「こちら葛飾区亀有公園前派出所」42巻の収録全話のあらすじを紹介していく。
(1986年9月発売)
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 42【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●秋の海…の巻
ストーリー
海に向かうため本田を誘いに来た両さんは、気が早くて来週の予定を前倒し、本田の部屋に着く時点で水着に着替えていた。
本田のバイクの後ろに乗っていくが、あまりの勢いにバイクから飛ばされ、水着姿のまま銭湯に突っ込んでしまう。
気を取り直して進む途中のドライブインでは、屋根にゼロ戦が乗っていたり、航空機やICBMミサイルが刺さっていたりと変わった店が増えていた。
中でも両さんたちが入ったドライブインは、店内の床が斜めになっている上、ジャムコーララーメンなどの変わり種メニューがある「びっくりハウス」だった。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、本田速人
海に向かって本田のバイクでツーリングする話。
タイトルこそ「秋の海…の巻」だが、海のシーンはラストだけで、ほとんどがツーリングのシーンになっている。
そもそもは紅葉の時期に山に行く予定だったが、両さんの気が変わったので、急遽行き先が日本海に、時期も早まった。
ツーリング途中の中垂水峠では、うすね正俊先生やとみさわ千夏先生ら、秋本先生のアシスタント陣がライダーとして登場する。
ラストの新聞記事の内容は、見出しこそ両さんたちのことだが、文章はまったく関係ない話になっている。
冒頭の背景に描かれているのは、イトーヨーカ堂ではなくゴトーヨーカ堂。
この頃まで本田はアパートで独り暮らしの設定。その後、いつの間にか本田輪業での実家暮らしになっている。
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価格:1870円 |
●恵比須くん!の巻
ストーリー
新人警官として派出所に来た恵比須は根っからの笑い上戸で、常に笑顔の上、事あるごとに笑いで噴き出してしまう。
両さんと一緒にパトロールに行くも、道行く人の顔を見て笑い出してしまったり、代理で香典を渡しに来た葬式で大笑いしたりで、相手を怒らせてトラブルを起こすのだった。
そんな折、ライフルを持った立てこもり事件が発生。泣き上戸の立てこもり犯に笑い上戸の恵比須が説得に挑むのだった。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、恵比須海老茶、星逃田
笑い上戸の警官の話。
恵比須は刑事課にいたが、本人の希望で外勤警官になり派出所に来たという設定。
恵比須は滅多に怒ることがないが、怒ると豹変する。だが、この怒ると豹変する設定はこの回のみで、あとは笑い上戸のキャラとして登場となる。怒った豹変時には、毛深く狼男のようになり、怪力で多少ライフルの弾が当たっても意に介さなくなる。
ラストで星逃田が登場。「一年二か月ぶりに出演」と言っているが、次の登場は67巻「哀愁の星逃田の巻」で約5年後。そのときには星はハゲていた。
冒頭では両さんが木彫りの副業をしており、部長の顔を器用に作製する。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 67【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●下町情緒!?の巻
ストーリー
「今も残る東京下町派出所」という企画で、テレビ局が公園前派出所に取材に来る。
下町に詳しいのは両さんだが、両さんをテレビに出したくない部長は、米国育ちの中川を代わりにしようとするも、付け焼刃の知識では上手く行かない。
結局、予定より早くきたテレビクルーが両さんに直接接触してしまい、両さんが取材を受けることに。
ところが、テレビクルーは、江戸っ子らしさを強調するため、神輿を担いで出勤、羅宇屋姿や祭りの山車を引いて下町を歩くなど、過剰な演出をするのだった。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、屯田五目須(署長)
下町警官としてテレビの取材を受ける話。
下町情緒としてテレビクルーは様々な演出を施すが、どれも変なものばかり。両さんは「海外向けのビデオでもとってるのか」と言い、中川も「いかにもMHK的ですね」と感想を漏らしている(NHKではない)。
途中の演出で出てくる羅宇屋(らおや)は、羅宇(刻みタバコを吸うときの管)のヤニ取りなどをする露天商。
MHKの番組を録画するように両さんが奮発して購入した高級ビデオデッキは「ベータミックス」。元ネタはベータマックス。
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TVディレクターの演出術 物事の魅力を引き出す方法 (ちくま新書) [ 高橋弘樹 ] 価格:946円 |
●空からコンニチワの巻
ストーリー
軍事マニアの友人・中田丸に会いに行った両さん。中田丸は、会社は息子に任せていて、お金とヒマを持て余しており、個人の展示場を作っていた。
中田丸はアパッチヘリのレプリカを有していて、自宅敷地で両さんを乗せて飛行するが、両さんの希望で東京の派出所に向かう。
