「がんばれ!キッカーズ」と「キャプテン翼」の似ているところと違うところを、コミックス5巻の中から、具体的に指摘していく。
【ストーリー概要】
相沢FCとの練習試合でも勝利するなど、力をつけてきたキッカーズの前に、校長の連れてきたコーチ・風間竜一が現れる。
風間コーチの指導は、練習メニューの多さの他、へばった生徒を竹刀で殴る、練習中の水分補給は禁止、口答えした翔にボールをぶつけまくるヘディングの練習を課したりと、とにかくスパルタ。
練習だけでなく、ディフェンスの学と守の二人を補欠にし、代わりに陸上部の古瀬と、バスケット部の山岡をキッカーズのレギュラーにする横暴さ。
キッカーズのメンバーは反発するが、陸上部の古瀬は学よりスピードが上回り、バスケット部の山岡は守より高さで勝ることを、風間コーチから示されて、反論ができなくなってしまう。
しかし、キッカーズは学と守のレギュラー奪還のための特訓を開始。
学は単純なスピードではなく、フェイントを織り交ぜたドリブルを、守は高さで叶わない相手にヘディングで負けないために、身体を上手く寄せる技術を、それぞれ磨くのだった。
そんな特訓のある夜、北原小学校に泥棒が侵入、守は特訓で鍛えたジャンピングタックルで泥棒を怯ませ、学はフェイントを交ぜたステップで泥棒の行く手を防ぎ、泥棒の逮捕に貢献。
風間コーチも、守と学の成長を認め、レギュラーの復帰を認めるのだった。
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スポーツマンガの歴史上における「キャプテン翼」の作風の特徴を紹介する際、「巨人の星」に代表される1960~1970年代のいわゆる「スポ根」からの脱却といわれることが多い。
監督、コーチに理不尽なスパルタでしごかれた主人公が歯を食いしばり、強さを習得していく「スポ根」に対し、1980年代の「キャプテン翼」では、主人公の大空翼は監督・コーチから練習を強制されることはない。
サッカーは、野球に比べて選手の役割がきっちり決められておらず、ポジションの自由度が高い、という競技の特性もあるが、「キャプテン翼」の登場人物は、それまでの「スポ根野球マンガ」に比べて、自由である。
きつい練習をすることもあるが、それはより上手く、より強くなるために、選手が自主的にしていることであり、上から強制されていることではない。
そんな「スポ根」からの脱却をはかって、スポーツは苦しいものではなく、自由で楽しいものだ、という新たな価値観を提示した1980年代の「キャプテン翼」だったが、後発の「がんばれ!キッカーズ」では、まさかの鬼コーチを登場させて、時代遅れの「スポ根」展開に。
そのため、この鬼コーチのエピソードでは「キャプテン翼」と似ているところはまるでない。
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陸上部の古瀬くん、バスケット部の山岡くんも、「おれたちだって ほんとは陸上やバスケットを やりたいんだ…。」と、学と守の特訓を秘かに応援するのだが、やりたくない他の部の生徒にサッカーをやらせ、サッカーをやりたい生徒をレギュラーから外すという、暴挙を行う風間コーチの辞書に「人権」というワードはあるのだろうか……?
しかし、陸上部の古瀬くんは、ドリブルする翔くんに普通に走って負ける、というエピソード以来の再登場だけど、あまり良い扱いの登場ではない。
陸上部であることを読者に分かりやすくさせるために、わざわざ「陸上部」と書いたハチマキをしていて、良い人なんだとは思うんだけど。
ところで、このエピソードの導入で登場する相沢FCのキーパーのキャップは「アディダス」。
(本作品のキーパーでは、「アディダス」帽は通算4人目、「プーマ」帽は通算1人)
なお、風間コーチのジャージも「アディダス」、陸上部の古瀬くんのソックスも「アディダス」だった。
やっぱり、このマンガはアディダス派が多い。
しかし、相沢FCに「2-1」のスコアで勝った、というセリフがあるものの、コマ内のスコアボードの表示は「1-1」に見えるんだけど……
ここが違うぞ!
キャプテン翼:「スポ根」からの脱却。
キッカーズ:時代遅れの「スポ根」鬼コーチを登場させる。
(ただし、1990年代になって、「キャプテン翼」は「ワールドユース編」で、賀茂港という「スポ根」鬼コーチを登場させてしまう)
次回は、「病院送りの東谷」の異名を持つ東谷小SCとの練習試合。