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【こち亀】連載最終回から約10年 いまだに後継マンガが現れない唯一無二の理由を考察 少年マンガ誌なのに青年マンガ!?

 

 

●10年近く経っても後継マンガが現れない

 

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載が終了したのが2016年9月、来年で10年経つことになる。

 

1976年の連載開始から数えると、「こち亀」が世に出て50年になる。

 

その間、少年ジャンプ誌上に数多くのギャグマンガが生まれたが、いまだに「こち亀」の後継マンガと呼べるマンガは登場していない

 

本記事では、後継マンガが現れない「こち亀」が唯一無二のマンガである理由について、考察していこうと思う。

 

 

●少年マンガ誌なのに青年マンガ?

 

「こち亀」が唯一無二の存在である理由は、

中身は青年マンガなのに少年マンガ誌上で連載していたこと

だと考える。

 

「こち亀」は、日本で最も売れている少年マンガ誌である少年ジャンプに40年間も連載していた。

 

そのため、多くの読者にとっては物心ついた頃から、当たり前に少年ジャンプに連載していたマンガだったはずである。

 

しかし、「こち亀」は少年マンガ的な作品ではなく、青年マンガ的な作品であると考える。

 

ここからは、「こち亀」が青年マンガ的であると考える理由について記していく。

 

 

●青年マンガ的作品である理由①

 絵柄がリアル路線

 

現在、ジャンプで連載している「僕とロボコ」のひとコマをどこか切り抜いて見ても、絵のタッチからギャグマンガだとすぐに分かるだろう。

 

一方、「こち亀」は、1~2ページ切り抜いた場合でも、切り抜いた場面によっては、シリアスなストーリーマンガっぽく見えるページや、硬派な社会派マンガに見えるページ、泣ける人情マンガに見えるページなど、ギャグマンガに見えないページが少なくない

(実際、両さんの少年時代の思い出を描いたシリーズなど、ギャグがほとんどない回も珍しくない)

 

「こち亀」がギャグマンガっぽく見えない理由は、その絵柄にあると思う。

 

ギャグマンガらしくデフォルメした絵柄ではなく、キャラの頭身などがリアルな頭身なのだ。

 

キャラの頭身がリアルなので、派出所の机やロッカー、建物、バイクや車といった背景や乗り物などもリアルな描写になっている。

 

「こち亀」初期は劇画調のタッチ、連載とともにスッキリした線のタッチへと、画風に変化はあるが、リアル路線のタッチであることには変わりなく、ギャグマンガっぽいデフォルメのタッチではない

(連載後期では、部分的にデフォルメタッチのキャラが描かれることがあるが、あくまでピンポイント)

 

その絵柄が、少年マンガ誌のギャグマンガっぽくなく青年マンガ的なのだ。

 

また、出てくる地名についても「山奥村」「時空ヶ原」といった一部架空の地名もあるが、基本的には亀有、浅草、神田といった実在の地名が使われていることが多い。

 

実在の地名にあわせて、街の風景も実在のものをそのまま描いていることも少なくない。

 

このリアルな作風が、青年マンガ的だと思う理由のひとつだ。

 

 

●青年マンガ的作品である理由②

 主人公がオジサン

 

少年ジャンプで連載されている作品の主人公は、たいてい10代の少年少女である。

 

まれに人間以外の設定で、数百歳であっても、外見または言動は10代的だったりする。

 

大人が主人公の場合でも、せいぜい20代までだ。

 

十年前の幕末で伝説の人斬りだったという設定の「るろうに剣心」でさえ、主人公は28歳と若い。

 

そんな中、30代半ばで無精ヒゲのオジサンが主人公というのは、相当珍しい

まして、競馬好きで年中借金取りに追いかけられているという設定は、少年マンガ的な主人公ではない。

 

また、主人公の両さんだけではなく、「こち亀」の登場人物の多くは大人だ。

 

レギュラー・準レギュラーで子供のキャラはとても少ない

 

幼稚園児の檸檬、檸檬の妹の蜜柑、ハイパー小学生の電極プラス、部長の孫の大介(赤ん坊~小学生)と桜(赤ん坊~幼稚園)くらいだ。

 

