「こちら葛飾区亀有公園前派出所」58巻の収録全話のあらすじを紹介していく。
(1989年6月発売)
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 58【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●人形アイデア勝負の巻
ストーリー
おもちゃ工場の立石が社運を賭けて開発したのは、男子高校生人形の制服シリーズ。だが、男子の人形の需要はなくて全然売れず、両さんに相談をしに来た。
両さんはアドバイスをもらいに、立石をドール評論家・矢野万太郎のところに連れていく。だが、女性の制服ならともかく、男の人形は難しいと言われてしまう。
男の人形を利用し、極道の人形、お祭り人形、時代物人形を開発。これが予想外にヒット。調子に乗った両さんは、等身大のソフトビニール製「両さん人形」を売り出す。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、矢野万太郎
男の人形を販売するアイデアを出す話。
49巻「なんてたって愛ドールの巻」に登場したドール評論家の矢野万太郎が再登場。前回の登場時でも、見開きでたくさんの人形が並ぶ矢野のコレクションが描かれているが、今回はそれ以上の数の人形が見開き2ページで描かれる。(1000体は軽く超えている)
現代のデジタル作画だと大量作画も容易だろうが、当時だとかなりの労力だったはず。
両さんの開発した人形には「信玄くん」「しゅわるつねっがぁくん」がある。この話の翌年の大河ドラマが中井貴一主演の「武田信玄」。アーノルド・シュワルツネッガーは映画「プレデター」などが公開されていた頃。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 49【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●ワクワク忘年旅行の巻
ストーリー
葛飾署の忘年旅行。バスで一行は温泉旅館に向かうが、寝坊で遅れた両さんは中川に迎えに来てもらう。中川の車で追いつくと、両さんは高速走行中なのに、バスに乗り移るのだった。
旅館に着くと観光に興味のない両さんは、幹事に強要し、早めに宴会を始めさせるのだった。
新人婦警に“ご開帳”したり、宴会場で柔道をしたりと、騒ぎまわる両さんたち。騒ぎを聞きつけ、同じ旅館にきていたヤクザの集英組の一行が警察相手と知らずに怒鳴り込んでくる。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、戸塚金次、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介、屯田五目須(署長)
温泉旅館で大暴れする話。
この回の両さんは、なかなか暴力的。
高速道路上でバスに乗り移ったのは、バス内での酒盛りに参加のためと、両さんにヤジを飛ばした同僚を叩きのめすため。
ダメ太郎、炎の介らロボット警官も宴会に参加。料理や酒は口にできないので、ガソリンとオイルで雰囲気を作っていた。
隣の宴会場にいた銀行の一行の名前は、金尼理銀行(かねあまりぎんこう)。
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総務部総務課山口六平太 師走!今年も、みんなで笑顔の忘年会!!新装版 (My First BIG) [ 林律雄 ] 価格:459円 |
●燃えろ!波理高山(ぱりだかやま)ラリーの巻
ストーリー
両さんと中川が出場予定だった優勝賞金一億円の波理高山(ぱりだかやま)ラリー。麗子も交通課の婦警と、ダメ太郎と炎の介もそれぞれチームで参加する。
煙幕を使ったり、他の出場者の車を押し出してコースアウトさせたりと、両さんは卑怯な手で順位をどんどん上げる。
しかし、前半のムチャな走行がたたって、両さんたちの車はガソリン切れに。給油しようとするが、アクシデントで車体が斜面を滑り落ちて行く。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介
山岳ラリーに参加する話。
レースの名前の元ネタは、パリ・ダカールラリー。今回のレースは前半は山頂への登り、後半は折り返しで下りになる構成。後半の下りの走行について落下しているだけなのに、両さんは「経済走行法」だと言い張る。
両さんと中川の車はフランスのアルピーヌ。
優勝賞金の額が上がったことで、参加は最終的に300台と膨れ上がっていた。
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●キツツキパニックの巻
ストーリー
両さんは派出所への途上で、小学生たちにイジメられていたキツツキを保護する。
このキツツキは、九官鳥などのように人語を話す鳥だった。
両さんそっくりの声で、部長に悪口を言ったり、派出所を訪れた女子高生にセクハラ発言をしたりと、イタズラし放題のキツツキ。
キツツキを縛って閉じ込めておくが、抜け出したキツツキは、仕返しに電話で色々な店に大量注文をする。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介
しゃべるキツツキの話。
