「こちら葛飾区亀有公園前派出所」89巻の収録全話のあらすじを紹介していく。
(1994年10月発売)
こちら葛飾区亀有公園前派出所 89【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●中川の交番日記!の巻
ストーリー
警察官の制服が新しいものに変わったのを機に、テレビ局の「密着24時間」の取材を受けることになる。
プロデューサーはルックスの良い中川を取材対象にするが、フェラーリで出勤、麻布の超高級マンションに住む中川の存在は浮世離れしていて、一般的な警官の密着には向かない。
そこで、両さんが演出をし、両さんの汚れた寮の部屋を中川の住居ということにして、庶民的な交番警官としての撮影が実行される。
主な登場人物
中川の密着VTRに庶民的な演出を施す話。
両さんの汚部屋のセンベイ布団で起床し、ケツを掻きながら大あくび、ポスターの美女にキスをするという、普段の中川とは異なるイメージの演出がなされる。
同じように麗子を庶民的に演出する話が154巻「超セレブ警官麗子の巻」にある。
この頃、「派出所」の正式名称が「交番」に決定し、この回のタイトルや建物の名前は「亀有公園前交番」になっている。両さんはこのことを嘆き、一人でも反対運動をすると息巻く。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 154【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●8ミリF(フィルム)上映会!の巻
ストーリー
両さんの実家から8ミリフィルムが出てくる。子供の頃の両さんが映っていると言うので、映写機と一緒に派出所に持ち帰ると、折よく、麗子も父から8ミリフィルムを受け取っていたので、中川の小さい頃のフィルムも含めてみんなで上映して鑑賞することに。
両さんのフィルムはオート三輪にはねられたり、木から落下したりとハプニング満載。麗子のフィルムはパリの別荘の様子。中川のは、ニュース映画のような出来だった。
後日、両さんは部長から菊見本市の8ミリフィルムの編集を頼まれる。エロ仲間の藤田からブルーフィルムの編集もしていた両さんは、もののついでと引き受けるが……
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、屯田五目須(署長)、両津よね、秋本飛飛丸、藤田
8ミリフィルムの話。
麗子の父・飛飛丸が麗子にフィルムを贈ったのは、「つづきを見たければ わが家に帰ってきなさい」と帰郷を促す目的だった。
中川の映像は8ミリではなく、16ミリで撮影され、レーザーディスクに起こされていた。「誕生編」はハリウッドスターが続々登場し、銀座でのパレード、時の首相のお祝いに来る様子が描かれ、主題歌をビートルズが、音楽担当がベルリンフィルオーケストラという豪華過ぎるものだった。
連載当時(1994年)は既に家庭用ビデオカメラが一般的になっていた頃だったが、中川や麗子の幼少期(20年くらい前?)だとビデオカメラが小型化されて一般に普及する前だった。
アーカイブシリーズ::よみがえる総天然色の列車たち 第1章 完全版 宮内明朗8ミリフィルム作品集 [ (鉄道) ] 価格:14874円 |
●Z1(ズイワン) V.S.コスモ!の巻
ストーリー
絵崎教授の開発したスーパーポリスカー「EZAKI Z1」は、麗子とマリアの乗る「宇宙(コスモ)」の人気に大きく水をあけられていた。
30億円の開発費をかけたのに、このままではZ1の存続が危ういと危機感を覚えた絵崎教授は、世界的に指名手配された国際テロリストグループを逮捕すれば大手柄で名を挙げるチャンスと考える。
テログループが発見され、「宇宙」がグループを追跡していると知った教授と両さんたちは、Z1を出動させる。
主な登場人物
両津勘吉、秋本カトリーヌ麗子、麻里愛、絵崎コロ助、丸出ダメ太郎、白浜カトリーヌ(寮母)
88巻「誕生!EZAKI Z1の巻」「わがまま上司Z1!の巻」に続く「EZAKI Z1」の話。
ライバルの「宇宙(コスモ)」とそれに乗る麗子、マリアは大人気で、プラモ、フィギュア、ビデオなどになっていた。
対するZ1は、誘導弾ミサイル10発、地対空ミサイル20発、スパイラルミサイル25発、暴徒鎮圧ミサイル15発、スーパーミサイル20発、ガトリングガン4門を装備しているも、情報収集能力はラジオの交通情報しかなく、犯人逮捕には貢献できていなかった。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 88【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●1994年米騒動!の巻
ストーリー
日本産の米が不足。外国産とのブレンド米は手に入るが、国産米は入手しにくくなっており、米泥棒や米を巡っての争いが巷では起こっていた。