中高生のキャラにいたっては、もっと少なく、タバコ屋の洋子(警察官になる前)、飛鷹日光・月光姉妹くらいしかいない。

 

しかも、洋子は初期しか出番がなく、日光・月光も漁師の父・二徹に比べると出番がわずかしかない。

 

少年マンガの中心である10代の登場人物がほとんどおらずオジサンが主人公というのが、青年マンガ的な理由の二つ目だ。

 

 

●青年マンガ的作品である理由③

 テーマが青年マンガ的

 

26巻「スペシャル税!?の巻」は両さんが税金の制度に激怒する話であり、

51巻「道楽党起つ!!の巻」は両さんが参院選に出馬する話、

148巻「投資家両さんの巻」は株式の仕組みを知った両さんが中川グループを買収する話だ。

 

税金、参院選、株式と、他の少年マンガではまずお目にかからないワードながら、「こち亀」ではギャグマンガのネタとして成立させている。

 

当時、子供だった読者の中には「こち亀を読んで社会に××というものがあることを知った」と社会勉強をした人も多いはず。

 

また、社会情勢をネタにしていることも少なくない。

 

89巻「1994年米騒動!の巻」は平成の米不足騒動の話、

94巻「開催決定!?未来博の巻」は、大阪・関西万博のような博覧会の話(当時は世界都市博が中止となっていた)、

連載終了後の201巻「おーい!元気でいるか!の巻」では、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下の状況が描かれている。

 

これらのネタは、他の少年マンガではネタにあまりされることはない。

 

このネタ選びが青年マンガ的だと考える理由だ。

 

 

 

●青年マンガ的作品だから40年間も長期連載できた

 

さて、ここまで「こち亀」が青年マンガ的である理由について書いてきた。

 

青年マンガ的であるのが、「こち亀」が唯一無二の少年マンガである理由だと思う。

 

そして、もしも「こち亀」が少年マンガらしい少年マンガであったなら、40年間も連載できていなかったのではないだろうか。

 

秋本先生のマンガが、少年マンガらしく小中高生を主人公としたマンガだとした場合、秋本先生が20代でお若い時には、ご自身の経験や感覚が小中高生とあまりズレていないだろう。

 

だが、先生が40代、50代と年齢を重ねていかれると、現実の小中高生とのギャップが大きくなって描写が難しくなっていたのではないかと推測する。

 

ところが、「こち亀」は主人公の両さんがオジサンなので、流行の移り変わりの激しい10代に合わせる必要が少ない

 

「秋葉原は昔は電器街だったが、今ではオタクの街になった」と昔と比較したり、「かつてはインベーダーゲームに夢中だったが、現在はプレステにハマっている」とゲームの歴史を語っても、両さんがオジサンであれば違和感はない

これが小学生を主人公としたマンガだったら、違和感が強かったことだろう。

 

外見についても、小中高生の流行を必ずしも反映させる必要がない。

オジサンで警察官の両さんは、今風の髪型や服装にしなくても問題ないのだ。

 

ネタについても、小学生に流行っているバーコードバトラーやポケモン、女子校生に流行のポケベルやプリクラなどについて取り上げる場合には、両さんのオジサン視点で取り上げれば良い

10代の感性とは多少ズレがあっても問題ない。

 

そして、政治や経済に関連した大人のネタも加えれば、子供から大人まで幅広い年代に関心のあるネタを拾うことができる

 

「こち亀」が長期連載できたのは、青年マンガ的な作り方をしているためだと思う。

 

 

●青年マンガ誌であれば、もっとエロが描けた

 

ここまで、「こち亀」が青年マンガ的であると書いてきたが、青年マンガ誌であれば描いていたであろうが、少年マンガであったために描いてこなかったテーマがあると思う。

 

それは、「性」についてだ。

 

そう書いたなら、「いや、「こち亀」にはエロがあっただろう」と反論される方もいることと思う。

 

だが、「こち亀」で描かれたエロは、少年マンガ用にチューニングされたエロである。

 

女性キャラのサービスシーンは存在するが、更衣中の下着姿のシーンや、海・プールでの水着姿のシーン、湯気でボヤかしたシャワーシーンなどである。

はっきりとしたヌードシーンは存在しない

 