部長にアパッチを見せることには成功するも、国籍不明機として警視庁航空隊のヘリが出動。
警視庁のヘリから逃走しているうち、騒ぎはどんどん大きくなる。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、中田丸
アパッチヘリのレプリカで大騒動を起こす話。
レプリカアパッチのベースは、軽量ヘリのヒューズ500。
中田丸の敷地について、中川と部長の話では栃木県となっているが、東京にアパッチが入るときには「千葉県より東京にむかって」と表記されている。
逃走途中に、花火工場が火災で爆発。両さんたちとは全然関係がないタバコのポイ捨てからの引火なのだが、両さんたちのアパッチのミサイル攻撃と警視庁には認識されてしまう。
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価格:10990円 |
●鉄人レース!!の巻
ストーリー
賞金一億円をかけたテレビ局主催のアイアンマンレースが行われる。
3000名の体力自慢が集まる中、バーにつかまり続ける耐久の腕力テストで300名にまで振り落とされる。
鉄ゲタ・鉄アレイ着用での街中の直進マラソン、タイヤを引きずっての自転車レース、米俵を担いでのハードル走、鎧兜を身に着けての15km水泳など過酷なレースが続く。
手違いなどもあり、両さんはいくつかハンデを受けるが、それでも上位に喰らいつく。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子
過酷なアイアンマンレースの話。
会場は1977年に解体されたはずの東京スタジアム。会場に止まっているテレビクルーの車は、テレビ朝日の旧名の「NET」ではなく「NFT」。
自転車のチェーンが切れたり、担ぐ米俵が一俵で良いところ勘違いで三俵担いだり、バイクを手押しするコースでは一番重いバイクを選んだりと、両さんは色々とハンデを負うことに。
ラストのオチについては、序盤の「福祉事業に寄付しようと そこまで考えている」と両さんが部長にウソを吐いたことが繋がっている。
コース上に家やビルがあっても直進し続ける設定は、「魁!!男塾」の第一話(1985年)にも登場。「こち亀」では屋根に上るが、「男塾」では民家の壁を破壊している。
今回のアイアンマンレースには次回があり、47巻「鉄人はだれだ!?の巻」で描かれる。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 47【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●ペンションの朝の巻
ストーリー
中川の運転で、部長の同期の立花が脱サラで始めたというペンションに向かう。
高速を下りると、若いギャルが大勢いて両さんは色めき立つが、目的のペンションは高原よりもさらに山奥。
人里離れた山奥の建物はペンションというより、田舎の農家のようなたたずまい。
その中では、牛の乳しぼりや山菜採りをしたりと、自給自足の生活でオシャレなペンション生活とは程遠い。両さんは、山の中で、熊や猿と張り合うのだった。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、寺井洋一、戸塚金次
山奥のペンションに行く話。
1980年代は、an・anやnon-noに影響を受けた女子大生の「アンノン族」が、高原のペンションを訪れたりするのがブームだった。
ここでいうギャルは、若い女性の意味で1990年代以降から現在のギャルとは少し意味が異なっている。
「『かわいい』か『かわいくない』か 物事すべて このふたつだけだぞ 女ってのは」「そこまで単細胞になってしまったか」と、今だと女性蔑視の問題があるセリフが出てくる。
両さんが靴墨を顔に塗って、黒人っぽくしてギャルをナンパするのも、現在ではちょっと人種差別的ととらえかねられず、難しい表現かもしれない。(当時は、黒塗りしたラッツ&スター(シャネルズ)が活躍していた頃)
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価格:2989円 |
●はつめい博士の巻
ストーリー
千円札のデザインが伊藤博文から夏目漱石に変わって、両さんは変わったばかりの新紙幣に振り回されていた。
銀行からの帰りに出会った特許 特太郎(とっきょ とったろう)は、発明研究所の所長。所長が開発した消しゴムで消せる万年筆の特許が年間5億円を生んでいると聞いて、両さんも発明を始める。
しかし、両さんのアイデアはどれも既存のものと被ってしまう。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、特許特太郎
特許収入を目指して発明をする話。
冒頭、新千円札を手に入れご満悦の両さんだったが、旧紙幣の方がいずれ価値が上がるのではと中川に言われ、すぐに銀行で旧紙幣に戻してもらう。
所長の未完成の発明品として、わずか3mしか電送できないテレポートマシン、100時間しか過去に行けないタイムマシンが出てくるが、それだけできればノーベル賞級の発明な気がする。
両さんのオリジナル発明品は、日本酒と塩辛をくっつけるアイデア、カセットテープのテープ部分をプレイヤー側が移動する「みのむくん」、テレビつきボールペン、前後どちらからも乗れる自転車など。