ようやくブレンド米を手に入れた部長は、中川の持ってきた国産米を譲ってもらおうとするが、両さんから「部長は我慢を知らない」と説教される。
そんな最中、米屋の車を奪って逃走した米泥棒の報告が入る。
主な登場人物
米不足の話。
天候不順により1993~1994年にかけて日本は実際に米不足になっており、そのことを描いている。
中川の持ってきた国産米を、両さんは知り合いの年寄りに分けようとするが、戦時中の食糧難を経験した戦前派は国産ブランド米へのこだわりがなく、誰も受け取らなかった。
部長は幼少期に戦中を過ごしているが、我慢を知らないと両さんから珍しく正論で説教される。
その際、46巻のヨーロッパ旅行で子供のように日本食が食べたいと部長がダダをこねたことにも触れられる。
ラストでは大量のササニシキが出てくる。ササニシキはこの米不足の原因となった冷害に弱いことから作付面積が大幅に減少することになる。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 46【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●白鳥の迷ドライバー宣言!の巻
ストーリー
白鳥麗次の会社・白鳥鉄鋼は液晶メーカーとなり業績を伸ばしていた。調子に乗った白鳥は、フェラーリF40で麗子をデートに誘いに来る。方向オンチの白鳥だったが、最新のナビを搭載し、白鳥は自信満々で山中湖のレストランに向かう。
二人乗りのF40ながら、レストランに行きたい両さんも同行。ナビの扱いに慣れない白鳥は、ナビの指示を外れることができず、強引な運転ばかり。さらにハプニングでナビの画面が壊れてしまう。
ビデオカメラに直結してその画面で見たり、途中で購入した大型テレビに繋いだりと、何とかナビを活用しようとする。
主な登場人物
白鳥とカーナビを使ってドライブする話。
GPSについて欄外に解説が掲載されている。当時はまだ一般的に知られていなかったらしい。
いつもはポルシェに乗り坂道発進もできない白鳥だが、F40を金に物を言わせてAT車に改造していた。さらに普通はスポーツカーには付けない車幅ポールを装備していた。
スポーツカーのカッコよさについて両さんが力説するが、「スポーツカーのプラモしか買えない貧乏人のくせに…」と白鳥に皮肉を言われてしまう。
これも数学だった!? カーナビ・路線図・SNS (丸善ライブラリー) [ 河原林健一 ] 価格:836円 |
●活字V.S.漫画論争!の巻
ストーリー
スピード違反の車を本田が捕まえると、車の主は有名なお笑いコンビ。通りがかかった両さんが二人を知っていたので、二人は違反を見逃してもらおうと路上で身体を張ったネタを披露する。
両さんが派出所に着くと、部長が激怒していた。両さんが派出所にマンガを大量に置いていたからだった。
マンガを非難する部長だったが、絵崎教授からマンガの素晴らしさを説かれ、部長は両さんの指導でマンガを読み始めることになる。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、本田速人、絵崎コロ助、丸出ダメ太郎
前半はお笑いコンビが交通違反を見逃してもらおうと必死にネタをする話、後半は活字の良さを主張する部長が教授にマンガの良さを説かれる話。
前半に出てくるお笑いコンビの名前は「アホルディ」。元ネタはバカルディ(現・さまぁ~ず)。しかし、二人の外見や芸風は特にバカルディとは関係ない。
「漫画やアニメは新しいメディアとして世界中に躍進して行きます!」という絵崎教授の発言は、現在からするとなかなか的確。
絵崎教授の開発した「EZAKI Z1」は「Z1 V.S.コスモ!の巻」で存続が危ぶまれていたものの、Z1のプラモデルが売れたことで、一応存続しているらしい。
価格:2420円 |
●夢のドライブゲームの巻
ストーリー
ゲームセンターに行き、新型のレーシングゲームをやろうとすると、そこには御所河原組長と組員たちが。ゲームの優先権を巡って言い争いになり、組員の「ゲーセンの竜」と勝負することになる。
竜に勝利すると、中川と絵崎教授が現れる。このゲームセンターが中川の会社の系列で、教授と新型のドライブゲーム機を開発していたのだ。
180度のスクリーンに囲まれ、本物のF1マシンに乗って体感するマシンや、ヘルメットがVRゴーグルになっているマシンを両さんたちは体験する。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、絵崎コロ助、御所河原組長
リアルなドライブゲームの話。
1990年代前半は、アーケードゲームでVR技術を使うものがいくつも開発されていた頃だった。