両さんのエロ行為についても、風呂場などの覗き行為や、エロビデオ(「こち亀」用語的にはおげれつビデオ)鑑賞くらいの少年マンガ向けのエロである。

(近年は犯罪を助長するとして、風呂場の覗き行為も少年マンガでは無くなってきているが)

 

両さんがおげれつビデオを観ながら一人行為にふける様子は、描かれたことがない

 

性行為に関しても、126巻「MATOI♡(アンド)RYOsan?の巻」で、纏と両さんにできちゃった婚疑惑がかけられた時に、ほのめかされたくらいがギリギリの表現である。

(実際は酔ってプロレス技をかけただけで、二人に行為の事実はなかった)

 

また、両さんの実家は台東区千束にあるとの設定だ。

千束というエリアは、かつての吉原を含んでおり、現代でもオトナのお風呂屋さんが多い地区だ。

 

千束 - Wikipedia

 

だが、「こち亀」作中に、そういった風俗に触れられることはなかった

セリフで父・銀次がかつて出入りしていたと、さらっと触れられた程度しかなかったと思う。

 

掲載誌が青年マンガ誌だったら、もっと踏み込んだエロが描けていたはずだと思う。

 

 

 

●青年マンガ誌掲載だったら「こち亀」で描かれたであろう話

 

さて、前述の通り少年マンガ誌掲載だったため、エロが少年マンガ用にチューニングされた「こち亀」だが、もし掲載誌が青年マンガ誌だったら、どんなネタが描かれたのか勝手に想像してみた。

 

以下は、その妄想例である。

 

・両さんが画期的なアダルトグッズを開発する。

 

・両さんが変わったコンセプトの風俗店変テコな性サービスを受ける。

 

・本田が恋人の乙姫菜々と一線を越えようと、あの手この手で悪戦苦闘する。

 

・少年時代の勘吉とオトナのお風呂屋さんのお姉さんとの交流の思い出。

 

上記のようなアダルトな「こち亀」があったとしたら、少し読みたい気もするが、

一方で「こち亀」でそんなアダルトなテーマを扱って欲しくないという思いもあるので、実現するとしたら少々複雑な気分である。

 

 

 

●今後「こち亀」的なマンガは現れるのか?

 

では、今後少年ジャンプに「こち亀」的なマンガは現れるのかというと、個人的には難しいと考える。

 

理由を以下に挙げる。

 

・リアル路線は地味で不自由

 

少年誌のギャグマンガで、リアル路線の作品はそもそも少ない

 

個人的に思いつくのは「エンジェル伝説」などくらいか。

 

現在ジャンプで連載の「ウィッチウォッチ」は、絵柄こそリアルよりのタッチだが、内容はまったくリアルではなく、完全にファンタジーである。

 

リアル路線のギャグマンガが少ないのは、デフォルメ路線のギャグマンガに比べ、自由度が低くインパクトが小さく地味になりがちだからだと思う。

 

常に打ち切りの危険にさらされるシビアなジャンプでは、地味なリアル路線のギャグは厳しいのではないだろうか。

 

 

 

・少年ジャンプは若い作家が多く不向き

 

少年ジャンプでは、比較的に若い作家を起用する傾向がある。

 

この若い作家だと、あふれるセンスで切れ味鋭いギャグを描ける人はいても、「こち亀」のように会の様々な知識を必要とする青年マンガ的ギャグを描ける人はまれなのではないかと推測する。

 

・青年マンガ的なテーマは難しい

 

「こち亀」は、少年マンガでは普通は扱わないテーマを描いていることは上述した。

 

しかし、それは簡単にできることではない。

 

「税金」「株式」をテーマに少年マンガを描こうとするなら、ターゲットである小中高生に、それらを分かりやすく説明しなければならない

 

その説明をした上で、面白いギャグマンガに仕上げなければならないのだ。

 

これは相当、難しく、描ける人はそれほど多くないと思う。

 

と、以上のように、「こち亀」のような青年マンガ的ギャグが、少年ジャンプに現れる可能性は低いと推測する。

 

だが一方、不可能ではないとも考えるため、いつか「こち亀」的な作品が現れることを願っている。

 

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