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「異世界モノ」がニガテだ。
主人公にあまりにも都合が良すぎる展開もニガテだが、それ以上にゲーム要素を過剰に入れて来る作品がニガテだ。
レベルとかステータスとかが、数字として出て来るとどうも拒否反応が出てしまう。
「ドラゴンボール」でも戦闘力を数字で示したりもしていたが、「異世界モノ」のステータスの数字はゲーム感があまりにも強い。
RPGになじみが深い読者なら、そういったゲーム要素は分かりやすいのかもしれない。しかし、ここ二十年RPGを一切やっていないブログ管理人からすると、疎外感を覚えてどうもニガテである。
さて、そんなブログ管理人が、マンガ大賞2021受賞作の「葬送のフリーレン」を読んでみたところ、「異世界モノ」であるにも関わらず、存外面白く読めた。
「葬送のフリーレン」を面白く読めた要因は以下の二点かと思う。
〇「異世界モノ」だが、RPG未経験者や初めての読者にも分かりやすい工夫。
〇キャラクターの心情に焦点を当てているストーリー。
この二点について述べていく。
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〇「異世界モノ」だが、RPG未経験者や初めての読者にも分かりやすい工夫。
「葬送のフリーレン」は、RPGの名作「ドラゴンクエストⅢ」を下敷きにしたいわゆる「異世界モノ」の以下の特徴を踏まえている。
・中世~近世のヨーロッパ風の世界観。
・戦闘は剣と魔法で行う。
・魔物が多く存在し、それを束ねる魔王がいる。
・魔王を倒すのは勇者一行。
・勇者一行は4人、勇者、体力に優れ白兵戦を得意とする戦士、攻撃魔法が得意な魔法使い、回復魔法が得意な僧侶で構成される。
などなど。
と、上記のように「異世界モノ」の特徴はあるが、前述の通り、レベル、攻撃力・防御力・HP・MPなどのステータスは出てこない。
あまり多くないかもしれないが、HP・MPはRPGをしたことがない読者には意味が分からないだろう。
だが、本作ではそういったゲーム用語はあまり出てこないので、RPGになじみのない読者でもすんなり入っていける。
加えて、魔法の名前に関しても「人を殺す魔法」と表記し、「ゾルトラーク」とルビを振るといった工夫がみられる。
「ゾルトラーク」という魔法の名前だけだと、初めて読んだ読者には何の用語だか分からないが、「人を殺す魔法」と明記されているので一目瞭然である。
こういうRPGになじみのない読者や、初めての読者でも読みやすい工夫がされているので、「異世界モノ」を読みなれていない読者でも読みやすくなっている。
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〇キャラクターの心情に焦点を当てているストーリー。
RPGのゲームとしての目的はだいたい以下の二つ。
①魔王などの人間に仇を成すキャラクターを戦闘で倒すこと。
②洞窟や古城などのダンジョンから目的のアイテムを持ち帰ること。
RPGを下敷きにした「異世界モノ」の目的もこのふたつを基本にしていることが少なくないが、「葬送のフリーレン」は少し異なる。
「葬送のフリーレン」は、勇者一行が魔王を倒すところから始まり、①の目的を達成した後の物語なのだ。
主人公のフリーレンは、勇者一行の魔法使いとして魔王討伐の旅に参加。
10年の旅の末、魔王討伐を果たしたところから物語は始まる。
フリーレンは、見た目はほぼ人間(耳が尖っているくらい)だが、エルフという種族であり、1000年以上生きる長生きの種族。
さらに、エルフは個体数が少なく、他者と集団で過ごすことがないため、フリーレンには人間の感情がよく理解できない。
魔王討伐から数十年の時が過ぎ、かつての勇者たちは老いて死期が近くなるが、フリーレンだけは、魔王討伐の旅に出ていたときと変わらない少女のような容姿のまま。
魔法を収集するのが趣味のフリーレンは、各地を旅して魔法を収集する。
その旅の途中で、かつての仲間たちとの思い出に触れていくことが起きる。
人間の感情に疎いエルフのフリーレンが、以前の旅では気づかなかったことに、数十年の時を経て、気づいていく過程がとても丁寧に描かれている。
このキャラクターの心情を丁寧に描いていることが、このマンガの魅力だと思う。
極論、マンガはそのキャラクターの心情をしっかり描くことができているのであれば、そのマンガの世界観が、異世界ファンタジーでも、宇宙の果てのSFでも、革命期のフランスを描いた歴史モノでも、現代日本の学園モノでも、面白いのだと思う。
なので、バトルものがニガテな人でも、「葬送のフリーレン」は充分面白く読めるのではないかと思う。
さらに、2巻以降では、魔法を使ったバトルや、旅の仲間が増えていくなど、従来の「異世界モノ」的な展開になっていくが、その「異世界モノ」のテンプレート的な展開も面白い。
「葬送のフリーレン」は、「異世界モノ」をニガテにしている読者にも入りやすい間口を作っているのが魅力だと思うが、「異世界モノ」玄人の読者にも読み応えのある作品だと思う。
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