘の状況を作ることは可能だと思う。

 

しかしながら、「怪獣8号」では、いつも怪獣が暴れた後の都会のガレキの上で戦っている印象だ。

 

一応、市川レノが6号との適合試験で戦っていた場所は山中だったし、保科副隊長が10号と共闘した場所が屋内だったりと、都会のガレキ以外の場所でも戦闘シーンはあるのだが、いずれもシーンが短く、あまり強く印象には残っていない

 

いつも同じような場所で戦っているというのが、マンネリ感を生んだのではないかと思う。

 

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●中ボスキャラ不在で、ずっとラスボス・怪獣9号と戦っている

次に、「怪獣8号」でマンネリ感を覚えるのは、ずっとラスボスである怪獣9号(明暦の大怪獣)と戦っていることである。

 

「怪獣8号」の怪獣9号にしても、「鬼滅の刃」の鬼舞辻󠄀無惨にしても、どちらも物語のラスボスながら序盤から登場しているのは共通だ。

 

しかし、無惨は序盤に浅草で炭治郎と接触して以降は、終盤のお館様との邂逅に端を発する最終局面になるまで、表に出ることはない

そして最終局面までの間は、ラスボスではない十二鬼月ら中ボスキャラと戦うのがメインのストーリーとなっている。

 

対して「怪獣8号」では、ラスボスの怪獣9号が物語全般に登場しており、防衛隊と何度も交戦することになる。

 

9号以外に、識別怪獣として10号~15号が登場するが、エピソードのボスキャラとして出てくるのは立川基地襲撃のエピソードに出て来た10号だけ。

他の11号~15号は、まとめての登場でいずれもボスキャラという立ち位置ではなかった。

 

この中ボスキャラの有無が「怪獣8号」と「鬼滅の刃」の大きな差であり、マンネリの差を生んでいると考える。

 

この中ボスキャラについて、もう少し深掘りしていこうと思う。

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・エピソードボスがいないので大勝利のカタルシスがない

ここで中ボスの定義をしておくと、物語全体のボスキャラのラスボスではなく、各エピソードのボスキャラという意味で使っている。

 

「鬼滅の刃」で言えば、遊郭編のエピソードのボスキャラの妓夫太郎と堕姫などが該当する。

 

中ボスキャラとの戦いは、そのエピソード内で最も盛り上がるクライマックスであり、その戦いの末の勝利には大きなカタルシスが生まれる。

 

その中ボスキャラが、「怪獣8号」では、立川基地襲撃のエピソードの怪獣10号くらいしかいない

ということは、物語の中で大きな盛り上がりやカタルシスが作りづらいということだ。

 

中ボスキャラの不在が、「怪獣8号」のストーリーを盛り上がりのメリハリがつきづらい構造にしてしまっているのではと考える。

 

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・敵の強さ格付けが分かりづらい

中ボスキャラの不在の影響はもうひとつあると考える。

それは敵キャラの強さの格付けがしづらい状況になるということだ。

 

「鬼滅の刃」だと、敵キャラの強さの格付けは、おおよそ下記のようになっている。

 

無惨 > 上弦の鬼(十二鬼月) > 下弦の鬼(十二鬼月) > 血鬼術持ちの鬼 > 雑魚鬼

 

これに鬼殺隊側のトップ戦力である柱を加えると、下記のようになる。

 

無惨 > 上弦の鬼(十二鬼月) >  > 下弦の鬼(十二鬼月) > 血鬼術持ちの鬼 > 雑魚鬼

 

霞柱の時透無一郎は上弦を単独撃破したし、炎柱の煉獄杏寿郎は下弦の術にハマりかえたりしたので、上記の序列が絶対ではないが、おおよそは上記の序列となる。

 

この序列の描写があるので、上弦の一角が崩れた時は、作中快挙とされていたのである。

 

ところが、「怪獣8号」では、中ボスキャラがおらず、強キャラも多くないので、強さの格付けについての描写が少ない。

フォルティチュードという格付けに使えそうな概念があるにもかかわらずだ。

 

そのため、四ノ宮長官が人類側最強として紹介されていても、その強さの程度が読者にはあまり伝わっていないように思う。

だから、四ノ宮長官が9号に取り込まれた時の絶望感についてもイマイチな気がする。

長官の力が敵に回っても、最強の8号がいれば大丈夫と思えてしまうからだ。

 

9号、10号以外にボスキャラがおらず、ずっと9号と戦っているという印象だったのは、

中盤以降の失速の原因だったと思う。

 

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●最終決戦までの展開を急ぎ過ぎていなかったか?