キツツキは普通はしゃべらないはずだが、だからこそ鳥がしゃべっているとは警戒されなかった。
小学生たちからキツツキを保護するために、両さんは一人100円ずつの小遣いを自腹で支払うという珍しい行動をとる。
キツツキは自分の主人の名前と住所を話すことができた。主人の名前は「竹下くだる」。当時の総理大臣が、DAIGOの祖父・竹下登だった。
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価格:4136円 |
●両さん月へ行くの巻
ストーリー
月面にダイヤモンド鉱山があると主張するロケット開発研究所の水道橋博士のロケットで、両さんは月に向かう。
力仕事をするための助手として来た両さんは、早速月面を掘り進め、ダイヤの鉱床を見つける。
自動発射装置のリミットのため、月面にいられるのは3時間だけだったが、巨大ダイヤを見つけ欲をかいた両さんは、博士に置いて行かれてしまう。
月面に残った両さんは、アポロ計画などで乗り捨てていった設備から、食料や空気を入手。月面を「両津不動産会社」のものとするべく、自力で開発していく。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介、水道橋博士
月面で一人生きる話。
話の展開の都合上、6ページで既に月面にたどり着き、「漫画のようにはやい!」と叫んでいる。
博士の作ったロケットは「早見湯」という廃業した銭湯の煙突から発射される。名前の元ネタはタレントの早見優。
「地球上なら どこでも平気だけど…」と、さすがに中川も両さんを心配するが、部長だけは「心配無用です」と断言していた。
水道橋博士は、漫才コンビ・浅草キッドの芸人と同名だが、当時の浅草キッドの知名度を考えると、「鉄腕アトム」のお茶の水博士のもじり(御茶ノ水駅の隣が水道橋駅)と考える方が妥当か。
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価格:1320円 |
●両津大明神の巻
ストーリー
1988年が明ける。両さんは大晦日、元日と非番だったが、用事があって元旦からロボット派出所を訪れる。
両さんがダメ太郎と炎の介に依頼していたのは、トレーラーでどこでも神社を用意することができる移動式「両津大明神社」だった。
有名な神社の初詣で込み合う行列を、「両津大明神社」に誘導し、参拝させ、賽銭を稼ぐ。さらに、Tシャツなどのグッズ、焼きトウモロコシなどを販売し、荒稼ぎするが、空地での無許可営業のため、警察に追われることになる。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、法条正義、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介
移動式の神社で賽銭を稼ぐ話。
“神様”と友人(57巻「神をも恐れぬ男の巻」)だと吹聴し、インチキな祈祷も行う。大学合格を願う参拝客には「もう大丈夫 落ちない限り 絶対 合格します!」と適当なお墨付きを与える。
販売しているグッズには、ひかる一平、中森明菜っぽいグッズが確認できる。
冒頭、大晦日と元日に勤務となった派出所一行のことを、非番だった両さんが「心がまずしい」「貧乏ヒマなし」とイヤミを言うが、その中には大富豪の中川と麗子も含んでいる。
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江戸の神社・お寺を歩く(城西編) ヴィジュアル版 (祥伝社新書) [ 黒田涼 ] 価格:1210円 |
●顔は口ほどに物を言いの巻
ストーリー
夜勤明けで30時間、変な恰好で寝ていたため、両さんの髪には寝ぐせがついて、真っ平な髪型になってしまう。髪型を直そうとするも、両さんの剛毛では、なかなか直すことができない。
化粧品メーカーに勤める麗子の友人から、特殊メイク用の固定のヘアスプレーを使わせてもらい、ようやく直すことに成功。
スプレーを利用し、様々な髪型に挑戦するが、誤って両さんの顔面に固定スプレーがかかってしまう。かかった瞬間に驚いた表情だったので、両さんの表情が大口を開けた驚きのままで固定される。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子
強力な固定スプレーで顔の表情が固定される話。
タイトルの元ネタは「目は口ほどに物を言う」。
口を開けた状態で固まったので、飲食をするにも噛むことができず、流し込むしかなかった。
作中、まったく触れられていなかったが、まばたきもできないはずなので、瞳がメチャクチャ乾いているはず。
スプレーについては、固定を解除するAスプレーと固定するBスプレーがある。両さんの表情が驚きで固定されたとき、Aスプレーは使い切った後だった。
途中、七三分け、センター分けの珍しい両さんの髪型が見られる。
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ヘアスプレーケープ スーパーハード 無香料(135g)【ヘアスプレーケープ】 価格:601円 |
●天国からの訪問者の巻
ストーリー
天国警察から魔法使いのじいさんこと花山理香が派出所にやってくる。