ゲーセンの竜は、ベンツを10年間運転している強者で実車と同じくアウト・イン・アウトのコーナリングをしていたが、ゲーム機ではインベタの方が速いと言う両さんに敗北した。
ラストは、いくら何でもそうはならないだろう、という展開なのだが、まぁマンガなので。
価格:6980円 |
●災いは忘れた頃に…の巻
ストーリー
派出所に出勤して早々、印鑑を持ってくるのを忘れた両さんのことを怒鳴りつけたため、部長は何か重要な事を忘れてしまう。
思い出すきっかけを作ろうと、部長が派出所に入ってきた時の状況を再現するが、部長もすぐには思い出せず、両さんは何度もカップラーメンを食べ、麗子からお茶をかけられるはめに。
ようやく部長が思い出したのは、経理課から振り込みができなくなったので、両さんの給料を現金で預かってきたことだった。しかし、部長は両さんの給料の袋を紛失してしまっていたことに気づく……
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、大原良子
部長の忘れ物の話。
両さんの口座は、入っていたお金を全額おろしてしまい、口座そのものがなくなってしまっていた。
カップメンばかりを食べる両さんに「栄養のバランスが乱れる」と苦言を呈す麗子だったが、両さんは「金欠の今はお金とのバランスの方が大切」と言い返す。
お金にシビアなはずの両さんなのに、この回では給料のことを忘れかけている。
もの忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本 脳のゴミをためない習慣 (講談社+α新書) [ 松原 英多 ] 価格:990円 |
●撃退!盗聴魔の巻
ストーリー
無線関係の雑誌の中に、麗子のプライベート写真や電話の内容が掲載されているのを発見した両さんと中川。
出版社に乗り込み抗議をするが、元・探偵の編集者はさらに麗子の部屋に盗聴器を仕掛けてくる。
スーパー電子の電極スパークを呼んで、盗聴器はすべて撤去するが、電話の電波をキャッチされるので、電話の会話は盗聴されてしまう。
麗子の友人は語学に堪能な人たちが多いため、外国語で会話をするも、出版社は必死に翻訳して対策してくる。
両さんは中川と組んで、出版社に逆襲の計画を発動する。
主な登場人物
両津勘吉、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、麻里愛、電極スパーク
盗聴してくる出版社との攻防の話。
盗聴器を仕込む手段や、望遠のビデオカメラを使っての盗撮、ライターに見せかけたミノックスカメラなど、盗聴・盗撮についての様々な手口が描かれている。
麗子は盗聴対策として、フランス語、スワヒリ語、ヘブライ語、アラビア語、ヒンズー語、第二次大戦のモールス信号まで使うが、出版社の二人はことごとく解読していく。
出版社の二人は盗撮・盗聴以外に麗子のガレージキットフィギュアまで作っていた。この回では両さんは二人を非難する側だが、105巻「㊙麗子フィギュア発売中!?の巻」では麗子フィギュアを作製、121巻「超興奮!?麗子ウォッチング!の巻」では麗子のプライベートを盗撮しているので、同じ穴のムジナのような気がする。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 105【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
こちら葛飾区亀有公園前派出所 121【電子書籍】[ 秋本治 ] 価格:460円 |
●下町 素盞雄(すさのお)神社祭の巻
ストーリー
千住の素盞雄神社の天王祭を見せるため、中川、麗子、絵崎教授を連れてきた両さん。
担ぎ棒が二本だけの二天棒で、重い神輿を大きく左右に揺する担ぎ方はダイナミックで荒っぽい。本田は地元だが、この荒っぽい神輿が苦手。それでもムリヤリ両さんに参加させられる本田。
心理学も得意分野な絵崎に催眠術でバイク乗車の心理状態にさせられ、本田は暴走モードで神輿を担ぐ。
主な登場人物
両津勘吉、大原大次郎(部長)、中川圭一、秋本カトリーヌ麗子、本田速人、絵崎コロ助、本田改造、本田伊歩
素盞雄神社の天王祭に参加する話。
絵崎教授は赤坂生まれなので、下町の祭の経験はあまりない。
中川と麗子は借りてきた祭半纏を着るが、二人とも帯の位置が高く、「天才バカボンか」と両さんにツッコまれていた。
扉絵は、神輿の周りに大勢の人が集まっている絵になっている。その大衆の中に10名のこち亀キャラが隠されており、キャラ探しのクイズになっている。
神輿と闘争の民俗学 浅草・三社祭のエスノグラフィー [ 三隅 貴史 ] 価格:4950円 |
「1994年米騒動!の巻」は当時の時事ネタ。
この米不足から日本はブレンド米を輸入し、それが余ってしまい94巻「日本酒密造計画!!の巻」に続くことになる。
個人的オススメは、盗聴対策がエスカレートしていく「撃退!盗聴魔の巻」。