さて、ここまで「怪獣8号」の失速の原因を「いつも同じような場所で、同じ敵(9号)と戦っているから」と分析してきたが、それには物語の構造的な理由がある。

 

「怪獣8号」のストーリーは、全部で9つのエピソードで構成されている。

それぞれのエピソードと、ラスボス9号との関連を以下に記載する。

 

エピソード1:怪獣になった男

防衛隊選抜試験の会場に9号が出現。

 

エピソード2:夜明けの相模原掃討作戦

8号が9号と初対決。

 

エピソード3:立川基地襲撃

10号が基地を襲撃。8号の正体バレる。

 

エピソード4:捕らわれた怪獣8号

正体のバレた8号の処遇が検討される。

 

エピソード5:怪獣兵器

9号が本格侵攻を開始。四ノ宮長官(2号兵器)が9号に取り込まれる。

 

エピソード6:適合者

6号(レノ)、10号(保科)が兵器として運用される。

 

エピソード7:群発災害

9号との最終決戦(1)。各地に怪獣出現。

 

エピソード8:第2波

9号との最終決戦(2)。識別怪獣11~15号との戦闘。

 

エピソード9:最後の波

9号との最終決戦(3)。9号(明暦の大怪獣)とのラストバトル。

 

9号以外のボスキャラがいるエピソードは、10号がボスキャラのエピソード3だけ(上記青字)。

他に怪獣との大きなバトルがあるエピソードのボスキャラは、どれも9号である(上記赤字)。

 

上記のエピソードの紹介で、便宜上エピソード7から最終決戦と書いたが、エピソード5からを9号の本格侵攻と考えると、エピソード5からずっと最終決戦と考えることができる。

 

エピソード5からを最終決戦と考えると、主人公の8号が防衛隊に認められた次のエピソードから最終決戦が始まっていることになる。

これは展開として、かなり早い。

 

「鬼滅の刃」でいえば、柱合会議で柱を全員登場させ、鬼殺隊の全体を見せた直後、無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編をすっ飛ばして、柱稽古編、最終決戦の無限城編につなぐような展開だ。

 

もし「鬼滅の刃」が、上記のように柱合会議 → 柱稽古編 → 無限城編としていたら、どうだったろうか。

おそらく、下記の理由から実際ほど無限城編が盛り上がらなかったのではないかと推測する。

 

・柱が炭治郎たちより、はるかに強いという描写が不足している。

・その柱より上弦の鬼が強いという描写が不足している。

・柱たち、カナヲ、玄弥のキャラの掘り下げが不足している。

 

と、上記の描写の不足のため、無限城で各キャラが身命を賭して戦っていても、読者の共感を呼びづらかったのではないだろうか

 

だが、実際の無限城編は盛り上がっていた。

無限城編は全23巻のうち、6巻分のエピソードで、「鬼滅の刃」全体の約1/4の長さの長編エピソードである。

さらに、味方キャラが多いので、主人公の炭治郎の活躍しない回も多い。

 

それでも盛り上がったのは、無限城編に至るまでのエピソードの積み重ねで、上弦の鬼の強さ、柱たちのキャラが充分に描かれていたからだと思う。

 

一方、「怪獣8号」では、前述の通り、主人公8号が防衛隊に認められた後から最終決戦が始まってしまっている。

エピソード5から最終決戦が始まったものと考えると、物語全体の半分以上が最終決戦に費やされていたことになる。

 

これでは、「いつも同じような場所で、同じ敵(9号)と戦っている」という印象を抱いても無理からぬことではないかと考える。

 

 

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●最終決戦までに、いくつかエピソードを入れた方が良くなかったか?

もし「怪獣8号」でラスボス9号が本格侵攻を開始する前に、いくつかエピソードを入れることができていたら、最終決戦の盛り上がりは変わったのではないかと考える。

 

「鬼滅の刃」における無限列車編、遊郭編のようなラスボスではないボスキャラ(識別怪獣クラス)を設定した任務エピソードを2、3挟んでから最終決戦に臨めば、以下のように変わったのではないだろうか。

 

・隊長・副隊長たち、防衛隊員のキャラの掘り下げができる。

・識別怪獣クラスの強さを表現でき、最終決戦で識別怪獣クラス複数出現の脅威が充分に伝わる。

・四ノ宮長官の強さを描くことで、その強さが敵に取り込まれた絶望感が伝わる。

・8号が他の怪獣と比べて、どのようなスペックを持っているのか具体的に描くことで、ラスボスとの強さの差を描くことができる。

 

防衛隊員のキャラの掘り下げとしては、スピンオフ作品の「side B」、「RELAX」でも描かれてはいるものの、本編ではないので、充分とは言えないだろう。

 

マンガの連載は終了したものの、アニメの第2期はこれからとなる。

アニメは、どのくらい原作準拠で描かれるか分からないが、最終決戦がどのように描かれていくのか気になるところだ。

 

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