19巻「発明の日!の巻」にも発明家の所長が出てくるが別人。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 19【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●仕事さがし!の巻
ストーリー
まさしは不良少年だったが、今では更生。
部長たちは更生したことを褒めるが、「(本当に)えらいやつってのは 始めからワルなんかにならねえの!」「やっと ふつうのレベルにもどっただけ」と両さんは冷たく突き放す。
ところが、部長は両さんにまさしの就職口の世話をするように言い渡す。
口では更生したと言っているが、中身はそんなに変わっていないまさしを、両さんは知り合いの中古車屋に預ける。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子
不良少年の就職先を世話する話。
まさしについては「今年の夏からちゃんと社会人になった」と部長が紹介している。春ではないので、学校の卒業を機に更生したわけではなさそう。
また、以前に2~3の会社に勤めていたが、どこも長続きしなかったらしい。
冒頭、寄り掛かったイスの背もたれが壊れ、両さんが倒れるも、中川と麗子は両さんの身体よりイスの方を心配していた。
ラストで両さんが口にする「人間やめますか?」はCMのキャッチコピー。
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価格:792円 |
●人生は夢のごとく…の巻
ストーリー
ゴミを捨てるための穴を庭に掘って欲しいと地主でお金持ちのおばあさん・金有(かねあり)に頼まれた両さん。
しぶしぶ引き受けた両さんだったが、掘り進めると地面からは小判が何枚も出土する。
両さんは、小判をネコババしようとするも、見つかってしまい、あえなく失敗。
だが、後日おばあさんから送られてきた謝礼は、なんと一億円の小切手。
部長は両さんに手堅く預金し、利息で生活する計画を力説する。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、インチョキ堂の主人
小判と穴掘りのお礼に一億円をもらう話。
両さんが掘り当てた小判は、全部で31枚。時価10億円相当という価値だった。
小判目当てに10m以上深い穴を掘っていた両さんだったが、視力2.0の中川に見つかってしまうのだった。
両さんは小切手の存在を知らず、一億円の額面なのに「紙きれ一枚だけじゃねぇか ふざけやがって!」と激昂していた。
部長の話では、2年間の定期預金で年率5.75%、9000万円預ければ年517万5000円になると語っている(当時の利率)。一億円全額でないのは非課税の制度を有効に使うため。ところが、両さんには難しくて理解できず、中川からは「チンパンジーに因数分解をやらせるのと同じ」と言われてしまう。
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人生は夢にぼた餅 80過ぎても楽しく生きとるねぇ [ 祖母と孫ちゃんねる ] 価格:1540円 |
●カタカナ人の巻
ストーリー
給料日までの10日間を残り200円で生活しなければならない両さんは、中川と麗子に借金を頼むが断られてしまう。
代わりに麗子から1日1万円のアルバイトの提案をされる。内容は、広尾の麗子の自宅マンションに来て、友人とのパーティー用のケーキ作りを手伝うというもの。
集まった麗子の友人は、ヘアデザイナーの玉無(たまなし)、スタイリストのマキ、コピーライターのさなえ。カタカナの肩書ばかりで両さんは困惑するのだった。
玉無は、両さんにヘアスタイルの変更を提案し、タダで両さんの髪をカットしてくれることに。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子
麗子の友人のパーティーの手伝いをする話。
カタカナの職業名に両さんがついていけないのだが、ヘアデザイナー、スタイリスト、コピーライターと今では特に珍しくもない名称ばかり。時代の流れを感じる。
玉無の両さんに施したカットについて、麗子は「ボーイ・ジョージみたい」と評する。ボーイ・ジョージのいるカルチャー・クラブが1983年に「カーマは気まぐれ」をヒットさせていた。
ケーキ作りについては78巻「ケーキ屋・両さん!?の巻」、103巻「ソルジャー サンタの巻」でも登場する。
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ベスト・オブ・カルチャー・クラブ [ カルチャー・クラブ ] 価格:1571円 |
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 78【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 103【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
個人的オススメは、下町の雰囲気のテレビ演出の「下町情緒!?の巻」、ヘリで大暴れする「空からコンニチワの巻」、体力勝負の「鉄人レース!!の巻」。
「仕事さがし!の巻」の不良少年に対して評したページは、割と有名なページ。