実写映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」を観てきた。
主に原作マンガとの違いについて、
原作マンガのネタバレあり、
映画オリジナル部分のネタバレなし で書いて行こうと思う。
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●原作マンガはわずか48ページ
さて、この「岸辺露伴は動かない 懺悔室」の原作マンガだが、「岸辺露伴は動かない」シリーズの一作目として発表されたシリーズの原点となる作品である。
シリーズ一作目とは書いたものの、当初はシリーズの予定はなく単発の読切の予定だった。
タイトルの「岸辺露伴は動かない」の通り、露伴は物語のナビゲーター的な立ち位置で本編ではあまり活躍しない役回りである。
この「懺悔室」のエピソードは、「岸辺露伴は動かない」の1巻に収録されており、荒木先生の短編集「死刑執行中 脱獄進行中」にも収録されている。
「懺悔室」の原作マンガのストーリーについては、以前に「死刑執行中 脱獄進行中」の紹介記事に記載しているので、よければそちらを参照いただきたい。
また、「懺悔室」については、現在発売中の「岸辺露伴ジャンプ」でも読める。
この「岸辺露伴ジャンプ」は、実写ドラマ化されたエピソードをジャンプサイズで読めるムック本。
その「懺悔室」のエピソードが、今回実写映画になったわけである。
ところが、「懺悔室」の原作マンガは48ページしかない。
原作通りに映像化したアニメ版にしても、24分しかないのだ。
2時間の映画には、どう考えても尺が足りない。
映画を観に行った理由のひとつは、この短いエピソードをどのように2時間の映画に落とし込んだのかの興味もあった。
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価格:941円 |
●前半は原作準拠、後半は映画オリジナル
実際鑑賞したところ、原作マンガのエピソードが映画の前半部分、映画オリジナルエピソードが後半という構成になっていた。
原作ラストの「この『恨み』は だんな様の娘が『幸せの絶頂』の時 必ずあんたを迎えに来ます」のセリフの「娘の幸せの絶頂」が後半のエピソードになっている。
原作マンガでは、イタリアで働く青年(たぶんイタリア人)と、東洋人の浮浪者、青年の娘が主な登場人物となっている。
映画版では、これらの人物を日本人キャストが演じており、みな日本人の設定になっている。
(玉城ティナ演じる娘に関してはハーフの設定)
浮浪者(戸次重幸)が青年(大東駿介)に声をかけたのは、異国で過ごす日本人同士なので助けを求めたという流れに変わっている。
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●ほぼ原作通りの「ポップコーン対決」
原作の「懺悔室」のメインである「ポップコーン対決」は、勝負方法や流れなど、ほぼ原作通り。
娘の舌に浮浪者の怨霊が現れる描写も、かなり原作に近い形で再現されている。
ここは、ギャグっぽくなりかねない描写なのだが、ホラーな描写になっていると思う。
(人によってはギャグっぽく見えるかもしれないが)
ただラストの勝負に負けた男の描写が、原作と違っている。
原作ではアッサリ首をはねられるだけだが、映画版ではもっとじっくりした描写に変えられている。
現在発売中の「JOJO magazine」によると、この男が殺される描写は荒木先生の提案だとのこと。
また、実写映像では難しいのではと思っていた「入れ替わり」の部分に関しては、なかなか上手く処理されていたと思う。
「幸せの絶頂」を感じる瞬間のカットが、大東駿介と井浦新の顔が重なる構図になるのは上手い。
(原作では男単独の顔のアップだった)
今後、配信になる場合、配信作品では字幕に発言者の役名が表示されることが多いので、字幕の役名でネタバレになってしまうおそれがある。
配信の字幕には配慮をしてほしいと願うばかりである。
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●後半は父と娘のストーリー
後半のオリジナルストーリーについて結末は語らないが、あらすじだけ紹介しておこうと思う。
「ポップコーン対決」の時に10歳だった娘は大人に成長。
娘はイタリア人男性と結婚を控えており、「幸せの絶頂」を迎えようとしていた。
(この結婚を控え「幸せの絶頂」を迎えそうなので、父は「懺悔室」に告白にやって来た)
「幸せの絶頂」を迎えようとする娘、その娘の「幸せの絶頂」時には呪いが発動してしまうので、「幸せの絶頂」を阻止しようとする父。
しかし、呪いのせいで娘には理不尽に「幸せ」がやって来てしまう。
この父と娘のストーリーが後半のメインになっている。
そして、娘の婚約者の男性が、イタリアの芸術大学の人物で露伴の大ファン。
彼の招きでヴェネツィアに来ていた露伴が、「懺悔室」での告白も含めて、事件に巻き込まれていく流れになっている。
呪いの恐ろしさよりも、呪いに憑りつかれ「幸せ」を忌避する父の異常性が際立っているように感じた。
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●個人的な感想
最後に感想を記しておこう。
後半のオリジナルパートを荒木先生がマンガにしていたなら、もっと少年マンガ的に「映える」アクションの展開にしていたのではと思うので、その意味では荒木先生的な展開からは少し外れているかもしれない。
しかし、クライマックスの教会のシーンなど、ヴェネツィアの美しい風景や建物が多く映っており、実写映像として「映える」作品になっていたと思った。
「岸辺露伴は動かない」の実写シリーズを見てきたファンなら、大満足の作品だと思う。
個人的にグッときたのは、井浦新がセリフの「~じゃない」の言い方を「~じゃあない」と徹底していたこと。
そこに「ジョジョ愛」を感じた。
また劇場の入場者プレゼントでは、描き下ろしイラストカードがもらえる。
欲しい方はお早めに劇場へ。
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