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【キャプテン翼】ライジングサン最後の単行本が発売! 才能・環境の全てに恵まれ過ぎた主人公は、どこまで高みに行けるのか?

 

2024年6月4日、「キャプテン翼」の最新シリーズ「キャプテン翼 ライジングサン」と「キャプテン翼MEMORIES」の最終巻が発売となった。

 

最終巻発売についての感想を書いていこうと思う。

 

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●「キャプテン翼MEMORIES」

 

本編の「小学生編」の前のエピソードを描く「キャプテン翼MEMORIES」は3巻で完結。

 

2巻から始まった日向小次郎の五年生時代のエピソード「最強‼ 明和FC伝説」は、2巻で空手をやっていた若島津が、3巻で転校してきた岬が明和FCに加入し、埼玉県大会を初制覇したところで物語を終えた。

 

明和FCや東邦学園のチームメイトは、日向のことを「日向さん」「キャプテン」と敬意を持った呼び方をしている一方、明和FCの岬だけは「小次郎」と一人だけなぜか同格の呼び方をしているのが、以前から疑問だった。

 

今回の「最強‼ 明和FC伝説」で、その理由が深堀りされるかと期待したが、残念ながら、そこまでは描かれなかった。

 

そういえば、岬は全国大会の死闘を戦い抜いた戦友の南葛メンバーには「翼くん」「石崎くん」と「くん」付けだが、約一か月の間、練習をともにしただけの間柄の松山光のことは「松山」と呼び捨てにしている。

 

岬くんの人間関係の距離感は、謎のままだった。

 

・「ボクは岬太郎2」

 

キャプテン翼MEMORIES」の3巻には、「ボクは岬太郎2」も収録。

 

千葉、北海道を転々としていた小学生時代の岬と、現代のマドリッドオリンピック準決勝スペイン戦を前に、岬にゆかりの人物たちが集結する様子が描かれる。

 

前作「ボクは岬太郎」に登場し、教育ママの下で勉強漬けだったミツルくんは、東大に進学し、片桐さんの実家の片桐コンツェルンに就職内定したらしい。

 

今回の話は岬のこれまでの歩みを振り返るような内容で、「ボクは岬太郎」にあった「これまでの人生で押し隠していた母への未練を断ち切り、父と渡仏の道を選ぶ」というような劇的な展開はないが、岬という人物の形成されていった過程が伝わるようになっている。

 

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●「キャプテン翼 ライジングサン」

 

マドリッドオリンピック本戦を描く「ライジングサン」最終20巻は、準決勝のスペイン戦の途中で完結。

 

この続きは「キャプテン翼WORLD」のサイトでネーム形式で発表されていく予定。

キャプテン翼WORLD(CAPTAIN TSUBASA WORLD) (captain-tsubasa.world)

 

この「ライジングサン」の最終回については、別の記事ですでに書いたので、「キャプテン翼」シリーズ全体について振り返っていこうと思う。

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●恵まれ過ぎた主人公・大空翼

少年マンガにおいて主人公は、競技経験に乏しい、才能が足りない、弱小チームに所属しているなどと、「恵まれない」存在として描かれることが多い。

そんな「恵まれない」主人公が、「恵まれた」格上のライバルたちを倒し、ジャイアントキリンングを起こす、というのが、よくある展開である。

 

しかし、「キャプテン翼」はそこが違う。

主人公の翼は、ありとあらゆる点で「恵まれている」のだ。

 

以下、どのように「恵まれている」のか列挙してみる。

 

・才能

世界的にトップクラスの才能。

一度見たプレイは、すぐに自分のものにできる。

 

・チームメイト

南葛小は弱小校だったが、都合良く岬が転校してくる。

小学生編の南葛SCは、前年優勝の修哲小メンバーが中心。

中学生編は、南葛SC時代のメンバーが主力。

全日本(日本代表)では、黄金世代がメンバー。

プロとしては、サンパウロFCFCバルセロナとビッグクラブを渡り歩く。

 

・コーチ

元ブラジル代表のロベルト本郷が恩師。

ロベルトは当時、無職で翼のコーチだけが生き甲斐だった。

 

・家族

サッカーの盛んな静岡県に転居。

比較的に裕福で平和な家庭。

日本にプロサッカーのない時代に、高校進学せずにプロを目指す息子を応援。ポルトガル語の家庭教師を雇う。

 

・健康

負傷をすることはあるが、試合に出場可能なレベル。

大病をすることはない。

 

・環境

冬場も晴天が多い静岡県で過ごす。

(ふらのの松山は、冬場の練習場の確保の苦労する描写がある。

 描写はないが、秋田県の立花兄弟も冬場の天候には恵まれなかったはず)

 

対して、ライバルたちは、翼ほど恵まれていなかったり、不幸に見舞われていることが多い。

 

・父を交通事故で亡くす。貧困シングルマザー家庭で、バイトしなければならない(日向)

・空手かサッカーか、親に進路を迫られる(若島津)

・幼馴染ばかりのチームで突出した実力のメンバーがいない。冬場の練習場がない(松山)

・世代でトップの才能がありながら心臓病に苦しむ(三杉)

・中学まで、まともにサッカーをしていなかった(次藤)

・スラムで育つ(ディアス)

・金持ち過ぎて周囲から疎まれる(ピエール)

・父がクラブの監督を解雇。一家は分裂(シュナイダー)

・捨て子。養父から虐待同然のサッカー教育を強制される(サンターナ

・王族のため周囲から疎まれる(オワイラン)

・スラムで育つ(エスパダス)

・恋人を交通事故で亡くす(レヴィン)

・サッカー選手だった兄を交通事故で亡くす(クライフォート)

・捨て子。試合中の事故で対戦相手の視力を奪ってしまい、しばらくサッカーを封印する(ミカエル)

 

こうして見ると、「キャプテン翼」とは、あらゆる面において「恵まれた」主人公が、そこまでは「恵まれていない」ライバルたちを蹂躙する物語ともいえる。

 

主人公がハンデや逆境を乗り越えるのが、少年マンガのセオリーだとすると、翼にはハンデが無さすぎるように思える。

 

しかし、一方でハンデをまったく持たない人物がどこまで高みに行けるのか、というのは読者の夢でもあると思う。

 

ライジングサン」ではマドリッドオリンピックの途中だったが、おそらく翼は金メダルを獲得するだろう。

チャンピオンズリーグも、ワールドカップもきっと優勝するだろう。

 

どの大会でも大会MVPを受賞し、バロンドールも受賞するだろう。

 

最高に恵まれたサッカー選手が、どこまで高みに行けるのか。

その問いを体現したのが、「キャプテン翼」という作品なのではないのか、と最終巻を読んで作品全体を振り返り、改めて感じた。

 

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