天国から無許可で下界に逃げた男を追ってきたのだ。逃げたのは、両さんの曽祖父に当たる両津ため吉。無類の大酒のみで、天国の酒屋で酒が入手できなくなったので、下界に逃げてきたのだ。
ため吉は、現代日本に戸惑いながらも浅草の実家に現れる。そこで、ため吉を見つけた両さんたち。天国に帰そうとするが、ため吉は柔剣道の達人で腕っぷしでは分が悪い。両さんは、ため吉に言う事をきかせるために一計を案じる。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、花山理香、両津銀次、両津よね、両津ため吉
両さんの曽祖父・ため吉が下界にやって来る話。
ため吉は曽祖父なので、銀次の祖父であり、勘兵衛(及び夏春都)の父に当たる。
嘉永6年(1853年)の生まれで、明治末期まで生きたとのこと(死亡年は不明だが明治は1912年まで)。孫の銀次とは、銀次が生まれたばかりの頃に会ったことがある(父・銀次は明治生まれ?)。
坂本龍馬(1836~1867)とご飯を食べて写真を一緒に撮った、西郷隆盛(1828~1877)と握手した、千葉周作(?~1856)から剣を習ったと吹聴しているが、両津家の人間のため、真偽は不明(写真は現存せず)。千葉周作の件は年齢的に嘘っぽい。
ため吉は44巻「魔法の杖の巻」に登場している。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 44【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●機械仕掛けのオレん家の巻
ストーリー
通勤途中に自動販売機でコーヒーを買おうとすると、その自販機はダメ太郎の開発したロボット警官G3号だった。街に自然に馴染んで24時間監視ができるという機能を持った警官なのだった。
両さんとダメ太郎は、パトロール中にある男に出会う。一戸建て住宅に住むその男は、家に「集中コンピュータ管理システム」を導入していた。
オートロックの防犯管理システムに始まり、エアコンや風呂が自動で定時に起動、決まった時間に調理された料理が出てきて、一定時間後には自動で食器洗い機に向かうというシステムだ。
今後は、この「管理システム」が普及すると豪語する男性。しかし、ある日、男は風邪をひいて会社を休もうとするが、システムは自動でスケジュール通りに動き続ける。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介
全自動でコンピュータ管理された家の話。
タイトルの元ネタは、キューブリックの映画でも有名な小説「時計じかけのオレンジ」。
ダメ太郎が作った自動販売機のロボット警官は、59巻「激突!!成績くらべの巻」でも活用されている。飲料メーカーの自販機に監視カメラを仕掛け、地域の見守りに利用するシステムは、現在、一部で実際に行われている。
「集中コンピュータ管理システム」の電気料金は月22万円だが、男の月給は20万円で毎月赤字。システムが普及すれば安くなるという目算らしいが、本体価格はともかく電気料金は下がらなさそう。
新しいシステムの導入で便利になるが、逆にシステムに振り回されることにもなりうるというのは、現在のシステムにも言える皮肉。
自販機が防犯になる。地域の人と街を守る“目”になる「みまもり自販機」|KIRIN
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価格:1320円 |
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時計じかけのオレンジ完全版 (ハヤカワepi文庫) [ アンソニ・バージェス ] 価格:968円 |
●史上最大の闘いの巻
ストーリー
亀有京大寺の大仏殿の大仏を町会費で製作することになり、両さんが製作実行委員長に。
両さんは、大仏を低予算で手早く作るために、天国から神様を呼び出し、神様の実物から直に型を取る。
大仏の型取りには協力したが、両さんにバチを当てたい神様は、両さんから“悪霊”を抜き取る。
悪霊は巨大化してパワーアップ。「金欲マン」に変身する。
巨大化した「金欲マン」と神様は、街中で対決する。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、丸出ダメ太郎、度怒り炎の介、神様
巨大化した両さんが神様と戦う話。
57巻「神をも恐れぬ男の巻」に登場した神様が再登場する。
“悪霊”(邪心)を抜いても、それを抑える良心が出てくるはずなのだが、両さんから良心はカケラも出てこなかった。
「金欲マン」は、隠し持った栓抜きで攻撃するなど、悪役プロレスラーのような戦い方をする。
神様が両さんの大仏作りに協力したのは、カツラであることを脅しのネタにされたため。
どうして町会で大仏を製作することになったのかは不明。
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価格:2750円 |
「両さん月へ行くの巻」では月面に、「天国からの訪問者の巻」では天国から曽祖父が来て、「史上最大の闘いの巻」では巨大化して神様と対決したりと、現実からスケールの外れた話が、この頃の「こち亀」には多い。
両さんの出番は少ないものの。個人的オススメは「機械仕掛けのオレん家の巻」。