「BAD BOY MEMORY」というマンガをご存じだろうか?
“広島が舞台の暴走族のマンガ”を連想した人もいると思うが、それは田中宏先生の「BAD BOYS」シリーズであり、今回紹介するマンガとは別物である。
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「BAD BOY MEMORY」は岡村茂先生の連載デビュー作品で、1990年から1993年まで月刊少年ジャンプで連載されたヤンキーマンガである。
巻数は全10巻、三部仕立ての構成になっている。
さて、この「BAD BOY MEMORY」のどの辺りがトンデモ漫画なのか?
細かいツッコミどころは置いておくとして、大きくは下記の2点がトンデモの要因である。
①主人公がわずか2巻で交代。しかも初代主人公は物語から退場しない。
②校内での覇権争い、他校との抗争を描いたヤンキーマンガだったはずが、途中から男塾風の拳法バトルマンガに変わってしまう。
それでは、三部構成の物語の内容を紹介しながら、上記の2点について説明していこうと思う。
第一部
男子が少なくヤンキーも少数のため、他校からは舐められがちな竜波商業高校に転校してきた主人公・風祭猟の活躍を描く。
ケンカは作中最強クラス、前の学校は有名進学校で頭脳明晰、男気にあふれた性格の完璧な主人公は扱いづらかったのか、わずか2巻で第一部は終わってしまい、主人公も途中交代となってしまう。
「ジョジョの奇妙な冒険」「チ。ー地球の運動についてー」など主人公が交代するマンガは他にも存在する。
しかし、「ジョジョ」「チ。」は最初の主人公が死んで物語から退場、時代もくだって舞台も変わるのだが、「BAD BOY MEMORY」の主人公は一年生から二年生に進級しただけで、物語からは退場しないままという変則的な交代が行われる。
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第二部
風祭の活躍により、地元のヤンキーたちの竜波商業への評価が上昇。
各中学で名をはせたヤンキーたちが、続々と新入生として入学してくる。
そんな腕自慢のヤンキーたち新入生同士による一年生の番決め戦争が勃発。
二代目主人公・吹雪将太は、一年生の中で頭角を現していくというのが第二部のストーリー。
しかし、一年生の番格が決まり終わらないうちに、帝都学園との抗争が発生、一年生の番決め戦争はグダグダに終わる。
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第三部
第一部、第二部まではヤンキーマンガだったのだが、この第三部から話がガラリと変わる。
初代主人公が、実は謎の拳法の後継者であり(一部、二部で拳法使いの設定はなし)、その拳法を巡り竜波商業高校の面々で「魁‼男塾」の天挑五輪大武會のような大会に挑むというのが第三部の展開。
「男塾」のキャラクターは一応、学ランを着用しているが、変形の学ランなので来ている服に学生服の印象はあまりなく、作風に違和感はない。
だが、「BAD BOY MEMORY」のメンバーは、普通に商業高校のブレザー制服を着用しており、男塾的な世界観に合っておらず、違和感が半端ない。
しかも、「男塾」の塾生は富樫ら一部を除けば、何らかの拳法の達人の設定だが、「BAD BOY MEMORY」のメンバーは単なるヤンキー高校生。
命がけの格闘大会に挑むブレザーの商業高校生集団……
なかなかシュールな光景だ。
この第三部は、読者から不評だったのか、作者がまとめきれなかったからなのか、謎の拳法大会は最後まで描かれることはなく、唐突に終了する。
主人公の交代、第二部→第三部の作風の変更だけでなく、第二部で校長・教頭ですらも逆らえないほどの権力を有する帝都学園応援団(一体、何を応援しているのか?)の存在など、全10巻の中にツッコミどころが他にもあるのが「BAD BOY MEMORY」という作品である。
もしここまで読んで、「BAD BOY MEMORY」に興味を持っていただいたなら、ぜひ読んでいただきたい。
なお、作者の岡村茂先生は漫画家としてだけでなく、昆虫研究家「ドラゴン先生」としてYouTube等での活躍もされている。
ドラゴン先生こと漫画家岡村茂の公式ホームページOKAPURO(オカプロ)
第一部
第二部
第三部